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45 区画

 ◯ 45 区画


 今日は、ホングが律儀にもお昼ご飯を奢ってくれている。……ここって組合の星深零の間のある区画だよね。ヘッドゥガーン世界にある管理組合の本部は、いくつかの星に別れてそれぞれ区画分けされているので、ここもそんな区画の一つだ。

 ここは一つの建物が大きくて、次の建物までが酷く遠い。でも、道を歩いてると直ぐに目的地の近くまで進んでいて、距離と時間の感覚が合わなくて、いつもおかしく感じる。ここは組合の図書館があったり講堂があったりして、色々と学ぶ為の場所のようだ。


「ここのランチは量の割に安くて美味しいんだ。お勧めだよ」


 向かいに座ったホングがメニューを渡してくれた。


「うん、ありがとう。別に良かったのに……」


 あれだけの事があったから、ヴァリーも気が付くとか以前の問題だったし。それを言うとホングは、


「まあ、一応賭けは賭けだからね。怪我の治療のお礼もあるから、遠慮しなくていいよ」


 と、言ってくれた。まあ、それくらいしか取り柄は無いからね……遠慮無く頂こう。


「あの後のマーロトーンはどうなったの?」


「ああ、なんか組合との取引は増えたみたいだ。救援で奪われた物が返ってきて恩義も出来たし、神界もかなり酷く破壊されて、その復興も助けて貰ってるみたいだから……。一極集中させるのを止める、とかなんとか聞いたけど、良くは分からない」


 注文してすぐに来た魚介の入ったライスっぽい食べ物を頬張っているホングは、満足そうな顔をしている。見た目はパエリアに似た感じだけど味は違う。隣にあるスープを掛けて食べても良いらしいとホングには説明された。一口食べるとぴりっとした刺激の後にじんわりと魚介の旨味が来る感じだった。


「そっか分散型にするのかな? 多分、一つの所が栄える形にはならないんじゃないかな? 組合みたいに区画ごとにあちこち置くんだと思う」


「なるほどな。だとすると他の町もチャンスが回ってくるってことだな?」


「そうだね。長く掛かりそうだけど、きっとそうなるよ」


 スープを飲んでみたら、爽やかな香りにほんの少し甘みが混じっている。最初の刺激が強いから掛けた方が美味しいかな……。


「意外に詳しかったんだな」


「え? そうかな……普通と思うけど」


「ところで、今日連れてるその小さいのはスフォラーとか言うか?」


 今日は制限が無いから連れて来ている。肩の上に子猫姿のスフォラの分体が乗っかっていて、食事の様子を見ている。


「そうだよ。何で知ってるの?」


 聞いてから聞いている意味が違う事に気が付いた。名前を知ってるんじゃなくて、『スフォラー』の商品名として聞いてたんだ。僕のはスフォラで語尾を伸ばさないし。


「くそっ、やっぱり待遇が違うっ! それを買う為に今、ポイントを貯めているんだ……全く届かないけど、新人が終る頃にはローンが組めると思ったんだが、何でアキが持ってるんだ? 借り物か?」


 悔しげなホングが唇を歪めながら聞いてきた。


「モニターだよ」


「モニター……まただ、なんでそんな確率の低いものに当たってるんだ。で、使い心地はどうなんだ?」


 手を頭に当てて驚き、機嫌を整えてから使い心地を聞かれた。随分興味あるみたいだ。


「いいよ。持ち主に合わせて色々サポートしてくれるから、設定も楽だし」


「ペット型ってことは、ノーマル型よりかなり良いはずだ…」


 分体無しの、僕が最初に使ってた形の物がノーマルタイプになる。

 調べているのかペット型の存在まで知っていた。ペット型は意志のあるインテリジェンスアイテムだから相性テストがあるとか聞いたけど、その辺りは僕は詳しくない。


「うん、僕だと子猫サイズのペットしか無理だけど、もっと大きい……あのマーロトーンの移動用の鳥さんみたいな、大きいペットとかにして移動しても良いみたいだよ」


「なるほどな……それは良い事聞いた」


 僕の答えに嬉しそうにしている。


「あ、でもマーロトーンでは、分体は通信用に使ってたから、移動には当分使えないと思うよ」


「……そっか、僕がそれを手に入れれるか、マーロトーンが発達するかどちらが早いかってことか」


 急に真面目な顔をして考え込んでいる。前回の事件で故郷の世界に付いての想いが変わったのかもしれない。まあ、あれだけの事件があったし、自分の力が少し届くのが実感出来たせいだと思うけど、これについてはまだ微妙な感じだ。


「そうだね、ヴァリーも『スフォラー』を欲しがってるの?」


「いや、あいつはそれよりも、お前が持ってたあの持ち運びの収納スペースを欲しがってたな」


「……そうだね、ヴァリーにはあれは必須だと思うよ。結局荷物の中身を検査出来なかったね」


「そうだな、今度アストリューに行きたいって言ってたが、この前の襲撃のせいで審査が厳しくて中々許可が降りないらしい」


 聞くと、どうやらかなり厳しい審査が儲けられてて、ヴァリーには面倒すぎて後回しにしているらしかった。仕事で入るのなら良いけれど、プライベートとなると手続きが面倒なようだ。


「じゃあ、マーロトーンも審査が厳しくなってるんだ?」


「いや、全体の審査が厳しくなってるんだ。内部の手引きが無いと、悪神を正式に異世界間を渡らせるなんて出来ないから、かなり上がぴりぴりしてて、内部の調査に乗り出してるって噂だ」


「うわ、旅行の方は大変そうだね」


「それもだし、噂では荷物の方もかなり検査が厳しくなったみたいだ。それで落ち着くまではヴァリーは仕事以外は自分の世界にいるつもりみたいだ」


 何か自分の世界の方も観光地としての魅力を上げるとか言っているらしい。


「そっか。じゃあその内に僕達が押し掛けても良いかもしれないね」


 僕達の感想も役に立つだろうし。


「そうだな、後で連絡してみるか……」


 ホングは、御使いとしてマーロトーンの復興の手助けをまだやってるみたいで、ヴァリーも時々手伝いに来ているそうだ。あの時の、追っ手達が手足となって、よく働いてくれているのだとか……。でももう後は、現地の人達で出来る事ばかりだから、彼らに任せる事になるみたいだった。

 大都会の住民は人数は減ったけど、デザージの暴れている時には半数以上は避難出来ていたので、街として復興して行くのは大丈夫だろうとの事だった。


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