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20 追求

 ◯ 20 追求


 フリーマーケットの日が来た。宙翔も呼んで手伝って貰った。今回はマリーさんの手作りぬいぐるみと子供服、マグカップのケーキ等のスイーツ、庭のハーブを乾燥させた物にそれを入れたクッキー、ナッツ入りのクッキーを並べた。コップは一応並べたけど、売れるだろうか? 


「なんか、母ちゃんが雨森姉妹が予約してきたって言ってたぞ、聞いてないか?」


 髭を動かしながら宙翔が聞いてきた。


「そうなんだ、僕は聞いてないよ?」


「そうか、日本のお姫様だって教えといたから、母ちゃん張り切ってたぞ」


「……そ、そう。うん、大丈夫と思うよ、それで」


 似た様なもんだと思う。僕もよくわからないし。


「カニを食べたがってたから、カニコースを用意したみたいだ。アキも食べに来るか?」


「いいの?」


「良いわね〜、あたしも食べた〜い」


「じゃあ、明後日だから二人で来たらいいぞ」


「分かったわ〜」


「ありがとう、明後日また連絡してよ」


 そういえばカニがどうとか言ってたっけ。

 今日はマグカップの10個セットが売れた。マリーさんの子供服は何着か売れて、ぬいぐるみも子供が抱えれるくらいのものが、いくつか売れた。スイーツはやっぱりおやつの時間に売れ、前回買ってくれた人も何人かいた。

 他の店も時間がある時に回って見た。マリーさんは手作りバターとチーズ、絞りたてミルクに夢中だった。数が溜まったら、たまに店を出しているみたいで、庭で取れたハーブや、野菜と物々交換していた。

 僕は手作りの魔道具を売っている店があったので、覗いてみた。魔法の杖とかが置いてあった。使ってるのを見た事無いけど、やっぱりあるんだと感心してみていた。しげしげと眺めていたら、初心者用の杖を貰ってしまった。なので乾燥ハーブをお礼に渡しに行ったら喜んでくれた。



「この杖はここに小さめの魔結晶をはめ込めるみたいだな」


 何故かマシュさんがテーブルに転がっていた杖を見ていた。よくある凡庸品だが、手作りだから効率はいいはずだと言う。使ってみたら、本当に魔法が使いやすかった。


「一旦杖を通った魔力を一定に整えてくれるから、維持しやすいはずだ。よっぽどのノーコンか、全くの初心者なら助かるはずだ」


「へえ、確かにそんな感じがするかも。維持しやすいし……」


「まだコントロールが出来てない証拠だ。杖無しでそのくらいは出来ないと、いつまで経っても魔結晶に魔力を込めるのに時間が掛かるぞ」


 確かに、あれはまだ出来てない。スフォラはマリーさんに教えて貰ってからかなり上達し、紫月も昨日こつを掴んで、まるでスーと吸い込まれる勢いで魔力を入れていた。僕は魔力を魔力として維持するのが苦手みたいだった。ベールは簡単に扱えてるのにおかしい、とはレイに言われたけど、そんなの良く分かんないよ。


「難しく考えすぎずに、ベールと同じだと思えば良い。魔法も世界の理の一つだ。闇を理解し繋がってるんだから、魔法も出来るはずだ。魔力をもっと感じれば良い」


「世界の理……なんか出来る気がして来たよ、マシュさんありがとう」


 世界の理に繋がるか……。闇のベールを出してみる。こんな風に使えれば良いんだ。同じに扱えるというのなら、出来るはずだ。今度は光を出し、光のベールを作ってみる。最初は分解したが、次はうまくいった。こんな感じなのかな? あれ? 魔力を忘れてる。これって何になるんだろう。光のベールと闇のベールを持って振り返ったら、マシュさんとマリーさんが難しそうな顔でこっちを見ていた。


「何でそうなる? すっ飛ばし過ぎだ」


 お前馬鹿だろうとマシュさんの目が言っている。何か間違ったのは分かっている。二人とも呆れ顔だ。


「そうね〜、相性は高かったら出来るとは思ってたのだけど……マシュの言う通りね〜」


 マリーさんが目を逸らしながら言った。夜にレイがやって来て、嬉しそうにやっと僕の出番だねと言った。


「先に魔力の方が良いんじゃないの〜?」


 どうやら、いきなり世界と繋いで使うんじゃなくて、魔力を使って理を引き出して使い、理解を深めて行くのが正しいコースだったみたいだ。確かに順番を色々と飛ばしている。


「大丈夫だよ、ボクも逆だったしー」


 レイはにこやかに笑っている。


「なるほどな、師に似るとは言うけど本当だったんだな。なら問題ない」


 マシュさんが何か納得して頷いていた。


「そうだね、うれしいなぁ」


 どうやら、レイが言うには問題は無いみたいだ。


「光は全てを明らかにする意味が大きいからね、陰の気に満ちた魔性のもの達には堪え難い苦痛を与える事になる。隠れてこそこそするしかないからね、彼らは。すなわち、陽の気による浄化、世界に色を与え、煌めきと美で心を癒す! これこそが全てっ! 世界を美しくっ!! ボクにふさわしいと思わない?」


 なんだか説明がずれていってる気がするけど、何となく分かった。まあ良いか。


「うん、ぴったりだね」


「一緒に美の追求をしようっ!」


 説明からすると、見える事で不安を解消し、全てを明らかに、日の元に晒し、暖かい陽の力で安心を与える……という事みたいだ。邪神、悪神達の邪力にも日光消毒の様に効き目は絶大だそうだ。バイキン扱いなんだ? 後は生物に取っては成長を促し、風化と老化は変化だと言っていた。

 レイは、光のシャワーだと言って庭に光る雨を降らせて虹を大量に作り、庭中をキラキラに飾り付けていた。レインという名の通りの力だ。まあ、普通に光で覆う事も出来るみたいで、特にアストリューでは力が増大するらしい。ここは光と水の世界だよ、と気分よく語っていた。

 美は心を癒すんだとしきりに言っているので、自身の美を追求するのは当たり前というのがレイの持論のようだ。 

 お祝いに神殿で美容コースを受けに行こう! と誘われた。お勧めのコースが出来てるからと全員で明日、行く事になった。レイらしいお祝いだ……と思っておこう。

 神殿は光と水の癒しと、美を追求する人達の養成所でもあるし、神々の癒しを受け持つのにはぴったりの場所だったみたいだ。僕には、癒しの力が備わっていたのは分かっていたので、アストリューで修行をしてればいずれは扱えて神殿での祈りに参加する予定だったみたいだ。

 なのに、邪神の卵のおかげで真逆の闇の力を目覚めさせ、死神になんてなろうとしてたからやきもきしたそうだ。

 光の力に目覚めたからには、アストリューには欠かせない人材として、管理組合も死神の組合に売る事は無い、と嬉しそうに告白してくれた。人材の発掘のために、たまにそんな取引があるみたいだ。


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