17 迷惑
◯ 17 迷惑
「アキさん? 目は醒めたようですね」
誰かの顔が見えた。誰だろう?
「まあ、かなり混乱してますね……」
女性が驚いた表情でこっちを見ている。呼びかけようとして、名前が出てこない事にいらだつ。もう一度女性の顔を見る。あ……。
「メレディーナさん」
「良かったですわ、やっと意識が戻ったようですね」
なんで出てこなかったのか不思議なくらいだ。なんだかものすごく深く眠ってた気がする。何時もの神殿の病室だ。
「倒れたときの事は覚えてますか?」
僕は首を振った。
「倒れたんですか?」
「ええ、何か画面を開いて見ている時に倒れたと聞きました。レイさんとマシュさんが調べたら、かなり深く意識の底に届く、強い暗示が掛けられる類いのものが仕掛けてあったようです。アキさんは守りが働いて意識を閉じた状態になったようです。幸いにそれ以外は変化は無かったですわ」
「守りですか?」
「ええ、アキさん自身の防衛に、私とレイさんで補強しておいた守りが効いたようです」
「危なかったんですか? ありがとうございます」
また助けられたみたいだ。何だったんだろう。画面? うーん、分からない。
レイが部屋に入って来た。遅れてマリーさんも来てくれた。紫月が飛んで来て、早速何か吸っていた。そういえば、幽体になってる。紫月は幽体のときの方が吸いやすいんだろうか?
「アキ、大丈夫?」
「うん、ありがとう。また助けられたみたいだから……」
「勿論だよ、ビックリしたよ? 椅子から転げ落ちたと思ったら、スフォラが変な魔術であちこち壊しだすし」
そんな事になってたのか……それはビックリだよ。知らずに平和に寝てたみたいだ。
「大丈夫だったの?」
「勿論だよ、マリーが一番近くに居たからね」
「誰も怪我してない?」
「うーん、スフォラが術に掛かったぐらいだよ?」
「……え?」
詳しく聞いたら、画面を見て掛かった呪術は秘密の開示だった。それで有力な情報か弱みを握るやり方みたいだ。
スフォラは僕との融合のせいで術が効いたのか、マシュさんが秘密で仕込んでおいた魔結晶を使う、という行動を起こした。
悪戯の前にバレたのが痛かったのか、マシュさんは不機嫌だったみたいだ。どうやら、不意打ちで的になる呪いを掛けて、後から追尾機能を付けた魔術を放つものだったみたいだ。……マシュさんはどうやら本格的に魔法陣創りに嵌ってるみたいだ。
スフォラに掛かった術の解除は出来たが、念のために細かいチェックをしていて再発防止策も考え中だ。何となく、状況は分かったけれど、見ていた画面がどうしても思い出せなかったので聞いてみる。
「早川っていう男のホームページよ。覚えてないの〜?」
マリーさんに可哀想な目で見られつつ、教えてもらった。残念ながら記憶に無い。
「え、と、会話を録画したよ。それは覚えてる」
「ちゃんと残しとくなんて偉いわ、その調子よ〜。人の秘密を暴いて、無理矢理動かそうなんて奴、碌でもない事してそうね〜」
早速、皆で見た。
「これだけ?」
「うん。この人にあったのは二回目だし、この人の作った銀枠の勉強会のメンバーは強引な勧誘をして来たんだ。それで断ったら、後を付けられてなんだか色々調べられたみたいで……この人が言ってる気も扱えないっていうのは、多分そこからの情報と思うんだ。一回目に会ったときはあんまり変な印象は無かったんだけど……」
「ふうん、強引にしないと困るくらいの被害に遭ってるのかどうかは、調べないとダメだね。レイカちゃんに報告しとくよ」
レイがそう言って出て行った。紫月に心配させてごめんねと、謝った。
ため息をつきたくなるくらい酷い事をする、笑顔の下の隠した気持ちを知るのは嫌な気分だ。本当の気持ちを隠さないといけないのは何故なのかを思うと、ちょっと悲しいと最近は思う。




