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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
せんれいなるせんのう
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62 合流

 ◯ 62 合流


 日が傾いて来た頃に目が覚めた。ベールを外して外に出たら連絡が来た。


「大丈夫か?」


 ホングが心配そうだ。


「大丈夫だよ、何かあったの?」


「いや、さっきから全然繋がらなかったから、心配したぞ?」


 ヴァリーが横から話しかけて来た。


「あっ、そっかごめん」


 ベールの効果で外と繋がらなかったんだ……。まあおかげでぐっすり眠れたけど。


「そっちは大丈夫なの?」


「あー、まだ掛かりそうだ。街に着いたら連絡を入れてくれ。じゃ、後で」


 僕が返事をする前に切れた。なんだか慌ただしそうだ。僕は高く飛んでみた。水の周りに街と緑があるのが遠くに見えた。煙が上がっている所がある。もしかしてあそこなんだろうか? ……煙が上がるなんて何があったんだろう。

 直ぐにテントを片付けて飛んだ。半分くらいの距離までは飛んだけど、後は歩いていくしかない。多分、二、三時間で着くと思う。読みは甘かった四時間程掛かって街の外に着いた。少し休憩して夕食をすませ、二人に街の外に着いた、とメッセージを送った。暫くして通話を示すサインが付いた。


「着いたか? 街の何処にいる?」


「外だよ。何処から入るの?」


「何処からでも良いから忍び込め。周りにいるのは敵だから見つかるな」


「誰もいないよ? ここ」


「何処だ?」


 僕は映像を見せてみた。その方が早いと思ったので。


「誰もいないな、南西の門の近くだ。中にいるかもしれないから気をつけて入れ、西の棟がそこから見えてるだろう? 同じ様な建物が東にある。そこまで一時間ぐらいで来れるな? うまくこいよ?」


「分かっ」


 通話は僕の返事を待たずに切れた。僕は飛ぶ魔法で塀の頂上付近まで飛んで、周りを見てみた。暗闇の中は誰もいないが、念のために闇のベールを被って飛んでいこう。……後一時間も歩けないよ。魔法を止めて普通(・・)に飛んだ。

 空から見たら同じ棟が向こうの方に見えた。この辺りは灯りも消えて人の気配が全くしない。どうなっているのか分らないけれど、東に向かって飛んだ。

 不意に影を見た気がして方向を変えた。変えた瞬間に何か大きな影が掠めた。慌てて建物の影に隠れた。月明かりの下に何かいる……最大限に気を張ってから力を抜いた。闇のベールを二重に掛けて影の中を選んで進み出した。これで見つかるようなら僕には無理だ。

 進んで行くと影が来た。でもさっきよりも正確には分かってないみたいだ。鳥? スフォラはグリフォンと言っている。真っ黒だし、闇を纏ってるみたいだ。僕は物陰に隠れてやり過ごした。が、まだこっちを見ている。東の棟までの距離も半分以上ある。

 グリフォンが羽ばたいた。上から来るっ、僕はスフォラに誘導して貰い、飛びながら逃げた。飛んで攻撃を躱し、スフォラが壁を蹴って方向を変えた。目が回りそうだ。グリフォンは嘴や爪で建物を壊しながら追いかけてくる。

 僕が空を飛び、スフォラが僕の魔結晶を使い、グリフォンにいつもよりも長めに電撃を打ち込んだ。さすがに痺れたのか動きが止まった。が、意識はあるみたいだ。闇の魔法が飛んでくるのを感じて、スフォラに退避を伝える。ベールのおかげか捕われずに済んだので、そのまま逃げた。

 東の棟が目の前に見える。ここまで来ると人が走り回っているのが見え出した。動くのを止めて様子を伺った。東の棟を囲むように武器を持った人が集まっている。僕は建物の陰に隠れてマリーさんに黒いグリフォンが出た映像を送った。直ぐに通話のサインが来たので繋いだ。


「アキちゃん、無事なの〜?」


 マリーさんが泣きながら画面に顔を擦り付けている。……久々の泣き顔だ。


「うん、なんとか電撃が利いたみたいで良かったよ。痺れて動けないみたいだったから、逃げて来たんだ」


 僕は魔結晶を見せた。


「血が出てるじゃないの〜。ちゃんと怪我の手当をするのよ〜?」


 本当だ、いつの間に?


