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24 潜入

 ◯ 24 潜入


 僕達が庭を散策している間に、マリーさんが何やら手料理を作ってくれていた。お昼よ〜、と呼ばれたので戻ると、レイとマシュさんがテーブルに座ってじっと待っていた。

 少し遅い時間の昼食を終えてから、レイが雨森姉妹に何やら渡していた。

 メレディーナさんのメッセージと二人へのプレゼントだった。今回はプライベートだし、直接会うのは次の機会に……気に入って頂けたら又来て下さい、くらいの事が書かれていたみたいだ。

 気を抜きに来ているのに、いきなりここの管理神と会うのは避けた方がいいと判断したんだと思う。色々な種類の美容のセットがプレゼントだったみたいだ。


「んーと、今度スキンケアの類いにもこだわるって言ってたから、それの詰め合わせだよ。今はアストリュー内でしか販売予定は無いんだけど、いずれ管理組合のマーケットにも登場させるつもりだよ」


 レイが嬉しそうに紹介していた。


「ここの水で作ってるのね?」


「そうだよ。100%ここの物を使ってるよ」


「まあ、そうなの? 試してみる価値はあるわ」


 怜佳さんは嬉しそうだった。石鹸や、マッサージ用のジェル、オイル等色々入ってるみたいだ。いつも神殿で使われている物をアレンジしたのだとか。

 その内、カシガナ入りも作られると思うよ、とレイには言われた。魔力の籠った種から育ったカシガナの木は徐々に成長している。

 これは木に間違いないと、マシュさんも動植物研究部との検査の結果を報告してくれていた。春頃には花が咲くだろうと見られていて、カシガナの特徴から一気には咲かずに、少しずつ咲いては実が出来ていく形になると予測している。

 怜佳さんは、使い魔に襲われたお福さんをいたわって何やら話しかけていた。猫ちゃんに手を出すなんて事したから罰が当たったのよ、とか思い切り懲らしめたから安心していいのよ、とか聞こえてきた。……お福さんは理解しているだろうか? 

 見てるとどちらかというとモフってるのがメインで、適当に話してる気もしないでもない。お福さんは餌をあげれば、大抵は機嫌良く触らせてくれるので問題は無いけど。


 最後に怜佳さんは銀枠の勉強会についての潜入調査の結果を教えてくれた。やっぱり早川さんは銀枠の人達を集める際に、独自の呪術で弱みを握るやり方をしていたそうだ。誰も訴えてこなかったのはそれだけ深く人をコントロールしていたせいだという事だった。

 勉強会の情報は至って普通で、それだけなら何の問題も無かったそうだ。ホームページに仕掛けられた術と勧誘の際に掛ける術とを取り上げて、勧告したので当分は大人しくすると思われると言っていた。実際に一年間の夢縁への出入り禁止の罰もある。

 勉強会自体は良いのだけれど、会員達のストレスを思うと解散した方が良いと判断し、そうしたそうだ。会員達には、三ヶ月間は特別に休みを取っても成績に影響を与えない処置を採用したという。勉強会に参加していた人達にも事情を聞いて、脅しの対象になった情報は早川さんの記憶から削除させたみたいだ。

 銀枠は少ないから協力しあうのは良い事だったけど、欲を掻きすぎたか、誰かの入れ知恵かは今まだ分かってないみたいで、その裏の調査も開始しているという。


「そういえば金枠の人達が、こういう会を持っているとか言ってかも……。銀枠は派閥が無いからお勧めだとか言われて誘われたよ」


「さすが間抜けね、今頃そんな情報を思い出すなんて、いつもながら遅いのよ」


 董佳様が呆れていた。


「う、すいません」


 謝ってから、居心地の悪さを食後のお茶と一緒に飲み込んだ。


「では、どこかの派閥の金枠の学生からの指示があったのね。彼にはあの術を作るのは無理だとの報告もあったから、裏を探す必要があったのは確かよ」


 怜佳さんには珍しく少し厳しそうな様子で言い、


「よくわかってもない者に渡すなんて危険過ぎるわ。金枠として他を導く役目なのに」


 と、少し怒りの籠った声で話をした。金枠には、そんな役割があったんだ。


「そうね、夢縁に入りたての弱い者にあれを掛けたら、精神を破壊する可能性もあるのに……早めに見つかってよかったわ」


 そんなものだったんだ? それで潜入調査まであったんだ。


「って、被害者が目の前にいたわね、実際ダメだったんでしょ?」


 董佳様がレイに確かめていた。


「そうだね、守りが無かったらアキの場合は変な症状になるからね……。実際、画面を見ていた記憶が無くなってるし、今回のものは守りがなかったら壊れてたよ。術者の資質もあるけど、かなり強力だったからね」


「やっぱり危険だったのね。……呪いの耐性はある程度はあったはずじゃなかったかしら、少しは撥ね除けられそうだけど?」


「ジェッダルの呪符の置き土産だよ。あの完成度の低さのせいで穴が空きまくってるんだ。大分薄れて来てるけど、まだまだだね。それに合わせた特殊な守りのおかげで、一香の影に捕まりにくかったのは良かったけどね。まあ、他の人と感性がずれてるのも原因だけど」


 レイが溜息を吐いて苦労してるんだよ、といった顔を見せている。確かに聞くだけで複雑そうだ。


「ああ、あれね……何となく分かったわ」


 董佳様はレイのその説明で納得したみたいだった。全く分からないぞ? 何か褒められてないのだけは分かる。


「まあ、そんなところにも被害があったのね」


 怜佳さんも驚いていた。残念そうな皆の目が突き刺さる。なんか痛い……勝手に身が縮まるよ。

 この事でマシュさんには後でなぐさめて貰えた。人と違うからこそ特許が取れたんだと。見本の魔法陣より単純化しようなんて馬鹿は余りいないぞと。まさかマシュさんと似たところがあるんだろうか……不安になって来た。

 その後、雨森姉妹は僕とマリーさんの作ったお土産のお菓子とハーブティーを包んで帰っていった。日本の神界でこのハーブは妖精達に人気があるらしく、嬉しそうにしていた。


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