31 青筋
◯ 31 青筋
たっぷり一時間の休憩を取ってから進み出した。鳥さん達も大分体力が戻ったので、丘の所までは乗って行く事にした。そこからは町が見えるし、道も良くなるので歩いて行く事になった。鳥さん達と仲良くなったのにお別れか……。
マリーさん達から連絡がない。何かあったんだろうか? こっそりとこっちは解決した事を連絡した。すぐに返事があった。どうやら今、こっちの神界はポースの持ち主率いる軍団に襲われていて、全く対応出来てない状態だったみたいだ。そして今は交戦状態に入ったらしい。
こっちの神界にハッキングしたマシュさんからやっと連絡が取れて、応援の要請が正式にあったみたいだ。取り敢えず乗っ取られたシステムは元に戻すのに後三時間は掛かるから、との事だった。なら、大丈夫かな? こっちのこのペースだと町に着くだけで三時間はかかりそうだし……。
「あの町の神官は、昔にこっちの教会への良くない僕の発言を聞いてたのかもしれないな……自身の周りの環境を恨んだよ。自分達の私腹ばかり肥やしてちっとも返さないあり方に、何も出来ない自分が情けなくて……自暴自棄になってたんだ」
「気にするな、立ち直ってるんだから問題ないさ」
「そうだよ、これからだと思うよ。まだ先が長いんだし、何かおじさんみたいな発言だよ?」
「アキ、覚えてろよ?」
何故か額に青筋が立ってる気がするホングの顔を見ながら、
「え? 何で?」
と、焦って聞き返したが、どうやら怒らせたらしい。おじさん呼ばわりは良くなかったらしい。
鳥さん達から降りた後にホングに捕まり、米神の辺りに拳をぐりぐりと両方から押さえられる業を掛けられて苦しんだ。ヴァリーは笑ってばかりで助けてはくれなかった。ホングに言ってはいけない台詞を身を以て知ったような気がした。う、口は災いの元だ。
日が暮れた頃にやっと港町に着いた。潮風が気持ちいい。町の入口で直ぐに鳥さん達と別れて教会に向かった。どうやらマシュさん達が神界のシステムを奪い返したみたいで、そのまま登録してホングの町に逆戻りした。家族の無事を確認してホングはホッとしていた。神父を捜して三人で問いつめたら、白状した。教会の本部も承認したと言うのだ。
「どういう事だ?」
「本部の誰?」
「神官長です」
ホングに殴られて鼻血を流しながら、ネメル神官長が許可を出したと言った。御使いの一人だとホングが嫌そうな顔をして説明した。ホングが外部の組織の庇護なのを嫌味に言ってたから、本当に悪神の徒だと思ってそうだと複雑そうだ。こっちの神の許可は得ているのに伝わってなかったんだろうか?
「明日の朝、直談判だ。乗り込んでやる」
ホングは怒っている。楽しい旅を台無しにされてるんだから当然だと思う。
「取り敢えず眠いよ……」
僕はもう限界だった。
「同感だ」
ヴァリーも疲労の色が隠せてなかった。
「こいつは?」
「あー、このままで良いか……」
縛り付けて芋虫状態の神官を見て、面倒くさそうにホングが言った。そのまま、教会で一泊する事にした。毛布を被って横になったら、後は直ぐに眠ったみたいだった。
次の日、目が覚めると、マリーさんが目の前にいた。いつもと違って、黒い戦闘服っぽいものを着ている。後ろに同じ様な服の人が十人程いて、何やらごつい武器を持って佇んでいた。皆、殺気立った感じで怖い。
「うわ、特殊部隊だ」
ホングがやばいと言った顔で、飛び起きている。
「何が起きてるんだ?」
ヴァリーも起きたみたいで目を丸くしていた。
「これから作戦開始よ〜」
と、マリーさんがウインクをしながら、二人に言った。隊員に目配せをしたら、一人がヴァリーとホングに何やら話を始めた。
「この人達は?」
「あたしの元部下達よ〜。ポカレスはね、闇の生物を操る為の魔導書なのよ。今、死神達が追いかけてるけど、形成は不利よ〜」
「はあ」
陽気なポースからは想像付かないよ。どうやらかなり強敵らしい。
「で、加勢に入るのにアキちゃんのベールを借りに来たの。アキちゃんはあたしと一緒にいてね? スフォラ、体内のエネルギー解放は半分までは許可が下りてるわ、しっかりやるのよ?」
スフォラが頷いた。
「じゃ、アキちゃん、顔をこれで拭いて体も拭いて〜、こっちに着替えて……」
言われるままに着替えを済まして、戦闘に向かう事になった。と言ってもベールの有効範囲内の場所から見るだけだ。あれから、ベールはここにいる人数分が出せる。時間はきっかり一時間、有効範囲は150メートルだ。全員の位置関係の図が視界の隅に現れた。有利なのは、ベールの中でも連絡が取れる事だった。この位置関係をスフォラが表示してるみたいだ。
「じゃ、行くわよ〜?」




