3 追求
◯ 3 追求
家族会議が始まった。というか質問攻めだ。トシも参加している。
「それで、何時からなの?」
母さんの目は嘘は許さないと書いてあった。
[10月くらいから……かな]
「そう、そんな前からなの。千皓にしては良く隠してたわね」
ちょっと感心してこっちを見つめてくる。見えてないはずなのに……。
「酷いよ、お兄ちゃん」
「そうだぞ、父さんにも相談せず……水臭いぞ」
[相談したらダメじゃないか]
「あ、そうか。そうだな、全然分からなかったぞ」
父さんは今一、守秘義務が分かってない気がする。
「親友だと思ってたのに……」
トシが不機嫌な顔でこっちを見ている。
[トシ、親友だよ。だって言えないだろ? 危ないかもしれないのに]
「そう、千皓のは危ない仕事なのね?」
母さんに心配そうに聞かれた。
[いや、そうじゃないはずなんだけど、巻き込まれたというか偶然?]
池田先輩のは自分で囮になったけど、他は全部、巻き込まれたはずだ。
「死んだ原因は?」
トシがずばりと聞いて来た。
「そうだよ、お兄ちゃん何で死んだの?」
[それは……言えないよ]
「なんでだよ、仲間じゃないのか?」
いらだった口調でトシに責められた。少しは説明しないとダメみたいだ。
[悪い奴らに捕まったんだ。それで……その]
「殺されたとか言うなよ? 物騒だぞ」
トシが先に牽制して来た。直接、面と向かって殺されたんじゃないけど、瘴気を送り込まれで死んだんだよね……。
[……え、と、近いかな? 知らない間に死んでたから、そんなに苦しいとかは無かったよ]
皆の心配と、真実の追究を混ぜた顔を見ながら、曖昧に答えた。いやまあ、影が分かるまでは少しはきつかったけど、池田先輩に首を絞められた方が苦しかったよ。殺された事は曖昧にしておきたい。僕が口にするのが嫌だ。
「そう、それなら良いのよ。良かったわ。苦しくなかったのね」
母さんは少し安心したみたいだった。その言葉を聞いて父さんと玖美が頷いた。トシも黙った。
僕よりも、真っ黒になっていく僕の体を見ていたレイの方が、ショックを受けてた気がする。あの闇の中で無理かもしれないとは、多少マリーさん達の態度で感じてた。それでも足掻いてはみたんだけど、足りなかったみたいだ。
レイの守りのおかげで霊魂にまで刻印をされなかったから、直接そこから取り込まれる事は無かったのだし、苦しさはかなり減ってたと思う。あの黒い体が自分だとは、あの時は実感が持てなかったぐらいだから。
「じゃあ、あの頭を打ったのは別人か?」
父さんが警察に見せられた映像を思い出してか聞いてきた。
[僕だよ、あの後に連れて行かれたんだ。だから、あれは本当だよ]
「そうか。本当だったんだな……。あれが千皓の最後だと……」
涙を浮かべながら、父さんは言葉に詰まったみたいだった。
[父さん、泣かないで。折角会えるんだし]
ティッシュを渡した。この調子じゃ本当の事はやっぱり黙っておくべきだと思った。
「そうだな、そうだよな。うちの家族はラッキーだな」
鼻をかみながら父さんは嬉しそうだった。ティッシュが勝手に動くのを見るだけで、ちゃんといるって分かるんだろう。
[うん、感謝しないとね]
「じゃあ、皆で再会を祝して……」
父さんが母さんと目を合わせて微笑んでいる。
「それと新たな関係を始める景気付けに、ごちそうを作るわ」
母さんがソファから立ち上がった。僕もそれに続いて言った。
[手伝うよ]
「千皓は食べれるの?」
[どうだろう……]
アストリューはそういうところは便利に作られてるんだよな……幽霊にも優しいというか死んだら、好きなときに神殿に行くのが普通なんだよね、あそこって。不思議だけど、神様が一緒にいる世界ってあんな感じなんだろうか。
結局は一口しか食べれなかったが、アストリューから自分の分を持ってきて食べた。一緒に食べたというだけで良いんだきっと。