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26 注意

 ◯ 26 注意


 もう、一月もすぐ終りに差し掛かった頃に、早川さんが捕まって事件も表面的には解決したので、夢縁に戻る事にした。銀枠の生徒達の半分近くの人達は休みを取っているみたいだった。

 沖野さんと成田さんがクラスアップ試験に合格したとの連絡を受けた。合格のお祝いメーッセージを早速送った。


「千皓君はまだ基礎クラスだよね、春くらいに基礎卒業試験かな?」


 小さなカフェで待ち合わせして二人と近況報告をし合った。


「えーと、11月に入ったから5月かな?」


 説明では5月の第一週目ぐらいにあったはずだ。僕も三ヶ月の休みは取っても良いみたいだったけど、早く終らせた方が気が楽だったので復帰した。


「そっか、最近入ってくる人が少ないからな……なんか生徒数も少なくないか?」


 成田さんが最近の夢縁の様子のおかしさを語っていた。


「そうだよね〜、なんか閑散としてるっていうか……友達が何人か来なくなったって言ってる人がいたよ」


 沖野さんも気が付いているみたいだった。確かに事件があったから……。コーヒーが運ばれて来た。


「やっぱりか? 俺も聞いたんだが、木尾先輩の話しだと何か取り締まりがあって、それに引っかかったんじゃないかって噂だ」


 沖野さんはのはホイップクリームが乗っている、なんか美味しそうだ。成田さんは意外にも砂糖を三杯も入れてる。


「えー、何それ? なんか犯罪の匂い? なんだろう〜」


 沖野さんはこの情報を聞くのは初めてだったみたいだ。興味津々で関心を示している。


「噂だからな、でもなんかあったのは確かだよな……。白ブレザーに分からない事なんて、俺達には関係ないけど」


 うーん、さすがに上のクラスの人はそこまで分かってるんだ。


「千皓君は何か聞いてない?」


「あー、銀枠の人がなんか被害にあったみたいだけど、解決したから徐々に戻ってくると思うよ」


 僕の知ってる事と言えばこっちだ。灰影の人達の事はよく分かってないし言えないけれど、銀枠の勉強会の事は注意喚起として少し伝えた方が良いって怜佳さんは言ってたしね。


「えー、何? それ何?」


 沖野さんは興味津々で目を輝かせている。


「えと、僕も詳しくは知らないんだけど、銀枠の人の勉強会みたいなので何か不正があったらしくて……犯人は捕まったって聞いたから僕も安心して戻ってるんだ」


「そんな事があったんだ?」


「それは知らなかったな」


 二人に注目されながら説明を続けた。


「しばらく休んでたら、そんなのが出来てたみたいなんだ」


「うわ、良かったね〜、巻き込まれなくて」


「んー、戻って来てから誘われかけてたんだけど、直ぐにその会を作った人が捕まったって聞いて……」


「捕まるなんてよっぽどだよな」


 成田さんが真剣な表情を見せている。


「うん、中に入ってたら酷かったと思うよ。勉強会と言って誘って、変な術を掛けられて何かさせられてたみたいだし」


「いや〜ん、こわ〜い。優基〜」


 成田さんの腕に抱きつこうとして、軽く躱されてた。沖野さんは膨れっ面だ。成田さんはちょっと顔が赤い、何となく公衆の面前というか僕の目線が気になるみたいだ。うん、それはなんとなく分かるかも、照れるよね。見てるこっちもだ。


「ゴホン、で、それは最近ってことか?」


 沖野さんを軽く睨んで牽制してから、成田さんは復活して聞いてきた。


「うん、ついこの間だよ。他にもそんな勉強会が存在してるって聞いたから……強引な手口のものは気をつけて」


「詳しいね、千皓君」


 ピンポイントに突っ込まれた。さすがに女性はそういうのには敏感だな……好奇心と探る様な目線がこっちを見ている。


「う、ん。まあ実は術に掛かって倒れたんだ。すごく強い術でここに入り立てくらいの人だと、おかしくなる人もいるって話だったよ、それで捜査が入ったんだ」


「鮎川……被害者だったのか」


 成田さんが深刻な顔でこっちを見た。沖野さんも真剣に聞いている。


「うん、その、僕が被害者ってのはあんまり知られたくないから、他にはあんまり言わないで欲しいんだ。でも、そういう事があったのは、広めて注意をして欲しいとは捜査の人には言われたんだけど」


「じゃあ、千皓君が倒れたのが切っ掛けで、捜査が始まったってこと?」


「そうなんだ、だから僕は中の事までは知らないんだ」


「そんなやばい術があったんだな。分かったよ、鮎川の名前は出さないけど、友達には話を広げるように協力して貰う。愛美も……」


「分かってる。任せてね、千皓君。でも無事で良かったね」


 二人がしっかりと引き受けてくれたみたいで、良かった。沖野さんが僕の心配をしてくれたみたいだ。


「ありがとう。被害にあっても夢縁警察に連絡したら大丈夫だよ」


 お礼を言って、事件の後のフォローは夢縁警察に連絡をしたらしてくれると話したけど、困惑した感じの表情が少し読み取れた。


「ああ、余り興味なかったが、ちゃんと見てくれるならいい」


「警察も役に立つんだ。下々の面倒は見ないと思ってた〜、ね?」


 成田さんに同意を求めて沖野さんが言い、成田さんも軽く頷いていた。


「え、そうなの?」


「あんまり役に立たないって聞いてたよ。黒や、白のブレザーの人か、その関係でないと動かないって聞いてたもん」


「そんな噂があるんだ?」


「噂じゃなくて、実際そうだって聞いてる。エリートが入るところだから、仲間内しか見ないっていうか……まあ、今回の事を聞いたら、誤解だったってことか」


「でもさすがに倒れたとかだと、見過ごせないんじゃない?」


「それもそうか、実際被害が出てからだしな……」


 二人の話を聞いて、被害を届けない人が多かったのは、そういう理由もあったのかとなんだか納得した。二人の困惑した顔からしても、今まではそう思われてたんだと思う。沖野さん達とはそこで別れて、アストリューに戻った。



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