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34 無垢

 ◯ 34 無垢


「ポカレスがどうやら、ごねてるみたいだね」


 レイが顔のパックを外しながら、ポースの修理の様子を話してくれた。


「ポースが?」


「どういう事〜?」


 マリーさんもパックを外している……。二人して新しい素材の物を試していたみたいだ。


「新しい体が気に入らないみたいなんだ。普通じゃ嫌だとか、安っぽ過ぎるから嫌だとか、紙の質からデザインにもこだわらせてるよ」


「あー、意外とお洒落なんだ?」


 聞いてみたら、レイが今気が付いた、という顔をした。


「そうだね……そういう見方も出来るね」


 なるほどと、レイが納得したみたいだった。


「そうねぇ、確かに衣装にはこだわらなくっちゃね。分かるわ〜」


 マリーさんも頷いている。


「意外と話が合いそうだ。良かったよ」


 この二人は……。まあ、良いか。ポースはその後しばらく修理を拒んだままだった。何かが足りないと、ちっとも合格を出さなかったのだ。修理担当も匙を投げて放置に入った。今は家にいる。


「済まないな、もうちょっとましな物を持ってこないと俺様を受け入れる事は出来ないぜ? あんなちゃちなアイテムじゃ、すぐ壊れちまう。今のままの方がましってもんだ」


 ポースの言分はこうだった。どうやら、黒龍の鱗と皮で出来た今の体が名残惜しいみたいだ。表紙はそのままで良いよと言ったら、このままでもダメならしい。破れてちゃんと機能しないから変えた方が良いみたいだ。

 表紙に埋め込まれていた龍の血結晶も一部が欠けて余り良くないみたいだった。何か良い物を見つけるしかない。

 中の紙は決まっていて、それはポースも合格を出していた。でも僕が気に入らない。……手触りが今一だ。そこもこだわろうよ。ついでにアストリューで困らないように防水仕様にしたい。

 マシュさんに相談したら、カシガナの実が出来たら、良い物が出来そうだからしばらく保留にしといたら良いといわれた。なるほど……確かに魔法アイテムを色々と作れるとは聞いているので、そうする事にした。

 後は血結晶の代わりと表紙の素材だ。魔導書の素材って何があるんだろう? マシュさんに聞いてみたら、さあ? と返ってきた。


 ポースに聞いてみたら、


「これだっ! てのが分かるんだ」


 と返ってきた。


「具体的には?」


「龍族のグッズは良いぞ〜、この今の表紙は千年以上生きてた黒龍の物だ。まあ、魔法生物の物が基本だな」


「そうなんだ」


「基礎知識だぞ? 不安だな〜、大丈夫かアッキ?」


「頑張るよ」


「期待してるぞ」


「うん」


 僕は組合の通信販売を覗いてみた。……非売品とは此れは如何に? 龍族の千年物は売ってませんでした。値段が付かない程の高価な物と言う事みたいだ。同価値の物との交換とか? まあ、無駄に殺しに行くとかは無いので他の物を探すしか無い。

 ところで龍の血結晶って事は作るんだろうか? 普通は血は液体だから作るんだよね? という訳で調べてみると、作っているみたいだ……。血に残っている魔力を使っての結晶化だった。

 そんな事を調べていたら、自分の魔力を込めて結晶化させるというグッズを発見した。貴方の魔力はどんな結晶を作るのか、試してみませんか? と書かれている。怪しいかもしれないけど、やってみますか。

