54 睡眠
◯ 54 睡眠
今日は、ポースに僕の小さな魔結晶をあげた。紫月のおやつの予備はあるので大丈夫だ。血結晶が割れてるので魔法が殆ど使えないみたいだったし、使い心地を見て貰っていた。ポースは最初だけちょっと使いにくかったみたいだけど、慣れたら大丈夫だったみたいだ。
「威力には欠ける。が、使えない事はないな……」
器用に小さな竜巻を起こしながら、ポースは僕の魔結晶で魔法を使っていた。殆ど闇の適性しか無かったんじゃ……。
「何かあるの?」
「まあな、そんな気はしてたが、戦い向きじゃないな」
今度はポースはぷかぷか浮き出した。自由に飛んでいる。
「そりゃそうよ〜、アキちゃんはどっからどう見ても、戦えそうにないわ〜」
「だが、妖精族特有の変化に富んだ魔法は良いぜ?」
「使い方次第よね〜。アキちゃん、特訓よ〜」
「うん、やってみるよ」
「その調子よ〜。闇の魔法での精神治療はどうなの?」
「うん、神官さんに教えて貰ってる」
「お、じゃやってみせて貰おうか?」
「ポースに掛けたら良いの?」
「勿論だ。どんとこいってんだっ。アッキの魔力は把握したぜ、楽に出来ると思うなよ」
「ええっ? 拒絶するの?」
「当然だ。精神に異物が入ったら拒絶するのが当たり前だぜ? そうならねえようにそっとやるか、力でごり押しかどっちかだ」
「ごり押しはアキちゃん、この間されたでしょ〜、あんな感じよ〜」
「ああ、あの攻撃……」
なるほど。
「そうよ〜、頑張って〜」
そうか、あれとは逆にソフトにやれば良いのかな? ポースを微かに闇で包んでいく。……月が薄雲に隠れるくらいに優しく陰らせて、幾重にも重ねて癒しの波動を送る。こんな感じで良いのかな? 閉じていた目を開けたら、何故かマリーさんが眠そうな目を擦っていた。
「あたしに掛けてどうするの〜?」
「あれ?」
「なにっ? 中々魔法が来ないと思ったら、そっちに掛けてたのか?」
「どうやったらポカレスとあたしを間違えれるのか、すごく謎だわ〜」
確かに。仕切り直して、もう一回やったら二人とも眠ってしまった。おかしいな、眠りの魔法じゃないはずなのに、何か間違ってるのかな?




