46 干渉
せんれいなるせんのう
◯ 46 干渉
今日は夢縁の図書館に来ていた。ポースの助言に従って、本の中の世界を、著者の精神世界が本に入っているのを感じながら、選ぶ事にした。闇の魔法を使う準備だ、と言われたがどうなんだろう……本は生きてないけど分かるだろうか。いや、ポースと同じでこれもまた生きてる本なのかもしれない、と思いつつ本の気配を探りつつ歩いた。
波長の合う本を探しつつ、今日の課題に合う本も探した。レポート作成に必須だ。
前にも思ったけれど、本の装丁って色々だ。黒は重厚なイメージだし、皮の装丁は金の装飾が華やかだ。複雑な模様が型押しされたものや、シンプルに何も無い物まで色々だった。
ポースの体は鱗と皮、それに血結晶にアンティークゴールドの模様が刻まれた豪華な感じだ。使い古されてぼろぼろだけど……それでもここにあるどの本よりも存在感がある気がする。
そう、存在感だ。そうか、そういえばそうだ、きっとポースを作った人はすごい人だったんだ。今の体は確か三回目だって言ってたし、最初は龍族のグッズじゃなかったとか言ってた。でもそれだけポースが成長出来たのは、その作った人の世界がすごかったからかもしれない。ポースが努力したのもあると思うけど、最初の世界が良くないと難しそうだ。
「呪術と同じと言えば同じだって言うけど、どうも苦手なんだよね……」
影を操り、精神に干渉すると言えば同じだ。どちらにしろレポート作成にも使うから、色々物色してみる。五角形やら、八角形やらを見ながらどう違うんだ? と思いつつ本を物色していたら、お約束の加島さんがいた。
「やあ。結構熱心だな、割と会ってるね」
加島さんも同じ事を思っていそうだ。
「そうですね、加島さんは第一には余り行かないんですか?」
「あー、たまに使ってるよ。でも、こっちを制覇しないと向こうは難しいんだ。まだ僕も白に成りたてだから」
「そうだったんですか、すごいですね。僕はまだ基礎なんです」
「あー、そうだったっけ? でも、その感じなら心配なさそうだな」
「そうですか?」
「割と良い本を選んでるよ……」
僕の持っている本を見て言ってくれた。
「本当ですか? 良かった、意外にこの方法は効いてたんだ」
「君の本選びのこつ?」
僕はポースの方法を加島さんに伝えた。
「中々参考になったけど、かなり受け取りがうまくないと難しそうだ、じゃあな。……無機物の波動の受け取りか」
と、何やら考え込みながら去って行った。どっちかっていうと本の中の精神を感じるって感じだからちょっと違う気がする。出来上がった本の中の伝えたい言葉、想い。いや、やっぱり同じかな? 分からないや。
ポースの中には闇が納められている、闇の中で繋がる生物と契約する為の本。ポースはその契約の場、そして召喚の出入り口となる。大抵の闇の生物と契約出来るのはポースの闇を繋ぐその力のおかげだ。
「さてと、学食に行こうかな」
借りた本をまとめてカバンに入れて学食に行った。ついでにサークルの張り紙を見に行ったら、僕のが無くなっていた。誰だろう剥がしたのは……。
もう一度張り紙を貼るべく学食で食べながら内容を書いていたら、後ろから声をかけられた。最初に勉強会に誘いに来た二人だ。
「おい、鮎川だったな?」
「……何か用でしょうか」
「こいつ、むかつく。自分だけ被害が無かったからって、こんな所でのうのうと……」
「言ってる意味が分かりません」
無理に頼んで来たのはそっちだったと記憶してるし、僕も被害はあったよ。君達に強引に勧誘されたという被害が……でも酷い事されてたと聞いてたから、僕の中では仕方なかった事だとは思っていたんだけど、な。
「とぼけやがってっ!」
「噂を知らねえのか? 銀枠生が被害にあったって聞いてるだろ? 俺達だ。お前が会に入らないからどれだけ酷い目にあったと思ってるんだ?」
「入ったんですけど……早川さんに誘われて。でも、僕は倒れちゃって……夢縁警察にお世話になったんです」
「は? まさかお前が例の噂の倒れたって言う……」
……成田さん達の噂はしっかりと伝わっているみたいだ。こんなところで確認が取れてしまった。
「被害にはあったというか……のうのうとしている訳ではないので、誤解はしないで欲しいんです」
「……ちっ、話にならないぜ、行こう」
あの二人は何しに来たんだろう? まさか文句を言いに来ただけだったんだろうか?
募集の紙が書き上がったので張り紙を貼付けた。今度は連絡が来るだろうか、とりあえずは待つしかない。




