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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
せんれいなるせんのう
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60 砂漠

 ◯ 60 砂漠


 やっと、ヴァリーの世界に行く許可が下りた。ホングと一緒に待ち合わせの場所に行ったら、ヴァリーが待っていてくれた。ナリシニアデレートはアストリューと同じで神々と暮らすスタイルだった。

 なので神界は作られてなくて、神殿に着いた。ナッド大陸は火と土の大陸で砂漠と火山、オアシスと竜のいる場所だった。レガナザキ国はナッド大陸のほぼ中心にあり、そのすべての要素が入っている国だった。海だけはなかったけど砂漠、砂の海はあった。

 僕達は滞在の許可のお礼をそこの管理神に書面で伝えて、審査を終えた。荷物の中身を全部調べられたし、大変だった。

 砂漠に行くのは初めてだから、何がいるのか分からずにマリーさんに聞きまくった。そして、いつも通りにサンドイッチを作って貰ってたら、大事な事を思い出した。


「ヴァリーが、サンドイッチの味を気に入って、嫁に来て欲しいとか言ってたよ。でも、女性と思ってるみたいなんだ」


「ヴァリーってあの銀髪の子?」


「うん、そういえばマリーさんは男が好きでその格好なの?」


「この格好は綺麗からよ〜、性別は気にしないわ。でもまだお子様でしょ? あたしより強くなくちゃ嫌よ〜」


「分かったよ。そう言っておくよ」


 ……マリーさんより強いって言ったらかなり絞られそうだけどな。でも、料理を褒められたのは嬉しかったのか、サンドイッチはいつもの倍も作ってくれている。僕もその横で新しいクッキーを焼いていた。チーズ入りだ。こないだのフリーマーケットでまたチーズを買ったのだ。そんな感じで用意が出来たので来た。



「こないだは慌ただしかったから、先に帰ってごめんね?」


「大丈夫だ。回復役が足りないからって連れて行かれた時はビックリしたが、あれだけの事があったんなら分かるからな……」


 そうだったんだ……知らなかった。でも、ギダ隊長はそういって僕を連れて行ったんだ。確かにそれもあるといえばあったと思う。僕のベールは回復が付いてるからね。

 ここの世界はアストリューよりも魔法よりの性質が強いから、魔法の威力に注意をするように言われている。


「じゃあ、まずは俺の家に来るか?」


 ヴァリーが、神殿の中を突っ切って案内してくれている。


「いいの?」


「ああ、問題ない」


「ビックリするよ」


 転移装置に乗ってどこかに飛んだ。ホングの言う通りに驚いた。


「ここってお城?」


 宮殿? アラビアンな感じの建物が並んでいる。


「そうだよ、ヴァリーはここの皇子だよ」


 なんと、レガナザキ国の皇子ならしい。大陸の半分以上は属国になるみたいなことを言っている。


「そうはいっても、七番目だから関係ないよ」


「ほえー、おうじ。絵本の中にしかいないと思ってた。いたんだね」


 なんだか信じられない。


「不良皇子だ。執政には全く関わってないらしい。君の母君に愚痴を言われたよ」


「当たり前だ。もっと他を見てからでないと、俺には判断出来ないね。大体、十五人もいるんだ問題ないさ」


「でも銀の炎は後継者の証なんだろう? ここの神に選ばれたっていう……」


「それ以上言うな、折角の楽しみだ。それに、第二皇子もそうだから、俺はここを出てもかまわないはずさ」


「実際出てるね、組合に入ってるならそうだよね」


「その通りだ。着いたぞ、あれに乗っていく」


「うわ……」


 真っ赤な竜だ。黒と、緑もいる。トカゲじゃないよね? 羽根が付いていてるあれに乗って飛ぶみたいだ。僕、大丈夫かな……いざとなったらスフォラに飛んで貰おう。頼んだよ? 頼もしい返事が感じ取れたので良いかな。

 竜を専門に扱ってる竜使いが、それぞれ僕達を連れて飛んでくれた。長距離だと二人乗りになるみたいだった。前回はホング一人だったから、ヴァリーが竜を操って飛んだらしい。

 飛んでいる最中に下を見ると河が流れていて、その周りだけ緑に覆われていた。しばらく砂漠の上を飛ぶと遠くに湖が見えた。下には砂漠を行き来する人達が行き来している。所々に点在するオアシスがあってそこに人々が暮らしているみたいだった。神殿のある位置はあの河の上流にあるみたいだった。

 転移装置は神殿とあの王宮にしかこの大陸には無いそうで、移動はこの竜で空を行くか、砂漠を行くかの二択だった。アストリューに慣れてるといけないな……。

 ヴァリーの家は王宮から離れたオアシスの一つにあって、そこに連れて行ってくれるみたいだった。今はそこで母親と姉とで一緒に生活しているみたいだった。どうやら皇子達はそれぞれの宮に住んで、オアシスごとに治めているらしかった。