「あ、うん。何か東の棟が囲まれてて普通には近づけないんだ。ヴァリー達と待ち合わせなんだけど、グリフォンがいるし、どうしたら良いんだろ?」


「こんなのガーラジークも望んでないみたいだからね。アキ? 大丈夫?」


 横からレイが話しかけて来た。


「レイ。疲れたよ。……絶対あの砂漠は二日じゃ無理だよ。空を飛んで二日だったし」


 ヴァリーの計算は絶対何か間違ってる。


「頑張ったね、アキ。メレディーナが今そっちの神と話してるから。そのまま待機だよ?」


「うん」


 一分もしないうちにメレディーナさんが声を掛けてくれた。


「アキさん、大丈夫ですか? 話は終りました、もう大丈夫ですからね」


「はい」


 良かった。何か救援が来るのかな?


「スフォラに転移装置代わりをやって貰うからね?」


「前に言ってたあれだね?」


「そうだよ。そっちにグリフォンを捕まえに行ってくれるみたいだから、準備してくれる?」


「やるよ」


 僕はどこか人がいなさそうな場所を探した。倉庫みたいな場所があったので、そこで闇のベールを仕舞って、準備をした。画面を可視化してスフォラがエネルギーを送ると、立体の紋様が現れた。転移用の魔術が始まった。

 直ぐに誰かが出て来た。女性が二人いて長い槍の様な武器を持っていた。魔術の力を感じてか、グリフォンが飛んで来た。二匹いる。スフォラはエネルギーを使い果たして休眠中だ。僕は闇のベールを二人に渡した。二重にしてある。二人はすぐに戦い始めた。

 十分程で鎖に絡めとられた黒いグリフォン達は地に転がった。戦いは派手で、ものすごい轟音と光が交互に聞こえて、東の棟の周りの兵が全員逃げ出す程だった。そりゃ棟のてっぺんが吹き飛んだら周りは危なくて逃げるよ。……戦いの終った後の変わりようを見て納得した。


「ヴァリー? ホング? 無事?」


 僕は二人に連絡を取ったが、しばらく返事がなかった。


「アキ? 大丈夫か? こっちはなんとか生きてるぞ」


「全くさっきのはなんだったんだ? 大地が揺れるなんて何があったんだ?」


「今、外の兵が逃げて誰もいないよ? 今は何処にいるの?」


「本当か? 東の棟にいるんだが、確かに静かだな」


「こっちに来れるか?」


「今、行ってるよ」


 僕と二人の女性、ネリートさんとセーラさんは東の棟に入っていった。途中でスフォラが目を覚ましたみたいだった。中はネリートさんとセーラさんを見ると、さっと道を空けてくれたので通りやすかった。二人の衣装は胸や肩の部分の装飾部分が金属で、鎧の代わりにも見えなくない。

 迷わずに進む二人について行くと、頑丈な扉が現れた。中に入ると、何人かの人とヴァリーとホングがいた。戦闘はまだ起こってなかったみたいで、兵同士が睨み合ってる状態だったみたいだ。


「銀の焔ヴァリート、我等が神がお待ちだ。ここが落ち着き次第、顔を見せにくるよう仰せだ」


 ネリートさんが、ヴァリーに話をしている。


「……承りました」


 ヴァリーが片膝を付いている。


「大儀であったぞ、アキ」


 セーラさんが、僕に何か言ってくれたが、時代劇語だ……。


「は、はい、ありがとうございます……?」


 なんて答えるのかがさっぱり分からないっ。今度蒼史に聞いてみよう。二人はそのまま外に出て、飛んで行ってしまった。多分あのグリフォンを回収して帰るんだと思う。

 なんとか戦いにならない方法をヴァリーは取っていたみたいだ。この棟で血が流れるのは禁止されてるからだ。篭城に近い作戦だ。食料は大丈夫だったんだろうか? 思った瞬間に誰かのお腹が鳴った。……分かりやすい。溜息とともに二人にクッキーを渡したら皆に配り始めた。数はあるけど、ここの人達に足りるかな?


「助かったよ。食料が尽きてどうしようかと思ってたんだ」


 ヴァリーはクッキーを口に入れながら、水を飲んで流し込んでいた。ちゃんと噛まないとダメだよ?


「まさかそれだけで僕を急がせたの?」


「腹と背中がくっ付きそうだったっ! サンドイッチはないのか?」


 情けない表情で二人がこっちを見ている。


「後少し残ってるよ」


「「貰った!」」


 二人の為にジュースと一緒にあげた。カップケーキも出したらがつがつと食べ出した。聞くと二人は僕と別れた後は殆ど食べ物を食べれてなかったみたいだ。この二人は食料は僕の担当みたいに思ってる節がある。少しは自分で用意しようね?


