15 系統
◯ 15 系統
今日は死神の組合から派遣され、僕の指導を受け持ってくれるという人と会う約束だった。アストリューの神殿で面会だ。スフォラと一緒に緊張しながら部屋で待っていた。
「変わり種だという死神候補か?」
入って来て僕を見るなりそう聞いて来たが、本人に聞いてもその答えは出ないと思う。
「えーと、アキです。よろしくお願いします」
メレディーナさんから聞いていた通りの見た目だ。色素の薄い亜麻色の髪と翡翠の目だった。
「ヘッジスだ。今からアイスと呼ぶ」
「え? アイスさん?」
「違う、お前だ」
「僕?」
「そうだ。死神は名前を呼ばない。字で呼ぶ」
「はあ、何でアイスなんですか?」
「甘ったるそうな顔だ」
「後ろにクリームが付く方ですか?」
「……ぴったりだ。付いて来れないならクリームと呼ぶ」
うわ、厳しそうだ。しかもかなりぶっきらぼうに喋る人だ。付いて行けるかな……。
「訓練場に向かう」
「はい」
ヘッジスさんに付いて行った。背は180センチくらいはありそうだった。意志の強そうな目は死神って感じがした。
訓練場は今は使われていない昔の神殿の訓練施設跡だった。
「まずはマントの確認だ」
視線で出せと言われてるのに気が付いて、渡した。
「月の衣だな。報告通りだ」
「ヘッジスさんのマントは何になるんですか?」
「同じだ」
なるほど、どうやら同じタイプだから指導に来たのかも。しばらくベールをチェックし、返してくれた。
「ガーディアンについてはどれくらい知っている?」
「全く分かりません」
星の守りとか言われてもそれが何か分かっていないので、どうにも理解しようがない。僕の即答にちょっとがくっと脱力しかけながら、
「そうか……」
とだけ言って、黙ってしまった。何となく説明は苦手そうな人だなというのは分かったので、しばらく待った。
「……聖域を作る感じだ」
「?」
首を傾げた。ヘッジスさんの目が泳いでいる。
「マント内に自分の保護するもの意外を入れない。他を弾いて追い出す事が出来る。侵入を許さない事で守る」
「はい」
今度は何か分かった。
「アイスのマントは月の癒しと回復の効果もある。アンデッドも受け入れた報告もある」
「はあ」
「後は知識とマントの扱いだな……出来る事を見せてみろ」
「はい」
言われた通りに、ベールを出した。真っ昼間のベールはさすがに黒が見える。中で衣装替えをしてみた。
「大丈夫でしょうか?」
「……ああ、服もベールだったか?」
ヘッジスさんは苦笑いしている。
「はい」
「物好きだな」
「そうなんですか?」
どういう意味だろう。
「大体、黒を好む」
僕の服は薄ピンクのシャツにモスグリーンのカーディガン、スニーカーもグリーンだ。ヘッジスさんは黒い衣装だ。どことなくビジュアル系な衣装っぽさが出てる。何となく変わり種、物好きの意味が分かった気がする。系統が違うって事ですね?
その後はひたすら大きくベールを広げる練習だった。一度ヘッジスさんのベールを広げてもらって見本を見せて貰った。施設跡を覆ってしまうくらいに広がった。そのまま丸一日は保つとヘッジスさんは言った。それでもまだ足りないそうだ。
僕はまだ施設の半分も広げれなかったし、時間も半時間も保たなかった。でも、僕の訓練は今はこれくらいだと言われた。後は器用だから教える必要も無いらしい。
というか、何でそんなに一杯ベールが出てくるんだと呆れられた。死神を増やしてどうするんだと……。なのでなりきりごっこを楽しんだ、と答えておいた。そんなぐらいで変人を見るかの視線は止めて欲しい。
先輩から言い渡されたのは、時間の延長をして半日以上を最低でもこの施設跡を覆えるくらいになったら、ガーディアンの見習いとして始められるからその修行だった。それが出来たら、また扱きに来ると言って帰って行った。
心配した戦いは無かったので、良かったと胸を撫で下ろした。ところでそんな事が出来るまでには随分掛かりそうだけど、かなりゆっくりなのかな死神って。




