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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
せんれいなるせんのう
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59 行き止り

 ◯ 59 行き止り


 夢縁学園も色々と内部で派閥争いなるものがあるのが分かった。ではこの張り紙も意外とそうなのかもしれない。今日、一番に確かめに来たらしっかりと無くなっていた。でも、ここに入る前にすれ違った二人が張り紙を持っていた気がする。一人は知ってる顔で、加島さんだ。図書館以外で会うのは初めてだ。


「こんにちは、加島さん」


 図書館で待ち構えていたら、やっぱり来た。


「やあ、鮎川か」


「あの、質問があるんですけど良いですか?」


「あー、うん良いよ。何かな? 分からないところでもあった?」


 いい人だ。理由も聞いたら答えてくれるかもしれない。


「いえ、勉強の方も聞いてみたいんですけど、今日は別の件です。外に出て貰っても良いですか?」


「碌な用事じゃなかったら困るよ?」


「学食横の張り紙の件です」


「……分かったよ」


 少し怪訝そうな顔をしつつも了承してもらえた。ついでなので、成田さんお勧めのパイを出すお店に行って注文した。誘ったのは僕なので奢りだ。アップルとパンプキンとで迷ったが、アップルにした。加島さんは紫芋のパイを注文していた。


「中々、美味しいな」


「そうですね、お土産も売ってたから買って帰ろうかな」


「結構、甘党だな……」


「加島さんは違うんですか?」


「いや、まあ、好きだけど、中々こういう店には入れない」


 そういって、店内の乙女な内装を見てちょっと恥ずかしそうに苦笑いした。まあ確かに男二人は浮いている。もう一人欲しいところだ。


「今日、サークルの紙の回収してた中に、僕の張り紙があったはずなんですけど、その張り紙を回収する条件はなんですか?」


「条件? 何の事か分からないよ」


「なんで勝手に剥がしたんですか?」


「えーと、これだよ?」


「……これって?」


「あー、まだ基礎だから知らないか、アルバイトだよ。これとこれが一ヶ月くらい張りっぱなしだから外せっていうのが書いてある。たまに出るから、見つけたらやってるんだ。えーと、写真を撮ってメールで送るのもあったかな?」


 仕事や、アルバイトの斡旋のあれだ。これがそうなんだ? 依頼書は初めて見た。


「……それはこの前やってる人を見ました。じゃあ、張り紙をして一週間なのは知らないんですね?」


「え、そうなの?」


「そうですよ」


「それは悪かったよ。この依頼を出した人にも問い合わせてみたいけど、書かれてないからな。……ほら、ここ」


「本当ですね」


 指で示された先には、何も書かれてなかった。確かにない。連絡先も書いてない。依頼人は田中となってる。


「この依頼って、めちゃくちゃ簡単ですよね。何で自分でしないんだろ、バイト料は良いんですか?」


「あー、良くはないけど、簡単だしすぐ終るからね。学生のお助けの依頼だと思ってたよ」


「そっか。怪しい仕事って感じには見えないんだ」


 僕は一連の事を話してみた。これが二度目で、それも一週間で剥がされた事、普通枠生だとかなり早く剥がされたりして、仲間集めが難しい事等だ。そういえば、銀枠の勉強会も人を集めるのが大変だから銀枠のみにしたのかもしれない、直接話しかけて来てたし。


「へえ、それで張ってたんだ?」


「そうなんですよ。加島さんが張り紙を持ってるのをみて、慌てて確かめたらやっぱり無くなってて、それで聞きに来たんです」


「なるほど、それを聞くとこれが怪しく見えるよ」


 と、言って依頼書を振った。


「そうですね。誰が何処のグループに入っているのかを、調べてる人がいるみたいですが、妨害は良くないと思います」


「へえ、それって警察関係……かな? ……ふうん」


 僕の顔色を見ながら加島さんが聞いて来た。いや、まあそうなのかな? 怜佳さんはどうやって調べてるんだろうか。……そこまでは分からない。


「ここに残りたいと思ってる人は多いからね。僕はちょっと疲れたから、今は何もしてないかな。知識を詰め込んでも、こういう事は余り得意じゃないんだ。……そうだね、次からはこの手の依頼は見送るよ。それで良いかい?」


「え、やっても良いですけど。どのみちその依頼を出してる人が、何の為にやってるのか知らないけど、そっちを止めないと他の誰かがやるだけですし……」


「いいの?」


「良いですよ。罪を被せに来た訳じゃないですし、謎が深まっただけですよね……」


「確かにね。依頼を止めないここのスタッフも、おかしいと言えばおかしいな」


 加島さんは難しそうな顔で、ちょっと首を傾げていた。


「なるほど、それもそうですね。気が付きませんでした……」


 そうだ、こんな怪しい仕事依頼を通す方も変だ。これは怜佳さんに聞かないと分からないところまで来た。


「ここの組織にはさすがに手は出せないな」


「そうですね……」


「僕達はそこに手が届かないんだ。……この依頼みたいに誰かが邪魔をしていても、知らない間に自分もやってるんだ。知ってしまったから、僕はこの依頼はもうしないよ。出来ない……」


 それもそうか、僕もこんな依頼は裏を知ったら出来ないな。


「そうですね、他の誰かがするのも止めれないんですね、上の人がちゃんとしないと」


「ああ、学生、個人じゃ無理だ」


「今日はありがとうございました。甘い物以外も食べるの探してるんですけど、何か知りませんか?」


 意外に沢山教わった。連れて行ってくれるみたいだ。これは食べ歩き会発足か?

 アップルパイをアストリューから怜佳さんに送って、ついでに画面越しに話をした。勿論、今日の事が話題だった。怜佳さんの方も独自で調べていたみたいだが、途中で途切れてしまい捜査は難航していたみたいだ。これで繋がりそうだと嬉しそうだった。


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