64 習性
かくめいのてすと
◯ 64 習性
溜まってた仕事をなんとかこなしつつ、ヴァリーとホングともメッセージをやり取りしていた。皇子同士が直接会う事は出来ず、第二皇子派との話し合いは纏まらなかったみたいだった。
ラークさんはヴァリーと会ったみたいだが、第二皇子の代理人とは会わなかったらしく、突き返したらしい。どんなに会いに来ても代理では会わないみたいだ。
毒を盛られたと言っていたけれど……本当だろうか? なんだかおかしいな、気に入ってるならラークさんが助けたりしそうだけど、それはしないんだろうか?
あの闇の生物のグリフォン達を使っていたから、銀の焔でも許されない事があるのかもしれない。それとも何かあったんだろうか? こんなところで推理してても分からないけど、ヴァリーが解決しないといけない問題になって来た気がする。大掛かりな兄弟喧嘩だ。
ヴァリーには魔結晶を幾つか作り終えたら渡す事にした。……今の修行はいつも使ってた魔結晶を作るセットを使わずに魔結晶を作っている。物質変換だし調度いいよね、とレイに言われたので頑張っている。
空を飛ぶのと平行して覚えていいて、魔結晶は三日に一つ出来ている。でも、米粒よりも更に小粒化してしまった。こんなに小粒のものを増やして、どうすれば良いんだろう……。いっそ、細かさをもっと追究しようかな。
一日で出来るように頑張ったら、一ミリ位になってしまった。マリーさんに見せてこれをアクセサリーに使うのって、どうやったら良いか聞いてみた。
「小さいわね〜、せめて二ミリは欲しいかしら。大きい宝石の周りに付いてる小さいダイヤみたいね……メレダイヤなら、こんな感じはどう〜?」
カタログらしいページを見せて貰った。なんだか綺麗な指輪やネックレス、ブローチが並んでいる。
「うん、これなら邪魔にならないね。引っかからないし。これとかは豪華だね、色が華やかだし、こっちはグラデーションになってる? 何か分かったよ、頑張ってみるね?」
「その調子よ〜」
出来上がったら、皆にあげようかな? 要らないかもしれないけど……。ところで金属っぽいのはどうやって出したら良いんだろ? いや、石が地味だから華やかな物にしよう。
デザイン画を描いてから作って行った。スフォラに絵を描く準備をして貰って、描いて色を付けて行く。タブレットって修正が楽なのが良い。砂漠の夜の蒼い砂の海をイメージして、色ガラスのペンダントが一つ出来上がった。ラークさんにあげたいな……こんな蒼い目をしてたから。
レイにはもっと華やかな物が合いそうだな。皆に一つずつデザインを創っていく。春のお祭りの星始祭に向けて色々創ってみよう。
ヴァリーには魔結晶の指輪を送った。手に持ってる方が使いやすいと注文があったからだ。ホングもヴァリーの後処理に付き合って時々行ってるみたいだ。なので、ホングに合いそうなシンプルな物を送った。沢山並べた魔結晶のうち、一つは光のベール越しに魔力を込めて作ったので、光の属性が付いている、持ち主の守りに少しはなるはず。
「中々好いデザインじゃねえかアッキ。意外な才能があったんだな」
ポースが庭から戻って来て、僕の描いたアクセサリーのデザイン画を見ていた。
「本当? ポースは気に入ったのある?」
「俺様は闇の属性が良いぞ?」
ポースはやっぱりそっちなんだね。
「そうだね、これなんてどう?」
僕はずっと作ってた大きな闇の魔結晶を見せた。一昨日に完成した物だ。一センチ大くらいの大きさに育っていて、中には砂粒くらいの光の魔結晶が散りばめられている。中でそれらがゆっくりと廻って天体のミニチュアみたいに見える。かなりの力作なので緊張しながら渡した。
「こいつは…………」
「ポースの為に作ったよ」
「こいつは……スケールのでかい何かを感じるぜ。貰っても良いのか?」
声が感動してか震えているみたいだ。良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「いいよ。後は革表紙だね?」
「ああ、この魔結晶ならあの竜族の物より良いぞ。闇の属性の魔結晶なんぞ珍しいんだ。しかもこの大きさ……アッキ嬉しいぞ。これにふさわしい表紙を見つけないとな」
「そうだね、マリーさんが作ってくれるみたいだよ? ただ、まだ材料が育ってないから無理だけど、良い物を作るよ」
「ああ、良い持ち主に会えてよかったぞ。自分のマントの残りで作った革表紙じゃあなくて元から作ってくれるなんて泣けてくるぜ。……水は大敵なのによ」
「次は防水仕様にするから、ポースも泳ぐ練習をするんだよ?」
「何っ!? 俺様が泳ぐのか? お、泳いじゃうのか? 泳げるのかっ!!」
「そうだよ? ここは水の星だから泳がないとダメだよ?」
そんなに驚かなくても良いのに。
「そ、そうか……泳ぐ……泳ぐ……本が泳ぐ時代になったのか。知らなかったぞ、世の中は広いな」
ポースにはカルチャーショックだったみたいだ。
「そうだね、一緒に泳ごうね?」
「お、おうよ!」
ポースは水を気にしなくて良い、というのが嬉しいみたいだった。人魚の住んでる海底にも本があるんだから防水の本はある。濡れても水を弾いて直ぐに乾くし、ずっと海底でも色鮮やかなままだからきっと気に入ると思う。
「そういえば、闇の色のグリフォンに会ったよ。すごく強くてしつこく追いかけてくるから参ったよ」
「アッキ、そのくらいは捕まえちまえよ? 倒して服従させれば俺様が管理してやるぜ?」
「そうなの? 電撃で足止めしたけど、闇の魔法を飛ばそうとして来たから逃げたんだよ。しかも二匹いたんだ。でもその後に、すごく強そうな姉妹が捕まえて連れて行ってたよ。帰りに神殿で見たら、おすわりとか伏せを仕込まれてたよ。……あれはビックリしたよ」
言う事を聞かずに攻撃してこようとしたら、羽根をむしってた気がする。……いや、見てないから……僕は見てない。
「そんな事を仕込むなんて、どんな悪神だい?」
ポースでさえも驚いたみたいだった。
「闘神で守り神って聞いたよ?」
「そうか、闘神か。厄介だな。……奴らは戦うのが三度の飯より好きだって言うじゃねえか。邪神達も会ったら逃げろが合い言葉だぜ?」
「え、そうなの? 悪神や邪神が逃げるんだ?」
「当然だろ? 戦う度に強くなるんだそんなの育ててる場合じゃねぇ、とっとと逃げないとやられちまうじゃねぇか。悪神やら邪神は弱い者を狙ってこそなんだぜ? 強い者を襲ったりしねぇぜ」
なるほど、何となく分かった気がする。強い者からは力をかすめ取り、弱い者を捉えて下僕にするかいたぶる、それが悪神とか邪神なんだ。




