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44 情報源

 ◯ 44 情報源


「意外と歌は上手なのね、驚いたわ〜」


 軽く汗を拭き、マリーさんの入れてくれたお茶を飲みながら話し始めた。


「本当だよ、ビックリしたよ。悪神も踊ってたの?」


 あれだけ楽しい曲なら、みんな踊ってそうだ。


「デザージも俺様の歌は褒めてたぜ? 充分だから、練習は要らないってな」


「そ、そう、充分(・・)ね……確かに悪神には刺激的な歌かもしれないわね〜、ちゃんと音楽だもの」


 マリーさんの声には何故か、呆れの様なものが含まれてた気がする。


「そうさ、ヘラザリーンの奴も、俺様の歌には敬意を示してたからな」


 とても自慢げな声だ。何時も自信に満ちあふれているポースにも、嬉しい事だったみたいだ。


「子守唄の人? すごいんだね、ポース。悪神の歌のプロにも認められてたんだね」


「魔女ヘラザリーン? 会った事があるの〜?」


 マリーさんが興味を引かれたのか聞いている。


「ああ、デザージがなんか取引する、とか言ってた気がするな……破滅の卵を育ててるからどうとかよくわからねえが、俺様の歌はその卵に悪い影響を与えるから、歌うのを丁寧に断られたんだ」


「そう、デザージがあの種属の卵を持ち出したのは、そんな理由もあったのね〜?」


 マリーさんが真剣に聞いている。どうやらマーロトーンで盗まれた重要なアイテムって、話に出てる卵の事みたいだ。結局、奪還した物の内、いくつかは割れていたと聞いている。悪神が無理に触ったせいだ、とか言ってたけど……。


「さー、どうだったかな? 俺様にはよく分からねぇな、何か新たな種として生まれさせるには、なんとかのエネルギーがいるんだって話だったぜ?」


「そう、新しい種属を誕生させる為のエネルギーを集めてるのが、種属の卵よ。珠玉の中に蓄えられて、いずれは世界に新しい命を芽生えさせる為の大事な物よ? マーロトーンではそういう形を取ってるって話だったわ」


「おう、それだよ。その卵を欲しがってたぜ、ヘラザリーンは」


「そう〜、ありがとう。他には何か言ってなかった? デザージが報酬に何を求めたのかとか……」


 マリーさんは目を細めてポースの情報を更に聞いている。


「出来上がった物だろ? 破滅の卵の成長した奴だ。まだ、疑似生物でしかねぇが、新しい悪神の形として存在出来る、とか言ってたぜ? 人間の体に寄生するのでは世界は変わらねぇ、とか言いながら奴隷の血を飲んでたぜ?」


「あら、吸血鬼なの〜? ヘラザリーンは」


「今はそうだな、人種の体は大体試したが、どうも気に入らなかったみてぇな事を言ってたぜ。奴隷も音波の力を持ってて、地球で拾ったとか言ってたな……面白い物を持ってたから、奴隷にしてやったとか言ってたぜ」


