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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
せんれいなるせんのう
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48 甘党

 ◯ 48 甘党


 大量のウイルスはスフォラがちゃんと処分して捨ててくれたので、メールだけが残っているが読む必要はないなと思い、さっき全部捨てた。気分を害する為だけに送られたメールなんて、開けるだけ無駄だ。プレゼントも無理に受け取らなくて良いんだ。こんな場合は特に。

 もし、僕が秘密を握られて、人を騙して勧誘するならどんな秘密だろうか、と考えて歩いていたら声を掛けられた。


「千皓くーん」


「あ、沖野さん、成田さんも……こんにちは」


 相変わらず仲がいいな。


「ああ、元気か?」


「はい。今日は講義ですか?」


「そうだよー、さっき終ったところ」


「本当ですか? 僕も今日は終わったところです」


「じゃあ、何か食べに行くか?」


 成田さんが提案して来た。


「良いですね」


「じゃあ、今日は美味しいケーキセットを食べに行こうー」


「お、久しぶりにカロンのケーキセットか? あそこはフォンダンショコラがあったな」


「バレンタインが終わったところだから、空いてるよきっと〜」


「そういえばありましたね……」


「千皓君は貰った? チョコ」


「え、と。義理チョコを家族からと、先輩からとお世話になってる人から……」


 母さんと妹、紅芭さんにマリーさん、雨森姉妹に美寿さんだ。


「本命は?」


 意外にも成田さんに突っ込まれた。


「それはなかったです」


 頭を掻き、誤摩化し笑いをして答えた。店に着いたみたいだ。早速注文し始めた。お勧めのフォンダンショコラだ。


「そうか、でもそれだけ貰えてたら大丈夫だろう」


「そうですね、二人はデートでしたか?」


「もっちろ〜ん。お家デートだよ」


 沖野さんが嬉しそうに返してくれた。


「良いですね、手作りチョコですか?」


「いやー、作る方はダメだから、買って来た物だよ」


 今度は照れ笑いをして目を逸らされた。聞いてはダメな話題だったらしい。


「愛美のケーキはケーキじゃない。石みたいに硬い……」


 ぼそりと成田さんが告白した。


「もうっ! ちょっと失敗しただけじゃない〜」


 足を踏んづけて成田さんの発言を責め、沖野さんは機嫌を損ねてしまったみたいだ。なるほど、ケーキ作りはダメなタイプか。何でも欠点はあるもんだよね。


「ケーキがダメなら、チョコフォンデュとかは出来そうだよね」


「その手があった。今度はそうしようっ」


「……愛美の料理の腕前なら、そのくらいが調度いいな」


 成田さんが何か納得の表情で頷いている。その台詞は危険ですよ? 思った通りに足を思い切り踏まれていた。今日の成田さんは地雷発言をする日みたいだ。注文の物が運ばれて来た。


「この前から、会員の募集を張り紙に書いてあるんだけど、ちっとも連絡が来ないんだ」


「あー、難しいと思うよ〜。張り紙とか直ぐに剥がされて、捨てられたりするから。金枠の人だとそういう妨害はないんだけど、メンバー募集は難しいよ?」


「そうだったんだ。そんな嫌がらせする人がいるんだ」


 ケーキにフォークを入れたら、とろりとチョコが中から溢れてチョコの香りが広がる……。


「何処で調べるのか知らないけど、張られたら直ぐに剥がす人がいるんだ」


「何でそんな事するんだろ……」


 言いながら口に運び味わった。うーん、濃厚っ!


「さあ、暇なんじゃないかな」


 沖野さんも話しよりも今はケーキの方に夢中だ。


「そうだよね、そんな情報調べるだけで大変そうだし、誰がそんな情報を知ってるんだろう?」


 ケーキの残骸を飲み込みながら、疑問を口に出してみる。


「確かに、誰が調べてるんだ?」


「いやーん、夢縁七不思議っ?」


 体に染み渡るチョコの甘さを表現したかの様ないやーんと、驚きのいやーんが重なったような、微妙な声を出しながら、沖野さんはケーキにもう一度フォークを刺していた。


「馬鹿、そんな訳あるか!」


 何故か、成田さんは七不思議が気に入らないようだ。


「面白そうだから調べてみようかな……」


 チョコの甘さに気が大きくなっていたのか、そんな事を口にしていた。


「確かに、面白そうだ。気になるし、暇なうちに調べてみるか?」


 成田さんもノリで調べる事にしたみたいだ。


「じゃあ、探偵団の発足?」


 そんな訳で、調べてみる事にした。まずは僕が紙を張り出す。それをそのまま沖野さんと成田さん、僕の順番で学食からこっそりと見張った。その日は誰も来ずに空振りだった。


「今日はダメだったけど、明日もやるからね!」


「はりきってるね、仕事は大丈夫なの?」


「ああ、最近は余りないんだ。何か白黒ブレザーも余り仕事がないって言ってたな。警戒態勢が取られてるのに仕事がないなんて、みんなおかしいって言ってる」


「よっぽど危険なのかな?」


 さすがに白黒ブレザーになったら、警戒態勢が敷かれているのは皆知ってるんだな。


「さあ、分からない」


「ま、明日も見張りを頑張ろー、おー!」


「おー!」


 気合いを入れる為の雄叫びを、沖野さんがあげたので付き合ってみた。


「いや、付き合わなくて良いんだぞ? 鮎川」


 成田さんは恥ずかしそうな感じで咳払いをしてから、そんな事を言った。


「まあ、気分的に?」


「意外にノリが良いね、千皓君。そのくらいが良いんだよっ。優基も見習った方が良いよ?」


 今日の成田さんは、沖野さんに頭が上がらない日だったみたいだ。


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