「で、あの二人ってなんだったの?」


「あー、ナリシニアデレート世界の神の妹って聞いてる。闘神で守り神だ。滅多に神殿から出ないが、一番強いと聞いてる」


「そうなんだ。すごい人達なんだね」


 それでグリフォンをなぶって遊んでたのか……。どう見ても一方的に遊んであげてる感があったはずだ。何で闇のベールを所望したのか分からないくらいだ。


「これでこの騒ぎは終ると思うんだが。……向こうから何か言って来たか?」


 ヴァリーが誰かに聞いている。


「いいえ、まだです。外はかなりの混乱のようです」


 ヴァリーの従者らしき人が答えた。


「何があったんだ?」


「外に黒いグリフォン達がいて、それとあの二人が戦ったんだよ」


 外の様子をかいつまんで話した。


「そんなものがいたのか? 奴らの強気が何故か分かったよ。こっちは全く知らなかったな……」


「棟が破壊されてるなんて、あの音はそのせいだったのか。建物が揺れてたのは棟が壊れたからか?」


「あの、クッキーはもうないのでしょうか?」


 隣にいた女性が聞いて来た。ヴァリーのお姉さんで、その隣は母だと紹介された。やっぱりこの人数でクッキーだけでは足りなかったみたいだ。


「うん、もうないよ、食料は空だよ」


「そうか、厨房はあるが作る者がいなくてな。困ってたんだ」


「分かったよ……」


 すがる様な目を受けて、僕は厨房に入ってみた。無惨に黒こげになった何かが散乱して焦げ臭い。……ここにいる人が全員が料理がダメなの? 嘘でしょ? ホングは出来るんじゃなかった?


「僕は材料ぐらいは切ったり出来るけど、味付けをダメ出しされたんだ」


 ホングの指さした先には鍋があった。開けて匂いを嗅いでみたが、食べ物の臭いじゃない。……全部片付けて材料を見てみると、芋と小麦粉らしき物しかない。調味料は何となく分かる物が揃ってる。ジャガイモを切って油で揚げて塩をふって出した。小麦粉擬きはジャガイモと合わせてニョッキっぽくした。乾燥ハーブらしき物でソースを作ったが食べれるだろう……。クッキーも作ってみたが、ちょっと硬くなった。この状況で贅沢は言うまい。

 作る端から料理が消えていった。僕が最後のクッキーを自分で食べていたら、話し合いが始まったみたいだった。話し合いは一時間以上続いて、決裂したのでもう一度改めて使者が来る事になった。誰かが外から材料を持ってきた。鳥が二羽だった。ホングが解体してくれて僕が料理をした。人数分いるので唐揚げにした。

 半日後、また使者が来た。話は全く噛み合ずに終った。僕は外に材料を取りに出た。夜に紛れて収納スペースに満タン入れて来た。ヴァリーの家を教えて貰ったので、そこから持ってきた。

 皇族の家だけあって地下にたっぷり用意されていた。使用人達は危険なので非難して誰もいなかった。裏庭に菜園もあったので、色々と野菜を拝借して来た。地下には卵やミルクもあったので遠慮無く使って、たっぷりと栄養のある物を出した。

 話し合いは最初から数えて五日後にようやく纏まった。ヴァリー達は疲れ果てていた。こっちも料理のバリエーションが尽きた。


「従者にも料理を仕込んでおいた方が良いよ。……それともヴァリーがやるか」


「……アキがいるしな」


「僕はいつも一緒にいる訳じゃないし……」


 従者じゃないからね?


「小麦粉と芋で料理が出て来た時は感動したな」


「ああ、生でかじってたからな……」


「悲惨だ」


 男女三十人以上いるのになんでだ! 後で聞いたら、出来る人はいた。ただ、皇族に出す料理は出来ないし、小麦粉とジャガイモだけでは何も出来なかったらしい。そんなの大丈夫だよ、飢えて死ぬ方がダメだよ? 遠慮しちゃダメ! 全くもうっ!


「大体あの距離は、二日で到達出来る距離じゃないよ……」


「着いたじゃないか」


「ホングがやってみれば?」


 僕が睨んだら、サッと目を逸らされた。


「おかげで新しい魔法が出来るようになったけど……」


「へえ、それは良い砂を拾ったな」


 ヴァリーがポテトチップスを食べながら、満足そうに飲み込んでいる。気に入ったみたいだ。ちょっとスパイシーに仕上げておいたから、暑いこの国にも合う気がする。


「それはそうだね、良い勉強になったと思う」


 そう思っておこう。


「習得魔法を見せてみろよ」


 僕はポテトチップスを一枚引き寄せた。


「……役に立つのか?」


「むー、立つよ」


 僕はホングの顔に、グラスに入ってた水を魔法で引っ掛けてやった。


「やったな?」


 ホングの攻撃を宙を飛んで回避したら、やっと二人が納得した顔で認めた。


「それは便利だな。僕もやってみよう」


「良い魔法だ、砂漠を超えられたら便利だ」


 むー、その判断はもっと早く出そうよ。


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