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36 巡回

 ◯ 36 巡回


 そうこうしている間に地球では二月に入って、妹の受験が来週に控えていた。マリーさんの作ってくれた服も着ている暇もないままだった。

 父さんの会社の近所ではボヤ騒ぎが起きていたが、犯人は捕まらず、映像でも誰も映ってないのに火が出て警察も犯人を特定出来てなかった。

 そんな訳で、幽霊の僕が調査にいく事になった。警察の記録なら、董佳様のところの神界警察も見てそうだけど……気が付いてないのかな?

 のんびりと父さんの会社の近くを三日程、時間を変えながら巡回していた。昼間に突然に後ろから火の玉が襲って来た。何となく振り返ったら間近にいたのでビックリしたが、スフォラが誘導してくれたので横に飛んで避けた。

 通り過ぎた火の玉は方向転換して、こっちに迫って来たので、走って逃げた。

 スフォラに誘導されながら逃げつつ、スフォラに映像を神界警察の伊東さんに送って援助を求めたら、董佳様から連絡がきた。

 死神のマントを被って良い許可する、と言われてそれを忘れていた僕は走りながらベールを被って影に隠れた。火の玉はしばらくうろうろと僕を捜していたが、諦めたのかどこかへと去った。普通の人には見えてないみたいで、僕達の追いかけっこは誰にも気が付かれなかった。

 どうやら妖怪の類だろうとの話だった。直ぐに神界警察が現れて火の玉を探し始めた。


「加藤さん、お久しぶりです」


「ああ、鮎川か。死んだとき以来だな」


 僕の偽の遺体を運んで色々偽装してくれた人だった。細身のビジネススーツがオフィス街に馴染んでいる。


「はい。手伝った方が良いですか?」


「大丈夫だと言いたいが、探すのは手伝って貰っていいか?」


 どうやら警察も人が足りてなかったみたいだ。


「分かりました」


 僕は火の玉と接触するちょっと前の場所から加藤さんと一緒に探し始めた。また、何となく後ろが気になったので振り返ったらいた。


「加藤さん、後ろです」


「くそっ、結構早いな」


 振り返った途端に走り出して、他の捕獲に来た捜査員を集めた。15分後にはなんとか捕まえたみたいで見てみたら、小さなイタチの様な動物が檻の中にいて威嚇していた。この動物が炎を纏って宙を蹴って追いかけて来ていたみたいだ。

 何だろう、瘴気を出しては無いしそれほど禍々しい感じは無いけれど、それでもどっちかというとそっちよりな感じだ。

 どうも妖精の一種で環境によって変わるみたいだった。妖怪と呼ばれるにはそれなりに違いがあるみたいだ。人の悪い念を受けてもっと育ったものとかだと、かなり凶暴らしい。これはほんの小物だから可愛い内だと加藤さんが言った。それでも人に乗り移ったりしたら厄介で、追いかけられたのは僕に取り憑くつもりだったのかもしれないと言われた。もしかして危なかった?

 食する物で分類したら、魔力を食べる紫月とはやっぱり全くの別物みたいだ。それとも僕の念も食べてるんだろうか? 妖精の一種と言っても妖鬼、妖霊、妖魔、妖怪、色々みたいだ。そういえば環境で変わると最初に説明された事を思い出し、紫月には素直に育って欲しいと願った。

 帰って父さんに解決した事を報告したら、喜んでいた。夜中に火の玉が飛んでるとかいう噂も出てたから、眉唾だったけど本当に出てたんだな、と何やら複雑そうだった。先にその情報を言って欲しかったよ…。


 久々に、怜佳さんのお茶会に呼ばれた。勿論、宙翔も一緒だ。お福さんも一緒に来ていて、大人しく怜佳さんの膝の上でモフられていた。宙翔のお父さんとは野菜やハーブの交換、女将さんとは料理の交換をマリーさんを交えてやっている事を話していた。


「家族ぐるみなのね。……福子さんもそっちにお邪魔しているの?」


「たまに家にくるぞ。転移を覚えてからは、庭で弟達の面倒を見てくれてるしな」


「教えたら、使いこなしてたからビックリしたよ」


 お福さんに転移システムの登録をして、地球の家とアストリューの家、宙翔の家を行き来出来るようにしたらしっかりと覚えて、あちこち自分で動いているみたいだった。異界を渡る猫になった。


「そうだったの。猫は賢いものね」


「母ちゃんもお礼に魚をあげてるしな」


「そうだったんだ。ありがとう」


「いや、お礼だから気にするな、アキ」


「うん。そういえば、夢縁のクラブやサークルってすごく多いですね」


「ええ、交流の場という事で推奨しているのよ」


 怜佳さんは紅茶を一口飲んでから答えてくれた。新しいクッキーはどうやら気に入ってもらえたみたいだ。いつもと違うハーブ入りのクッキーだ。これも家の庭ですくすくと育っている。寒さに強くて暖まる作用があるのでジンジャーと混ぜて焼いてある。


「そっか、それでなんだ」


「ここの卒業生や一般になった人達も、クラブは続けていてここに入ってくるから、街の中は人が多いでしょう?」


「そういえばそうですね」


「へえ、そんなのがあったのか。アキは何か入ってるのか?」


「えーと、一応このお茶会くらい?」


「そうね、このメンバーと董佳よ。後は神界の妖精達ね」


「俺も入ってるのか?」


「勿論よ。猫ちゃんは自動的に入いるから問題ないわ」


「なるほど」


 何か納得だ。猫はバッジが無くても怜佳さんには、しっかりとメンバー登録されてるみたいだ。大体、バッジに猫が付いてる……。

 実は夢縁スイーツ店巡りのメンバー募集の紙はチェックしてある。メール番号も登録して、メンバーの構成を聞いてみようか迷っている最中だ。


「スイーツ店巡り。そう、そんな会があるの」


 怜佳さんがちょっと興味を示していた。


「はい。メンバー募集の紙があったので連絡してみようかと思ってます」


「美味しかったら、誘ってね?」


「甘い物は俺は苦手だな」


「はい。一年先輩の人に教えて貰ったクレープは美味しかったですよ。色々教えて貰ったので制覇したいですね」


「あら、それなら今度行きましょう? マリーナも来るかしら?」


「呼んだら来てくれると思いますよ? 最近は服作りもちょっと抑えてるみたいだし。新しいデザインが浮かぶのを待ってるって言ってたから……」


「あら、なら気分転換に誘うといいわね」


「宙翔はその顔だと無理そうだね……」


「苦手な物には誘えないわね、肉まんの美味しいお店を今度紹介するわ」


「本当か? それは楽しみだ」


 嬉しそうに笑っている。そういえば、肉まんも好きだったな。

 帰ってから、スイーツ店巡りの会に連絡を入れてみた。女性限定と断られてしまった。その情報は書いていて欲しかったよ。

 仕方ない、誰か探そう。スイーツだけじゃなくて色々巡るか……と思ったので、スイーツ、間食巡りのメンバー募集をしてみる事にした。連絡は全く来なかった。多分、メンバーが一人と正直に書いたのが悪かったのかもしれない。まあ、気長に探そう。

 マリーさんは誘ってくれて嬉しいわ〜、と嬉しそうだった。レイにも聞いたけど忙しいみたいで、次に誘ってと言われた。


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