 その怪しげな一式を買って、届いた物を眺めてみる。


「うーん」


 と、唸りつつ説明書を読んでいたら、マシュさんが興味を示して来た。


「また何か怪しい物を買ってないか?」


「うん、魔結晶を作ってみようだって」


 見上げるとマシュさんが説明書を後ろから斜め読みしていた。


「あ? やっぱり変な物を買ってるな……」


「出来ないの?」


「出来るが、売り物よりも酷い物が出来るぞ」


「そうなの?」


「まあな、魔結晶を作れるってことは、それだけ魔力が安定してないとダメだからな。アキの一番苦手なところだ。補助が付いててもちゃんと出来るか怪しそうだな」


「そっか、難しいのか……」


「まあ、一回やってみろ」


「うん、やってみるよ」


 そんな訳で、チャレンジした。何か丸い物を6日間、暇な時はずっと握って魔力を込めてたら、米粒ぐらいの大きさの何かがやっと出来た。その夜にマシュさんに見せた。


「透明だな。なんか柔らかい?」


「……そうだね」


 そんな物じゃないのかな? 小さいので分かりにくいが、ちょっと力を入れると形が変わるくらいだ。


「説明書には四日で出来ると書いてたと思ったが……」


「いや、魔法の練習もあるから」


 疑惑の目で見ていたマシュさんが、なるほどという顔で納得したので機械で調べてくれた。


「……不気味なものを作ってるな。出鱈目な配置だ、魔結晶なのか?」


「さあ……」


 それは僕に聞いても分からないよ? もう一度マシュさんは僕の買った怪しい一式を手に持って調べていた。


「別にこっちは普通だな……」


 普通ってことは、なんだ怪しい物じゃなかったんだ。


「でも、これが僕の魔力なんだ?」


「そうだな。その怪しい物がアキの魔力だ。試しに光らせてみろ、実験だ」


「え、と?」


「アキの魔力だからそれに念を込めてライトだ」


 何か分かった。これに念を込めて魔法に変換だ。小さい結晶からほわんとした光が出た。


「おおー、光ってる」


「ちゃんと反応してるな」


 しばらく経っても消えないので、消すのはどうしたら良いんだろう……。


「これ、どうやって消すの?」


「考えろ」


「え、ああそうか」


 もう一度、光を消す為に魔力を止めた。


「自在だな。私も作るか」


「面白い……」


 僕は魔結晶を見ながら呟いた。


「良い玩具になりそうだな」


 マシュさんもにやりと笑っている。何か思いついたんだろうか? そこにコウモリ紫月が飛んで来て、それを口に入れてしまった。


「ちょっ、紫月?」


 何か訴えてくる……え? 食べるの?


「良いけど、食べれるの?」


「なんて言ってる?」


「許可を求めてるから、どうしたら良いんだろ?」


 紫月からは食べたいという欲求が送られてくる。えーと、困った……紫月の期待の目が痛い。け、結晶になってるから解けろとか? 舌の上の結晶を触りながら、飴玉のように溶けるイメージで念じる。どうだろう……じっと見てたら笑顔が返ってきた。よかった食べれてるみたいだ。


「うまくいったのか。どうした?」


「飴のように溶ける感じに」


「なるほどな。まあ、アキの魔力を元々吸ってたしな。欲しがるのは分かる」


 どうやら、マシュさんも紫月が可愛いみたいだ、目が優しい気がする。紫月はしばらく美味しそうに舐めていたが、もう良くなったみたいで返して来た。えーと、僕も食べてみるかな。……恐る恐る口に入れてみた。


「……分からない」


 味も別に感じない。魔力は……集中したら何となく感じる。しばらく練習で手の中で魔力を感じていた。この状態なら、魔力を魔結晶に込めるのが楽そうだ。試してみる事にした。溶けてる魔力を魔結晶に入れて行く為に一緒に重ねて持った。

 く……時間が掛かりすぎる、どうせならもっと水みたいに染み込めば良いのに。ダメ元で全部中にしみ込むイメージでやってみた。意外にも成功し、そのまま魔結晶の中に全部入った。

 あ、紫月の分が無くなった。もう一回自分の魔結晶を作る事にした。紫月のおやつに必要だ。6日間、待ち続ける紫月の期待の目が痛かった。ごめん、次からはおやつには手を出さないから、許して……。


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