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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
せんれいなるせんのう
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49 趣味

 ◯ 49 趣味


 ……呪いのわら人形セットの作り方を見ながら、かなり大変な儀式をやるんだと感想を持った。こんなに手間暇掛けて、手順を頑張ってそれでも呪いたいんだろうか?

 それよりもこっちの方が面白そうだけど。折り紙の遊びだ。少し血を垂らして、へにょへにょと筆で字を書く……最後に息を与えて……お、動いた。ひらひらと紙の蝶が舞っている。


「お、アッキやるじゃねえか。仮の命の出来上がりだな。ピソルが得意としているんだ」


「ピソルって邪神の? こういうのを邪神も折るの?」


 意外と可愛い趣味だ。


「いや、死体に術を込めて作るんだ」


 全く違った。


「……そ、そうですか」


 同じに扱わないで欲しい。しかも、自分が殺した死体が一番動かしやすいとか……そんな情報は要らないし。


「瘴気を放ってぼろぼろに崩れ落ちながら、それでも動いて行くピソルの兵は恐れられてる。普通ならそんなもんが街に現れただけで、病気が広がっちまう。奴の瘴気は侵蝕して広がるから厄介なんだ。邪神や悪神でさえ嫌がるからな……己の瘴気の力を上回られてたら終わりだ。奴の支配下にされちまう」


「随分怖いね」


「そうさ、こんなのがゴロゴロいるんだ。だがここは随分と違うな。……なんていうか魂が抜けちまいそうだ」


「……そんな酷い人はいないからね。助け合って生きてるよ」


「やっぱりあり得ねえな、協力する事はあっても助けるとかはないな。強くなければどんどん置いて行かれるし、生き残れねぇし後ろからやられねえようにいつも気を張ってる。それが普通ってもんだ」


「そんな事してたらなんにも無くなるよ?」


 なんだか余裕がない気がする。気持ちに余裕がないとなんにも出来ないよ? 僕なんて特に。


「そうだな、アッキみたいに何かボーとしてねぇな。俺様は偉大な魔導書だから色々考えるが、デザージの奴は割と馬鹿だったからな、ドジばっかりで俺様の力がなきゃ、今頃は誰かの配下にでもされてただろうさ」


「そうだったんだ。ずっと、デザージの面倒見てたんだね? 確かにポースはすごく存在感があるよ。魔導書としても力があるんだね」


「そうか、分かってくれるか? 今はこんなだが、修理が終ったらもっと俺様のすごさを教えてやるぞ! アッキの魔石を見たが、あれは人間の物にしちゃ珍しいな?」


「妖精種の中に、あんな感じのを使ってる種がいるみたいだから、参考にしてるよ?」


「そうか! 妖精といえば魔法専門と言っても良いくらいだ。アッキもそのくらい使えるってことだな?」


「マシュさんがそんな事いってたから、頑張るよ。この紙の蝶も今日は出来たし……」


「そうだな。初めてでちゃんと動いてるなら、大したもんさ。そいつに目をつけて記録させれば、諜報も楽だぞ?」


「チョウホウ?」


「そうだ、情報集めは基本だな。自分の影に命を吹き込む奴もいたな……使い魔にしたり色々だ」


 ああ、情報を集めるスパイみたいなあれか。


「使い魔……それは見た事あるよ。お福さんに成り済ましてたんだ」


 今思い出しても嫌な事だ。人の家のペットになんて事するんだろう。


「おっと、割と高度なテクニックだぞ? 擬態させてたんだろ?」


「そうなんだ。もう捕まって解体されたって聞いてるよ?」


「そうか、惜しい奴だな」


「惜しくないよ、僕はそれで死んだんだから」


 僕がムッとしてたら、ポースが慌てて喋り出した。


「何っ?! もう解体したのかっ、俺様が敵を取ってやるのに!」


「ありがとう、ポース」


 その時の話をした。そういえばポースが僕の事をちゃんと聞くのは初めてかもしれない。自分語りがポースは得意だから……。


「酷えな……お子様に手を出すなんてそいつはいけねぇ、悪神の風上にも置けねえぜ。デザージの奴だって、直接はお子様には手を挙げれなかったんだぞ? 趣味じゃねえって言ってたが、ありゃ意外とお子様には弱かったみたいなんだよな……」


「意外だったんだね」


 驚きだ。


「まあな、邪神や悪神だって一つはタブーがあるのさ。でないと体が保てないとか言ってたからな……」


「そうなの? 何か大変なんだね」


 変なルールがあるんだ。


「そうみたいだぜ? 俺様には分からねえ決まりがあるんだろ。破壊してるとある程度を超えたら捕まるからな、そのギリギリをやってる奴も多い。だが強さを目指すならそこを超えないと得られねぇからな、頭を使わないとダメなのさ」


 悪神の世界も案外大変そうだ。動いていた蝶が止まったままになった。術が切れてただの紙に戻ったみたいだ。これ、闇のベールでやったら使い魔になるってことかな?


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