 一時間後に竜達の休憩を挟んだ。かなり乾燥しているので、マスクは必須だ。目にもゴーグルがいるな……上空はそうでもないけれど、下は少し風が吹くだけで目に砂が入ってシパシパする。僕はマリーさんに借りたゴーグルを付けた。砂漠用みたいで砂を弾いてくれ、曇り止めも付いてて良い感じだ。日本の神界で買ったらしく、暗視機能まで付いてる。


「何だそれ?」


 ホングが興味を示して来た。


「ゴーグルだよ。目に砂が入らないから……」


「いいな、貸してみて」


 ホングもさっきから目をしばたいている。


「返してよ? 借り物だから」


「またか。すごく高いとか言うか?」


「高そうだよ、夜でも見える機能がついてるから」


「そ、そうか……」


 ホングは恐る恐るつけ心地を確かめた後、ヴァリーに渡していた。


「中々いいな、何処に売ってるんだ? 組合か?」


 ヴァリーも気になったみたいだ。


「地球の神界だよ」


「知らないな」


「僕も聞かないな。組合に売ってる方が良いかもしれないぞ?」


「そうだな、探してみよう」


 ……軍用とかってそう滅多に売ってないと思うけど、黙っておこう。マリーさんも警察経由で手に入れたみたいだし。休憩後、二時間程してから何かおかしい気がしてきた。僕の緑の竜は少し遅れて飛んでいるんだけど、行き先が皆とずれ始めてない?


「あの、なんだか行き先が違っ「黙れ、突き落とすぞ!」」


 やっぱり違う方向に飛んでる。僕はスフォラにヴァリー達に連絡をして貰ったが、妨害されてるみたいで通じなかった。


「離して下さい」


 掴まれた腕が食い込んで痛い。


「暴れるな、落ちるぞ」


 その言葉と同時に足を滑らして落ち、紐で宙ぶらりんになってしまった。竜も下で僕が暴れて揺れてるせいで、飛び方がかなりアクロバットになっている。とうとう紐がしっぽに絡んで竜が暴れ、余計に僕も揺れて悪循環に陥った。

 そのまま変な悲鳴をあげながら、高度が下がって竜は横に突っ込みながら着地した。反動で竜使いの人は砂に頭から突っ込んで着地を決めていた。僕はスフォラのおかげて軟着陸出来た。さすがに僕達の様子がおかしい事に気が付いた二人が、引き返して来てくれた。


「大丈夫か?」


「うん、僕は大丈夫だよ。でも、竜が……」


 どうやら警戒して僕を近寄らせてくれないので、傷めていそうな翼を治療出来ない。


「翼を傷めてるな。あのくらいなら二、三日で飛べるようになるだろう」


「治療したいんだけど……警戒されてるから、近寄れないんだ」


「ああ、待ってろ。落ち着くまで時間が掛かる」


「分かったよ」


「何があった?」


「何か別の方向に飛び始めたから聞いたんだ。そしたら、黙れって言われて、腕を掴まれたんだよ。痛くて振りほどいてたら落ちた」


「嘘は言ってないな」


「そうか、お前を攫うつもりだったか。……それで奴は治療されてなかったんだな。まあ、見れば分かったが」


 まあね。そっちも僕は近づけないでいた。竜使いには怪我をした手を抑えながらも、大きなナイフを構えていて睨まれていた。スフォラが電撃をいくつか飛ばしたら、警戒して近寄っては来なくなったが、ヴァリーの戻って来た姿を見て直ぐに走って逃げて行った。こんな砂漠で荷物を置いて行ったから、大丈夫じゃなさそうだけど……。

 連絡が取れない事も言ったら、砂漠の真ん中では無理ならしかった。そっか、そっちの通信の方がダメなんだ。いや、スフォラが妨害されてるという。マリーさん達にも連絡がつかないみたいだ。これはおかしい。


「スフォラは妨害されてるって言ってるよ。何か分かる?」


 今回も分体は通信に使っている。


「いや、分からないな……」


「おい! ちょっ、ヴァリー、あれ!」


 竜使い達が行ってしまった。いつの間にか手を怪我してたあの竜使いも、逃げた所から大回りして彼らと合流して去ってしまった。


「……ヴァリー、どういう事?」


 ヴァリーの顔を見ながら聞いてみる。


「さあ、こっちが聞きたいね。俺を置いていくとは良い度胸だ」


 不機嫌だ。当たり前だけど怒ってるね……。


「クーデターとか御家騒動とか言わないよね?」


 一応、あり得そうな事を尋ねてみた。


「さあな、戻ってみないと分からないな」


 ヴァリーにも分からないみたいだった。取り敢えず、僕はいつもの収納スペースから飲み物を出して、二人にも渡した。マリーさんの肩掛けカバン風の収納スペースはいつも大活躍だ。