「その奴隷、タキとか言ってなかった?」


「そこまで覚えてねぇぜ、そいつも歌い手だって聞いたぐらいだ」


 そこまで来てやっと話の重大さに気が付いた。……ものすごく今、正に必要な情報かもしれない。僕はポースにタキの写真を見せてみた。


「ああ、こいつだ。間違いねぇ、こんな化粧してた」


「そう〜、この前こいつにアキちゃん、殴られたのよ〜。落とし前を付けなくっちゃね。今、ヘラザリーンはどこかしらぁ?」


 少々怒りの籠ったマリーさんの言葉に、ポースはうーんと唸ってしばし考えていた。思い出そうとしているみたいだ。


「さあ、俺が会った時はトキオ? トウキーヲ?」


「東京?」


「それに近い、そんな名前だったぞ?」


「そう、そんな所に潜んでいるのね?」


 真剣な表情のマリーさんは親指の爪を噛みかけて止めた。神界警察は全く気が付いてなかったのを気に病んでいるらしい。そんな情報は入ってなかったと小さく呟いている。


「ピソルの奴もいて、何か争ってたな」


 その言葉にぴくりとマリーさんは反応した。


「邪神ピソル……もしかして、作ったのはこいつかしら、それをヘラザリーンが横から奪ってるのね?」


「そんな細かい事は分からねぇが、そんなところだろ。あの女の奴隷のくせにアッキを殴るなんて、お仕置きだな」


「気が合うわね、協力してね〜」


「当然だぜ、えーと、何て名だったけ?」


「マリーよぉ」


「おお、そうだったな、マリー。ガツンとやってやろうぜっ!」



 暫くしてからレイとマリーさんと一緒に、董佳様の所にポースの話を伝えに行った。マリーさんはポースの話を撮ってあった。それを見てから、董佳様はピクピクと唇の端を痙攣させながら、話し始めた。


「少なくともこの時には日本にいたって事ね? それも邪神と悪神両方。それも水面下で争ってたのね?」


 ピソルとヘラザリーン、デザージの三神が一時的に揃ってた事になる。董佳様の表情から全く知らなかったのが分かる。


「全員、有名だから知ってると思うけど。調べたらピソルは自身の本拠地に戻ってる、っていう噂だったよ。確証はないんだけど、実際そんな動きがあったみたいだ」


 レイが説明を始めた。


「そう、で、魔女の方は?」


 董佳様は気を入れ直しているのか、ピクピクしてる自分の頬をつねってからレイに聞いていた。


「分からない。ジェッダルのタキが外に逃げたって事は、地球には用が無いってことかもしれないね。マーロトーンでの失敗を考えたら、他の世界を襲う可能性が出て来たからね。……なんにせよ、三神を一度に相手にしなくて良かったね?」


「そうね、少なくとも一人は捕まってる事だし……」


 口元の痙攣は収まったけれど、眉間の皺が濃くなり、難しそうな表情を見せている。今度は眉が上がったっきりピクピクと動いていた。


「死神達も情報を聞き出してるよ。デザージはヘラザリーンの事は喋らないけど、ピソルの事は少し漏らしてるね」


 レイは何か資料を見ながら話しを続けている。


「それは良かったわ。ここで何をしてたのかしら?」


 眉間をさすりながら、董佳様は少し笑顔を見せて聞いた。


「邪神の卵、邪神、悪神の体が変わるごとに、使ってた体に残ってる瘴気ごと疑似生物に与えて育ててたみたいだね……逆に考えれば地球での存在が難しいから、そんな物が生まれたのかもしれないね」


「そ、う、気持ち悪い事してたのね。それならあの恐ろしいまでの瘴気の固まりも納得よ」


 う、董佳様だけでなく僕も気持ち悪くて、喉奥から何かがせり上がってきそうだった。


「あの、容器はその体の骨から作られてたみたいだね……あの瘴気を受け止めて隠していた人体の一部だから、耐性があるのは分かるよ。それを加工して容器に仕立て上げたのは、ヘラザリーンみたいだね」


「兎に角、今残ってる奴らの残党狩りはした方が良いわね」


 顔色は悪かったけれど、何やら決意した董佳様は顔を上げてキッと僕を睨んだ。何で僕を睨むんですか? 僕は悪神じゃないですからね?


「そうだね、ピソルの方はヘラザリーンの組織に吸収されてそうだからね。タキと一香との接触も見られるし……これ以上掻き回されるのはごめんだからね」


「それに、支配されているのなら、神界でも気をつけないとダメね」


 深刻そうな表情の董佳様はレイを見て表情を確かめていた。


「そうね〜、実際アストリューを襲った三人組もそんな感じだったし、ヘラザリーンの配下ならお手のものでしょ〜?」


「確かに。鍵村とあの栗色の髪の女が繋がってたのは掴んでたから……ヘラザリーンの組織に吸収された時に彼女達は汚れ役をさせられたと見るべきね……」


 う、なんだか知ってる人物が次々出て来た? 睨まれたのはそのせい? 鍵村のいた勢力はピソルの勢力だったが、ヘラザリーンの方に付いたのかも知れない。そんな話し合いを聞きながら、僕は警察の仕事も大変だとこっそり溜息を付いた。


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