16 表情
◯ 16 表情
次の日、ヘッジスさんからメッセージが届いた。アイスと言われたのにメッセージはクリーム宛になっていた。一ヶ月に一回ぐらい成長したかどうかの確認の映像を送れ、と書いてあった。きっと昨日は言い忘れたに違いない。ところでどこ基準の一ヶ月だろう。確認しておこう。
母さんから、近所の変な噂を聞いた。まだ小さい子の幽霊が出るという噂だ。そこでトシと一緒に真相を確かめに出かけた。僕がいつもの格好だったのでがっかりしていた。髪は切らせてもらえないので括っている。スフォラも長いのが気に入ってるし、共同だから仕方ない。
トシは何を期待しているんだ? 気分だけでもデートを味わいたかったと文句を言われたが、周りから見えないし、自己満足にもならないし虚しいと思うよ?
[此処かな?]
「ああ、ここの住宅街のあの空き地だな」
しばらく待っていると、妙な物が出て来た。確かに幽体みたいだけど、なんだか違う。写真に納めて神界警察の伊東さんに問い合わせた。すぐに離れるよう指示が出た。妖怪、悪鬼の類いだそうだ。トシにそっと静かに退却を伝えた。ワンブロック程離れてから、トシに事情を伝えた。
「危ない奴なんだな?」
「うん、死にはしないけど、かなりダメみたいだ。一気に病気になったり、体が動かなくなる事があるみたいだから、寄らない方が良いよ」
直ぐに神界警察が来て、捕まえに走って行った。夢縁よりは今回は時間を掛けない方が被害もでないので神界警察が動いたみたいだ。
僕達はそれで帰った。皆でご飯を食べそこで今回の報告をしたら、見えるのも不便だなと父さんが言っていた。トシはぼんやり見えるくらいだけど今回は、ちょっと寒気がしたと言っていたから、何となく悪いものだとは分かったみたいだった。
後で董佳様が、あれは調べたら神使が瘴気に飲まれたものだった、と言っていた。どこかの神社にいたものが襲われたのかもしれない、と董佳様は嫌そうな顔をしていた。今は瘴気を取り除いて療養中で、その内に復活すると言っていた。百年単位をサラッと言われたので、黙る事にした。そういえば最近出てくる年数はその単位が多いな……。
「やあ、ホームページは見てくれたかな?」
「あ、早川さん。すいません、まだ……」
不味い、さっきまですっかり忘れてました。ノリノリで魔法陣を作ってたから、そんな事はしっかりと忘れてましたとは言えない……。
「残念だな、君は情報の必要性を分かってないね」
「そうかも知れません」
言われても仕方ないくらいすっかり忘れてたよ。
「そんな事では夢縁に残れないし、まして君はちっとも気を使えてないって聞いてるよ?」
「……」
誰に聞いたんだろう、そんな事……最初の人に付けられてたっけ、そういえば。実技の講師は最初よりは良いと褒めてくれているから多分、そっちから聞いたんだろう。
「ここに残れたら、神界にだって行けるチャンスなんだ。公然の秘密だけど、そんな事も分からないとは言わせないよ」
ちょっと自慢げな顔が、心配そうな表情を作る前に一瞬現れた。直感でそれが彼の本音だと気が付いた。本当の気持ちは今日は隠せていないみたいだ。なんだかがっかりだ、折角いい人だと思っていたのに。
「その道を僕なら掴めるし、君達も引き抜けるかもしれない。もう、紹介もして貰ってるから直に内定も決まるさ。こんなチャンスを君は逃してるんだ。早く仲間になってくれないと、君を引き入れる事が出来なくなるよ?」
今度はちょっと自分に酔ってる感じだ、真剣な様子を見せてるけど、ちらちらと言ってる事とは違う表情が見え隠れしている。スフォラにさっきからの様子を録画してもらった。何となく、変だ。
「えーと、そうですね。帰ったら早速ホームページを見てみます」
「そうしてくれるかい? ちょっと今日は強引すぎたね、済まなかったよ」
僕の表情で、引いている事に気が付いたみたいだった。そのまま早川さんが引いてくれたのは助かった。
仕方ない、帰ったらホームページくらいは覗いてみよう。




