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39 親切

 ◯ 39 親切


 とうとうポースの調査員達が、一旦切り上げると言ったみたいだった。自伝を作る為に執筆をする人が匙を投げたので、他を探さないといけなかったからだ。それでないと喋らないとポースはごねたみたいだ。

 神殿に迎えに行くと、調査員達に目線を逸らされてしまった。


「ポース? あんまり沢山要求してもダメだよ?」


 調査員達が一斉に頷いているのが見えた。また何か要求している目が見えた。なんだろう?


「アッキ、分かっちゃいないな。俺様の歴史はそれだけ価値があるんだぜ? 聴衆の皆も俺様の要望の為に良い筆者を探す程だ」


「そうなの? 誤解だったね、ごめんね?」


 がくっと崩れる調査員達が見えた。どうしたんだろう?


「そうだぞ、アッキ。そんな俺様の為に魔法をもっと鍛えてくれよ? 大体、アッキはあのデザージの野郎を泣かせたんだ、あれは痛快だったぞっ! 俺様を粗末に扱うのを罰してくれたんだな、感謝してるぜ、アッキ」


「え? そうなの?」


 出て行き始めた調査員達が、一斉に振り返った。それにデザージって?


「そうさ、悪神の水筒に毒を入れるなんて真似、中々出来ねぇぜ?」


 部屋中の視線を浴びてしまった。悪神、ポース、水筒……あーっ?!


「どっ、毒じゃないよっ? みっ、水だから!! 霊泉水だからっ!!」


 注目の中、焦って説明した。


「やっぱり毒じゃねぇか、デザージの奴、腹を壊してトイレに籠ってたせいで機を逃したんだぜっ! ざまあみろっ!! 本調子じゃねぇから死神に神界を取り戻されちまうわ、首をはねられるわの散々な目に遭ったんだっ! 俺様の体を破りやがって、永久に死神に飼われてろってんだっ!! さすが俺様の親友だぜ、アッキ。この調子で一緒に偉業を成し遂げようぜ!」


 そんなっ、そんな事になってるなんて思ってなかったよ!? ポースのご機嫌な笑い声が響いた。僕は周りからの突き刺さる視線に、顔から火が出るくらいに恥ずかしかった。


 その後、その時の映像が回収された。管理組合の荷物審査課がトラブルがないように保存してあった物だ。その映像を見ながら、


「はははは、は、あーはははっ、ははははっ。こんな事でっ!」


 レイは転げ回って笑っていた。


「本調子じゃなかったなんて複雑〜、本当はもっと強かったのね?」


 隣でマリーさんは苦笑いだ。マシュさんには呆れられながらも最終的には、


「よくやった」


 と言われ、笑いながら背中を叩かれた。


「ご活躍でしたね、アキさん」


 と、メレディーナさんには褒められたが、直ぐに横を向いてこっそり笑われた。肩が震えていたからそうだと思う。


「これは完全保存だ! 俺様とアッキの貴重な出会いだからな」


 と、ポースには興奮した感じで熱心に言われた。こぼれて空になった水筒に、水を入れてあげただけなのに……。スフォラまで楽しそうな感情を送ってきた。

 管理組合からは、組合長がノリノリで悪神デザージの捕獲の報酬を追加でくれた。死神の組合からも感謝の報酬が出た。いや、皆、誤解だから! 借金は無くなったけど何か嬉しくない。

 首をはねられたのに捕獲って何故か聞いたら、アキが幽霊なのと同じで体が無くても神魂が残ってるからね、と言われた。

 どうやら、冥界ではこの黒歴史で悪神を突ついて、記憶の抹消と魂の解体をして神格を無くすのを認めさせてるみたいだ。確かにこんな事を広められたら恥ずかしい。デザージの悪事を聞いてなかったらちょっと同情してしまいそうな複雑な気分だ。


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