「ああ、済まない、水の魔法は使えるか?」


「使えるよ、しょぼいけど」


 僕は水を出してみた。いつもよりも勢い良く水が溢れた。そういえばここは魔法が強く出るんだった。聞いてたのに忘れてたよ。


「充分、しょぼくないよ」


 ホングが笑っている。竜も落ち着いたみたいだから魔法で水をあげたら、少し警戒を解いてくれたみたいだった。さらにヴァリーに食べさせて大丈夫か聞いてから、サンドイッチを食べさせた。食べた後にめちゃくちゃ顔を舐められた。すっかり警戒が解けたみたいなので治療を始めた。

 最初は不安そうだったけど、癒しの力を感じたみたいで直ぐに大人しくなった。怪我も直ぐに治った。もう一度、時間を置いてからやったら、完全に治りそうだ。翼に光のベールを巻いておいた。

 僕達はその間に相談した。三人乗りで帰るには、この竜は小さいので無理だ。なので、ヴァリーが帰って直ぐに僕達を迎えにくる事になった。僕達は砂漠に慣れてないけど、スフォラが方向が分かるので大丈夫だと思う。ヴァリーに何かあっても砂漠を二日進めば、オアシスに着くので心配するなと言われた。

 砂嵐の時はテントに入れと言われたが、肝心のテントが竜には括り付けてなかった。マリーさんの用意してくれた荷物に小さいテントを発見した。ワンタッチで広がる簡易テントだ。試しに広げたら狭いけどテントが出来た。これ、多分マリーさん用だ。昼間はこれで太陽を避けた方が良さそうだ。今、正にお昼時だ。僕達は三人では狭いテントに入って話し合った。


「もう一つくらい入ってないのか? このテントちゃんと窓があるぞ、外が見えるな」


 物珍しそうにヴァリーはテントを確かめている。


「残念だけどないよ」


 僕達はお昼を食べる事にした。マリーさんのサンドイッチを出した。


「面白いな、一瞬で出来るんだなこのテント。狭過ぎるけど簡単で良いな」


 ホングはテントの構造に興味を持ったみたいだった。僕は風通しを良くする為に天井部分近くのチャックを開けた。風が通って熱気が籠るのを防いでくれている。


「良くなったぞ?」


「そうだね、良かった。この時間はかなり暑いね」


「そうだな、飛んでると風で暑さを感じないが、下は暑いな。どこか岩陰でもあれば良かったが、この付近には見当たらなかったからな……」


 僕達はサンドイッチを食べ始めた。思い出したマリーさんのメッセージをヴァリーに伝えた。


「そうか、ふられたか……」


「ヴァリー、気にするな? これだけの料理の腕前だ、他に男がいるんだよきっと」


「マリーさんには二人とも会ってるよ」


「「え?」」


 僕がマリーさんの説明をしたら、ヴァリーの顔色が悪くなった。ホングは慰めの体制に入った。ヴァリーはしばらく落ち込んでいた。


「でも、ヴァリー一人で大丈夫? ホングと一緒に行っても良いよ?」


 失恋したばかりだしね、そんなにショックを受けるとは思ってなかったよ。


「僕も賛成だ。これだけ揃ってればこっちは一人でも大丈夫そうだが、そっちが危なそうだ。加勢するが、どうする?」


「しかし、危険かもしれないぞ?」


「言うな。この前は巻き込んだからな、手伝うぞ」


 ホングが手伝う事になったみたいだ。


「通信を回復してくれると助かるんだけど……」


「分かった。それを最優先にしてみよう。一人で大丈夫か?」


「うん、スフォラもいるから一人じゃないよ」


「そうか、悪いな」


「そうだ。これ、使えるからやってみて」


「……魔結晶? 小さいな」


「それを魔力として光とか水とか出してみて」


「水は外でやれよ?」


 ホングが慌てて言った。確かにびしょびしょになる。しばらく苦戦していたが、ヴァリーはこつを掴んだみたいだ。


「……光ってる」


 昼間の光に負けずに光った。ヴァリーが外に出て、炎を出した。銀の炎がまるで生きてるみたいに宙を自在に走っている。


「良いのか?」


「いいよ、まだあるから。ホングは使えそう?」


「ああ、何か分かったよ」


 そういって外に出て砂を風で巻き上げながら竜巻を作っていた。うわ、中でバリバリいってるのは雷かな? 二人とも魔法が得意そうだ。何となくストックで作ってた物を三つ持ってきておいたんだ。役に立ちそうだ。

 二時間程してから二人は竜に乗って、ヴァリーの宮殿に向かって行った。僕は夜の移動に向けて眠る事にした。まあ、向こうが何もなかったら、夜までにはここに迎えに来てくれることになってる。それがなかったら朝になると思うと言われた。食料も水も十分に四日分はあるので心配ない。異界でスフォラと二人旅か、まあ悪くない。


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