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72 規則本

 ◯ 72 規則本


 加島さんと木尾先輩と成田さんと僕と男四人でのパフェは、今一美味しさに欠ける気がする。女性がメンバーに欲しい所だ。沖野さんは今日は外せない講義があるみたいでいない。


「口の中の甘さは満足だけど、目にも甘さが欲しいな」


 同じ事を考えていたのか、木尾先輩がぽつりと呟いた。


「そうですね……女性のメンバーが欲しい所ですね」


 むさ苦しいメンバーになった。何でこうなった?


「愛美も役に立ってたんだな」


「ムードメーカーって奴ですね?」


「確かに大事だな、この顔ぶれだと甘いものが何故か渋く感じる」


 加島さんまで毒舌を披露してくれた。


「それで皆、試験に向けて頑張ってるんですよね?」


「ああ、なんとかな……」


 加島さんが少し遠い目をしながら答えてくれた。


「大丈夫だって、こないだ俺が出したテストは全部クリアしてたし、実技がまあちょっとあれだけどまだ時間はあるさ」


 木尾先輩が声を掛けて気分をあげていた。


「充分すごいですよ。俺の闘気とか余裕で躱してたじゃないですか?」


 成田さんが加島さんに話しかけた。どうやら一緒に練習しているみたいだ。


「そうなんですか? みんなすごいんだ」


「鮎川は使わないんだったか?」


 木尾先輩が聞いてくれた。


「僕は霊気だけで、他は全く使えないので」


「そうか、たまに特化してる奴がいるからな」


「あ、それは言われました」


「そうか、このメンバーではいないからな……」


「愛美が使えるんだが、結構下手だし」


「ちょっと試してみろよ」


「どうするんですか?」


 木尾先輩が加島さんに何か言ったら、加島さんが瘴気を手のひらから出し始めた。なるほど、これに霊気を当てろということかな? そっと手のひらを包んで瘴気を消して行く……加島さんはずっと瘴気を出し続けている、僕も霊気を出し続けて……暫くして途切れた。


「弱いが扱えてるし、霊気は愛美より良いかもしれない。特化なだけあるな」


「これなら基礎は合格するんじゃないか?」


「ああ、基礎なら大丈夫だろ」


「そういえば、眠りの術はどんなだ?」


「精神系の治療なんですけど、何故か皆眠ってしまって……」


「へぇ、やって見せてくれ」


「それが、やっちゃいけないって言われてて、その……コントロール出来なくてこの店中の人が寝ちゃうから」


「それは不味い」


 木尾先輩が苦笑いしている。


「うん、修行中だよ」


 三人に掛けたら店全体には広がらないけど、半分くらいは確実に眠らせてしまいそうだ。これでもかなりコントロール出来るようになったんだけど、まだまだだ。


「講師の人も試験があるから、なんだかぴりぴりしてるね」


 講師の歩く姿にそんな感じが見受けられる。


「ああ、良く知ってたな。かなり顔色の悪い奴とかいるからな……金で地位を買った奴はそうだろうな」


 木尾先輩が話を受けてくれた。


「このテストは夢縁始まって以来、初めてなんだろ?」


 加島さんが話を続けた。そうだったんだ? 怜佳さんは思い切ったんだ。


「そう聞いてる。しかもこんな四月の頭になんて……何の嘘をつく気なんだ?」


 成田さんはテスト自体が嫌みたいだ。分かるよ。予定外のテストなんてきついよね。


「でも終ったら、降格処分されるから、少しメンバーが変わりそうだね」


 今まで白黒のブレザーだった人が、落ちるかもしれないんだ、これはかなりきついはずだ。


「あいつらの焦った顔が楽しいくらいだ。今までのつけが、ここに来て一気に来たって感じだからな……」


 木尾先輩はニヤニヤしながら話している。どうやらこの成り行きを楽しんでるみたいだ。パフェを食べきってからまた話し始めた。


「一ヶ月じゃ、あいつらも取り返すのは無理だしな。……金枠の生徒がごっそり減るんじゃないかって言われてるし、勢力図がかなり変わるはずだ。ここで上に上がらないと意味がない。這い上がるぞ」


「そうですね、加島さんは夢縁警察希望ですか?」


 成田さんが聞いている。


「いや、ここの職員でも構わない。余り差はないと聞いてるよ」


「そうか、神界警察は狭き門だからな……職員狙いが一番だよな」


「神界枠の黒枠もテストを受けるって聞いたけど本当か?」


 加島さんがふと思い出したように聞いていた。


「ああ、黒ブレザーに黒刺繍は普通枠って聞いたぞ?」


「あれは違うのか?」


「だが、白ブレザーの黒枠はどうなんだよ?」


「あいつか? 喋ってくれないから分からないな」


「黒枠の人がいるんだ」


「ああ、鮎川は知らないよな? 神界行きが決まってるっていうか、そっちからの生徒だって聞いてるんだが、それに関しては喋ってくれないんだよな……」


「そっか、黒のブレザーだと確かに、黒の刺繍は区別付かないですね……神界枠って紫ですよ? 黒は冥界」


「何で知ってるんだよ……って黒って冥界? 死神か?」


 僕は夢縁の生徒規則本を取り出した。


「これに書いてましたよ?」


「「「知らなかった!」」」


 購買に売られているが、誰も見てないんだよねこれ。ちゃんと金枠の生徒は他の生徒を導きましょう、とか銀枠の生徒は勉学に励みましょう、とか書いてある。

 僕も怜佳さんに聞くまで知らなかった。クラブ活動は推奨すると書いてあるし。良い事が一杯書いてある。これを読めばこんなにギスギスした事も減りそうだけどな……。

 その後は全員購買で夢縁生徒規則本を購入した。木尾先輩は五冊も買っていた。どうやら知り合いに情報として売りつけるみたいだ。成田さんは沖野さんの分も買っていた。


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