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69 虚実

 ◯ 69 虚実


 ぼんやりとアストリューの家の庭を歩いて考え事をしていた。誰が何処で何をしていたかが分かるなんて、どういう事なんだろう……? 昨夜はその事にはあまり気が付けなかったけど、木尾先輩はその事にはちっとも悪い事だとは思ってない見たいだった。当然のように言われたけど、そんな情報を何処で手に入れるんだろうか?

 前は付けられてたのが分かっているからそうでもないけど、今回は夢縁内部で付けられてた訳じゃないし、それに僕の家はどうやって調べたのかあの三人組も、一香もタキも家にたどり着いていた。ネットで調べたら出るとかだろうか? 調べてみたら、すぐに住所が出た。うわ、これは気持ち悪い。……そっか何処からでも調べれるんだ。名前からこんなに簡単に分かるんだ。


「それは簡単だよ。だってアキの持ってるのは、うちの管理員用のだからね?」


 レイに聞いたら、あっさりと僕の誤解を解いてくれた。


「あ、そっか。じゃあ、普通だったら出てこないんだ?」


「そうだね、ちょっと難しいと思うよ? 有名人じゃないし。どこかにある情報を不正に見たりしないと無理じゃないかな?」


「そうだね。それか僕みたいな人に聞くかだね?」


「そうなるね、神界関係者ならこんな情報は、すぐに手に入るからね」


「そっか、それで僕の家がすぐにバレてたのかな?」


「そうだよ。彼らは金枠の伝があったから、そこから手を回して調べたみたいだね」


 渡辺さん達の事を思い出して、レイは説明してくれたみたいだ。


「じゃあ、僕が加島さんといるところを知ってたのは偶然かな?」


「そういう情報は多分、持ってる人脈の多さが決め手かな? この人の動きを教えてと言えば随時その情報が来るんだよ。今回の有力な人物が出るのを防ごうとしたあの手合いは、こういう事を指してるんだよ。こういう情報は人から生まれるんだからね……」


「そっか、あの張り紙を取らせる行為は、そんなところに繋がってたんだね」


「そうだよ、やっと気が付いたんだ?」


「う、そ、そうかも……」


「やっぱり分かっててやってなかったんだね。そんな気はしてたけど」


 何でかは知りたかったから……。でも何となく、分かった気がする。レイが咳払いしてからまた話し始めた。


「やっと、情報を扱う気になったのかと思ったんだけど、それにしてはちょっとおかしいからね。……うん、いいんだよ、アキはそのままで。情報戦には向いてないよ。まず、権力の方向を向いてないし、そういう情報に全く価値を見いだせないみたいだし、何より本人が鈍いのが一番ダメだね。救いようがないよ」


 そ、そんなに酷いのかな? 確かにそんな事調べてどうかしたいなんて分からないけど。……っていうか名前だけで住所が分かるなんて、今日初めて知ったよ? もっと詳しく調べたらもっと詳しく分かるかもしれない……。こんなのどうしようっていうんだろう?


「レイは得意なの?」


「僕は得意じゃないけど、情報戦をやってるところを引っ掻き回してあげるのは楽しいよ?」


「……それはどう違うの?」


「どっちも重大な情報が流出して大慌てになるんだ。見物してると面白いよ? 人間の事が良く分かるんだ」


「そうなんだ。ちゃんと勉強してるんだね」


 レイなりの勉強方法みたいだ。やり方は荒っぽそうだけど……。


「そうだね、アキも僕を見習うと良いよ」


「うん、頑張ってみるよ」


 そこまで出来るようになるかな……。


 その後、ポースに会いに神殿に行ったら、ポース以外誰もいなかった。


「どうかしたの?」


「ああ、アッキ。俺様の為に働いてた奴はいなかったらしい」


 随分落ち込んでいるみたいな力の籠らない声がする。


「……ファンじゃなかったの?」


「そうだな、皆は飼い主に命令されて来てたみたいだな、がっかりだぜ。言葉だけ調子のいい事いって、ちっとも俺様の要望を聞かねぇと思ったら、そういう事だったよ。畜生、騙されてた」


「調査の人達は、自分で好きで来てたんじゃなかったんだね」


 それでこの落ち込みようなんだね。


「そうさ、悲しいぜ。裏切られた気分だぜ」


 声が震えている。あんなに良い歌声の持ち主を、こんな風に泣かせるなんて……酷いよ。


「純粋なポースを泣かせるなんて。もう、ポースの知ってる事なんて言わなくて良いよ。家に帰ろう。ポースの自伝はいつか僕が書くよ」


「アッキ……友達だけは本物だったぜ。もうこんな調査に付き合う必要は無くなった、おさらばだっ」


「うん、帰ろう」


 僕達は帰った。次からの調査は断り、ポースは家で日向ぼっこをし、紫月と歌を歌い、スフォラと僕は踊った。今度、宙翔のお父さんが、あの日本庭園風の場所で宴会をするみたいだったので、そこで歌と踊りを披露する事になった。酔っぱらい相手だからきっとうまくいくと思う。

 本当のファンを獲得出来ると思うんだ。ポースもそれで自信を取り戻すと思う。あの人達には歌は披露してなかったから、ポースの素晴らしさは伝わってなかっただけだと思う。


「衣装はこんな感じでどうかしら〜」


 マリーさんは僕達の衣装を作ってくれた。綺麗な春らしい衣装だ。着物風で袖が付いている。桜の花びらが散っててとても綺麗だ。紫月とスフォラもお揃いだ。


「うん、すごく綺麗だ」


「ポースの体はまだ出来てないから、無理しちゃだめよ〜?」


「わかってるさ、マリー。俺様のデビューだ。かっこ良く決めるぜ!」


 デビューに向けてポースは機嫌が良くなっている。


「マリーさんは踊らないの?」


「そうね〜、ラテンのリズムでの盆踊りは難しいわ〜。アキちゃんくらいじゃないかしらね……踊れるのは」


 そういえばそんなこと言ってたね……。


「チャレンジしないの?」


「そうねぇ、練習はしてみるべきね」


 マリーさんは普通に踊る事にしたみたいだった。僕のダンスは特殊すぎたみたいだ。うん、マリーさん、僕のダンスがリズムに合ってないのは分かってるから、気にしなくて良いよ。それに盆踊りって訳じゃないんだよ?


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