71 手製
◯ 71 手製
ヴァリーとホングから連絡が来た。第二皇子と無事に会えて話をしたらしい。第二皇子の宮殿内部を探してに忍び込み、やっと会えたそうだ。ベッドに横になっていて具合が悪そうで、僕の光の魔結晶を使って少し回復させたが、砂漠を移動するまでにはならなかったみたいだ。それでも会えた事は進展だ。
毒を飲んで具合が悪い事は悪いみたいだけど、その毒にしてもちょっとおかしいという事で、少量ずつ飲まされているのでは? という話になったみたいだ。第二皇子側も色々調べるという事で話はついた。誰がそんな事をしたのか分からないから、調べるのも大変そうだ……。
で、また魔結晶が足りないという話になった。うん、そんな気はしてたからちゃんと二つ作って用意してた……今回は五ミリ玉が真ん中にあって周りを小さな粒で囲ったものだ。勿論、いつも通り一つは光りの属性のものを付けてある。でも、話を聞いたらもう一つ必要そうだ、五日後にはまた出発して第二皇子の所に向かうと聞いた。それまでにもう一つ指輪を作る約束をし、回復の効果を高める指輪を作る事にした。
「済まないな……。これを用意するのも値が張るだろう」
済まなそうな表情が画面の向こうに見えた。
「ヴァリーこれは僕の手作りだから気にしないで……」
「魔結晶はアストリューで買ってるんだろう? これ、組合の通販で見たけど売ってなかったぞ?」
探したんだ? 確かにこの魔結晶は売ってないと思う、他は妖精族のものになるだろうし……。魔力を貯める物は意外と高いし、直接に魔法を使える物は売ってない。
「僕の魔力を使って作るんだ、だから遠慮しなくて良いよ?」
「何? そうかもっとよこせるか?」
ヴァリーが何か肩の荷が下りたみたいに、ホッとした顔をしたかと思うと、沢山あるんじゃないのかと聞いて来た。
「作るのにも時間が掛かるんだ、無理だよ。大変みたいだけど頑張って、良かったらそっちに行くよ?」
「ああ、第二皇子を神殿に連れ出す事にした。こっちにくれば勝手に治るだろう、ここは神の温泉地だからな」
そういえば、最初に付いた時にゆけむりが上がっている場所があったのを思い出した。そっか、アストリューと似てるんだね神殿の場所は。
「ホングは大丈夫なの?」
「ああ、ちょっとばててるが、休めば大丈夫だろう。すっかり砂漠に慣れたみたいだ」
「そうなんだ。飛ぶのは大分慣れたの?」
「ああ、それはかなり慣れたな、宮殿の中は天井付近ががら空きだったから、そこから忍び込んだ。やたらと天井を高くするのも考えないとダメだな……誰も天井を探そうとはしないしな」
どうやら、柱の飾り等の影に隠れれば、天井付近を探そうとする人はいなかったらしい……確かに分かるよ。人がそんな所から侵入するなんて思わない。
「二人で怪盗業でもやりそうな勢いだね」
「転職の時は考えてみよう」
ヴァリーが真面目に答えた。僕は面白かったので笑ったら、ヴァリーも笑った。第二皇子がそっちに着くくらいに合流して、二人の体力を回復しに行くと伝えて通話を終えた。
今日は妹の合格発表の日だ。発表を見に出かけてしまったので、家で料理を作っている。今日は少し寒いので、温かい料理が良いと思い煮込み料理にした。お祝いの洋服と、僕の作ったお守りのペンダントが置いてある。
「ただいま〜」
皆が帰ってきたみたいだ。声の調子から受かったみたいだと判断した。良かった。おかえりを言って振り返ったら、妹は早速に僕が用意していた袋を開けていた。
「可愛い〜」
「春っぽいわね」
マリーさんの作った服に、母さんも満足しているみたいだ。
「ペンダントもあるよ」
服と一緒に入れていたペンダントに妹が気が付いたみたいだ。
「良かったわね」
「ピンクのガラス? 何か可愛い」
「お守りだからちゃんと付けてよ?」
「えー、可愛いのにお守りなんだ?」
「そうだよ」
「分かった。これなら毎日付けれるよ」
「前に貰ったのと一緒に付けてよ?」
レイのお守りと一緒に付けた方がいいからね。
「勿論、あれは本物のお守りでしょ?」
「う、そうだよ」
「これは違うの?」
母さんが聞いて来た。
「それは僕が作ったんだよ……」
「千皓が? お守りを作れるの?」
母さんが目を丸くしていた。そんなに変だろうか?
「そっちよりは弱いけどまあ、ちょっとは……」
「ありがと、お兄ちゃん」
「千皓はちゃんと修行してるのねぇ」
母さんが何故かホロリとしていた。その夜は父さんが帰ってきてからは合格パーティーだった。




