68 推薦
◯ 68 推薦
夢縁の体制の入れ替えがあったらしいと、噂では囁かれていた。実力テストの実施は誰もが驚いたみたいで、こんな時期にありえないとの反発があちこちであったみたいだが、誰もこのテストを止めれる者はいないみたいだった。
「いやーん、実力テストだなんて〜。脅かされてたら他のテストに集中出来ない〜!」
沖野さんはチーズケーキを食べながらも、器用に叫んでいた。
「大丈夫だよ。沖野さん達はちゃんと実力で上がって行ってるんだから問題ないよ」
僕が大丈夫だと言ったら、少し落ち着いたみたいだった。
「そうだな、困るのは金で実力を買った連中だな。今回は白黒ブレザーの連中にまでテストが出されるって聞いた。それで、誰がこんな事を言い出したのかっていう憶測が、学園中に飛び交いすぎてて分からないんだ」
成田さんは冷静にそんな事を言った。
「ああ、一番有力なのが、ここの主のレイカ様の意向だっていうのかな?」
今日は成田さんがずっと名前だけ出していて、会わせて貰ってなかった木尾先輩と言う人を、今回は連れて来てくれていた。その木尾先輩が、怜佳さんの名前を出していた。
「えー、知らないよ〜? 主って誰?」
「噂でしか聞いた事ないけど、ここの夢縁の管理神だって事ぐらいだ」
木尾先輩は情報通だったようだ。確かにその通りだ。
「うん、ここのトップだって言ってたね」
董佳様がそんな事を言ってた気がする。
「そう、それだ。良く知ってたな。君が噂の銀枠の生き残りだね?」
「なんですか? 生き残りって」
縁起が悪そうなんですけど……。
「銀枠の生徒がごっそり消えたというのに、君はここに通い続けている。……何人かいるが非常に少なく、絶滅危惧種のごとき追い詰められてる銀枠生の事だよ」
「絶滅危惧種……。確かに減りましたね」
どうやら珍しいから見に来た、みたいな感じだ……。
「君に忠告だ。加島との付き合いは考えた方が良い。あいつは悪い奴じゃないが……相手にしている奴が不味い。ちょっと強引な手でも、迷わずに使ってくるから気をつけた方が良い」
珍種だからというよりも、こっちが本題だったみたいだ。でもそんな事をどうやって知ったんだろうか? 相手にしている奴ってまさか?
「えーと、弟さんとかですか?」
「そうだ。金枠の特権までも奪う必要はなかったはずだし、どうやったのかあいつはそれも奪ったからな……」
眉間に皺を寄せて、何かを思い出しながら説明してくれた。
「金枠の事は本人は良かった事になってますよ? えーと実力がない事に気が付いたから勉強してるみたいだし多分、今度の実力テストも大丈夫と思うんですけど……」
「……そうか、なんだ。なら、こっちで声を掛けてみるよ。心配無用だったな。悪かったよ。そうか、腐ってないのなら良いんだ。ありがとう。実力があるなら声を掛けるよ。そうか、努力家だったか……」
意外そうな表情で木尾先輩は僕の方を見て、何度もそうかを繰り返していた。どうやら印象が変わったんだと思う。
「良いんですか? 木尾先輩」
「良いさ。金枠生だったからと言っても、根性が腐ってる奴だけじゃない。実力テストで残れるようなら、こっちに引っ張ってこよう。いいものが聞けた、良かったよ」
「ほら、ここのチーズケーキは美味しいんだって言ったでしょ?」
自慢げに沖野さんがチーズケーキの事を言っている。
「それと何の関係があるんだよ」
成田さんは不審そうだ。
「美味しい話もついてくるんだって」
「なるほど、そういう意味ですか? あの看板」
僕は店の看板に描かれてる文字と絵を思い出した。
「そうなの! さすが千皓君、気が付いてたんだ〜」
「鮎川って女子力が高いな……」
「この話について行けるのが分からない」
そんな事ないですよ? 普通だと思いますよ? 何が違うんだろうか……。沖野さんと ? マークを飛ばして二人の会話を聞いていた。




