22 範疇
◯ 22 範疇
「あっ、新人の説明を始めないとね……」
次の日、レイが朝食後のコーヒーを片手に、思い出したように言った。
「新人になるの?」
「そうだよ。正式にうちの組合と契約だよ。春にはちゃんと本契約するからね?」
「うん。まだちょっと先なんだね?」
「まあね。ちょっと死神の組合から待ったが掛かってるけど、そんな圧力には負けないからね」
何故かレイが自慢げに言った。
「そうなんだ?」
「たまに危なくない仕事を手伝う事にはなると思うから、調整はしてるよ」
そっか、やっぱり少しはやるんだ。
「大変なんだ?」
「そうでもないよ。掛け持ちしてる人に聞いてるから、心配ないよ。アキは、足りないときに依頼されて行く感じになると思うよ。まだ死神としては見習いでもないし、それは向こうも分かってるからね」
ヘッジスさんからもあれから連絡は無い。僕はアストリューを拠点に、地球でも雨森姉妹のお情けの依頼を受けつつ、癒しの力を伸ばして組合でもその力で貢献するという内要だ。
そこにちょっぴり死神よりの仕事が混ざるという事だった。アストリューの霊界で癒しの効果を使ってそっちの仕事を手伝うくらいから始めるらしい。間違っても、邪神や闇落ち神との戦闘地域に行くのは無理だから、仕事内容を厳選しているみたいだった。
神殿での癒しを覚えたら、各世界の手伝いの仕事も受ける事が出来るみたいで、時々派遣されたりするようだ。
昨日から、スフォラはマシュさんと神殿で何やら呪術の対策が出来上がったらしく、あのお茶を飲んだ後、そのまま神殿に残って何やら始めていた。なので僕は今日は幽霊状態で過ごす事になりそうだ。
明日は雨森姉妹が、宙翔の宿に泊まりにくるので、それをレイに伝えた。
「へえ、こっちに来るんだ? 珍しい。あの二人は余り出歩かないからね……。この家にも呼んでみる?」
「え? 良いけど。なんだか文句言われそうな気がするよ」
「トウカちゃんは言いそうだね。でも、彼女はそういうのが仕事でもあるからね……まあ、良いんじゃない?」
「うん、その、嫌いな訳じゃないし、可愛い範疇だから良いよ」
「そうなの?」
レイが首を傾げた。
「違うの?」
何か変だったかな。
「いや、アキが良いなら大丈夫だよ」
言われてからふと、神様に可愛いは無かったかな、と思い直したが言い方は他に思いつかなかった。時々言われすぎて凹むけど大体は本当の事だ。それに恩もあるしね。歓迎の準備をマリーさんと考えよう。




