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18 盲点

 ◯ 18 盲点


 アストリューの家でぼんやりしていたら、マシュさんがスフォラを連れて帰ってきた。


「大変だったね」


「本当だぞ、折角苦労したのに水の泡だ」


 きっと、悪戯でしかけるはずだったの魔術の事だと思う。僕が聞いたのはスフォラが呪術に掛かった方だけど……。


「スフォラも治ったの?」


「ああ、まさか人間用の術に掛かるとは……盲点だった。それだけ精神が出来てきたという事だが、対策が必要だ。忙しくなるー!」


 マシュさんがそんな事を言うなんてビックリだ。いつも忙しそうなのに、更に忙しいってことだろうか。スフォラが帰ってきたので、体に入った。スフォラもちょっと今回は困惑しているみたいだった。

 僕はスフォラに一緒にいようと伝えるぐらいしか出来なかった。ま、マシュさんが何か対策を考えてくれるだろう。それまで、夢縁には行かない事になった。折角復帰したのに……。

 まあ、最近詰めてたからかなり取り戻せた。大人しく休んでおこう。通信の高校の授業を進めておけば良いしね。

 そこで、庭いじりをしながら、また魔法陣の続きを考えていた。スイッチを押すのは魔力として、押してるついでに魔力を注いで溜めてから離す。もう一度魔力でスイッチを押せば、貯めた魔力をバネの部分の動力にして押し返せないかな? 一回目と二回目は違う反応だ。留まるか、跳ね返るか。ま、とりあえず実験だよね? 

 何度も、記号を書き直しては紫月とスフォラの三人で実験をして、行き詰まっては庭で収穫したり、レポートを書いたりしつつ、続ける事、五日。なんとか完成した。

 最近はマリーさんも魔法を使ってくるし、これで撃退出来るはずっ! スフォラにマリーさんと至近距離で当たってこいと二つ持たせた。魔力を入れ直さないと一回で効果が消えるし……。


「また何かしたんでしょ〜、分かってるんだから〜」


 マシュさんに噛み付いていたが、リビングのソファーで疲れて寝ていたマシュさんはめちゃくちゃ不機嫌だった。ただ、僕を指さして、


「実験をしてたのに気が付かなかったのか?」


 とだけ言って直ぐに布団に潜り込んでいた。自室で寝ようよマシュさん……。


「アキちゃんなの〜?」


 僕が頷いたら、


「マシュ、対策はこれで良いんじゃないの〜?」


 と、無理矢理起こしていた。


「どんなだ?」


 話を聞かないと寝かせてもらえないと諦めたのか、なんとか起きて来た。


「魔法を跳ね返すの〜」


 魔結晶に刻んだ立体の魔法陣を見ながらマシュさんは力なく、


「……またアホな事を考えたんだな」


 と、言ってこっちを見ていた。いや、それが一番最初のアイデアですよ? 後は寄道というか副産物というか……。


「応用すれば他のエネルギーでも使えるんでしょ〜?」


「ああ、アキの頭で出来るくらいなら、簡単だから応用出来るだろう。元次狼、これは使いに行くなよ?」


 マシュさんはちょっと寝ぼけてるのか前の名前で呼んでいる。


「なんでよ〜」


「アイデアは隠しておくものも必要だからな……。多分、組合もそう言うぞ」


「うそ〜ん、専用になるの〜?」


「そうだな、危ないし。やたら使われたら困る類いだ。もう二時間寝てから話しするからおとなしくしてくれ……」


 言った途端にスイッチが切れるみたいにマシュさんは眠った。すごい特技だ。

 二時間ではなく、五時間ほど眠ったマシュさんはすっかり僕の作った魔法陣の事を忘れていた。マリーさんがマシュさんの言った事を教えて、何となく思い出したみたいだった。


「何かそんな話をした気がする」


「気がするじゃなくてし、た、の〜」


「で、ものは何処だ?」


 僕が眠る前に見せたものをもう一回見せた。


「あー、思い出した。跳ね返すんだな?」


「実際見る〜?」


 マシュさんが寝てる間にマリーさんに魔力を入れて貰った。僕と紫月とスフォラで魔力を入れてたんだけど、全員コントロールが悪くて魔結晶に入るより漏れる方が多かったのだ。

 どうやら、いつもより繊細なコントロールが必要みたいだ。マリーさんには特訓ね〜、と言い渡された。確かに自分で作っといて出来ないなんて恥ずかしい。頑張るよ。


「いくわよ〜」


 実験の為、いつもの練習より少し強めの魔法を飛ばしていた。スフォラが手にした魔結晶にマリーさんの魔法で作った魔力を含んだ水が当たった。その瞬間に反発が起きた。全部は返ってないけど、半分以上はマリーさんに返ってずぶ濡れになった。マリーさんは避けれるだろうけど、あえて受けたみたいだ。


「避けなかったの?」


「だって分かりやすいもの〜」


「うん。ありがとう、マリーさん」


 タオルを取って来て二人に渡した。


「あれを半分以上は返したか。……ここを直せばもっと反発速度は上がりそうだし、体全体のカバーが出来てないな。そこを直せば良い感じになると思うぞ? 出来上がったら、組合に交渉だ」


「交渉ってどうするの?」


「これを他に売りつけに行っても良いか聞くんだ」


 ……それは交渉なんだろうか? まあいいか、任せよう先輩だし。


「レイには言わないとだめでしょ〜?」


「そうだな、その後の交渉は得意だよな」


「マシュじゃ喧嘩を売ってしまいそうだし、そうしましょ〜」


「という事はメレディーナも来るな。仲間はずれは良くないしな」


「そうね〜、後から怨まれたら怖いわ〜」


 その後はマシュさんと改良を重ねた。その様子をカシガナの枝に座って、猫の姿のレイと紫月が見物していた。マリーさんとメレディーナさんはお茶を飲みながら何か話し込んでいた。


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