53 甘味
◯ 53 甘味
事件のせいで、張り紙はそのままになってるみたいだ。沖野さんからのメールを読み、こっちの張り紙の事は、月曜までお預けになったのを確認した。一応、これからお汁粉を食べに行く約束だったので、皆でお出かけだ。
「こっちだよ」
「あそこか。粒餡か?」
「どっちもあったよ。僕は今日はこし餡の方にするよ」
「ふむ、では粒餡にするとしよう」
蒼史はどうやら、和菓子が好きみたいだ。紅芭さんも付いて来ている。店に入って案内された。みんなが席についてメニューを見ている。
「紅芭さんは甘い物は大丈夫なんですか?」
「余り甘過ぎるとダメですが、お団子はみたらしとかが良いですね」
「そっか、良かった。甘さは控えめだったから大丈夫と思うよ」
辛いの以外も大丈夫だったんだ。
「苺大福が売ってたわ、帰りに買って帰ろうかしら……」
董佳様は苺大福が気になるみたいだ。確かにあれは美味しそうだ、この前の時は売り切れてたから、今回は僕も買って帰ろうと思っている。
「あれは美味しそうね、董佳」
「そうね〜、あたしも買って帰ろうかしら〜」
「うん、皆で食べよう。数あるかな?」
マリーさんもレイも気になるみたいだ。
「大丈夫でしょ〜」
みんな注文が済んだみたいだ。ついでに苺大福と最中も買って帰るので、用意して貰っておいた。
「この人数だと店も半分貸し切りみたいになるね」
レイは雨森姉妹と話を続けている。
「そうね、たまには良いわね、騒がしいのも」
怜佳さんもお出かけが楽しいみたいだ。
「魔法の方は大分出来るようになったのか?」
蒼史が尋ねてくれている。
「うん、大分出来るようになって来たよ。あんまり強力なのは無理だけど、こないだ埃みたいに細かい砂が出て来たよ」
パウダー状の細かいもので、何の役にも立ちそうにないけど進歩した。注文のお汁粉が来た。白玉が美味しそうだ。皆の分が運ばれて、いただいた。
「そうか、炎はまだなのか?」
「んー、なんか煙は出て来たんだけど、火は出なかったよ」
「煙ですか?」
「うん、何でだろう?」
「火のない所には煙は立たぬと言うが……」
「確かに、変ですね」
三人で首を傾げたが、答えは出なかった。何種類かの魔法を使えるようにならないと、新人の仕事に付いても苦労するみたいな事を言われたので頑張っている。
たまに新人をランダムで試験の様な事をするみたいだった。大体はチームに分けて、一つの仕事を達成出来るかを見るとかそんな感じみたいだ。そこで評価を得られないと待遇が下げられてしまうみたいだ。
ホングにも勧められて組合の規約を読んだりして、大まかな事だけでも目を通して覚えている。でも一番は僕の取り柄の、癒しの力を伸ばす事だとレイには言われている。なので止血やら、包帯の巻き方やら、応急処置の仕方も少しずつ教えて貰っている。
意外と悪い箇所を感じるのは得意みたいで、教えてくれてる神官さんにも褒められている。何となく、流れの悪い所が分かるのだ。もう一段階積極的に感知するのも教えて貰っていて、もっと細かく分かるようになれば対処しやすいみたいだ。
たまに庭の木で練習している。生物ならたいてい分かると言われたからだ。ポースにも試してみたけど、くすぐったがられてしまった。
「あら、確かにそういう調査は昔からあるわよ。でも、妨害はしてないと思うけど?」
お汁粉を食べ終わってから、お茶を飲んで口の中を引き締めていたら、董佳様の声が聞こえた。
「それを調べてる途中みたいだね」
「そう……もし、その情報を調べている者が、そんな妨害をしているのなら訳を聞いてみたいわ」
怜佳さんは小さく溜息をついていた。
「ふうん、こんな風な集まりの会を調べて、交友関係を調査するのは何処でもあるんだね」
そう言ってお茶を飲み出したレイと、目が合ったので聞いてみる。
「組合でもあるの?」
「勿論あるよ。大まかにだけどね、友人関係くらいは把握してるはずだよ?」
「そうだったんだ」
組合もわざわざ調べてるんだそんな事。
「たまにランダム試験で、友人関係同士で競わせたりも合ったみたいだね」
「あら〜、わざとバラバラにして試してるって聞いたわよ〜」
「私達は大人数での訓練でしたね。協調性をみる為のようでした」
「ふむ、抜け駆けや足を引っ張るようなら、減点されていたな」
「意外と性格で分けられてそうね」
怜佳さんが皆の顔を見て、そんな分析をした。
「うん、その意見に賛成だね。性格の診断なんて何時やってるんだろうね?」
レイが首を傾げている。
「誰か調査してるのでしょうか?」
紅芭さんも首を傾げている。
「メレディーナさんだったりして?」
僕は当てずっぽうで言ってみた。
「……あり得るかも。今度聞いてみよう」
レイが聞いてみるつもりみたいだ。結果は後で教えて貰おう。




