表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
うつくしいよそおいにかれんなうそをささげよう
143/144

136 進出

 ◯ 136 進出


 またしても捕虜になったタキは、イライラが頂点に達した様な顔で睨みつけて来た。取り敢えず、タキの体を闇のベールで包んでぐるぐる巻きにして、幽体のタキが中に入れないようにしてある。幽体はマリーさんが手錠をかけて繋いでいる。

 スフォラの腕は金属擬きを添えて応急処置をした。光のベールの包帯を巻いているが骨折を直すのは難しい。スフォラは金属擬きを動かす事で腕を動かしていたが、痛くないんだろうか? 見てる僕の方が痛い……。


「スフォラ、無理して動かさない方が良いよ。後からかなり腫れると思うし」


 頷いてくれたので分かってくれたと思う。耳と頬の傷も痛そうだ。霊泉水で洗って傷薬を塗って包帯を巻いた。片手しか動かせ無いせいで、随分おかしな事になった。どう見てもミイラみたいな状態だ。やり過ぎだと思ったが、どうすれば良いか分からない。取り敢えずこれで良いか。僕もスフォラとお揃いな姿だし。

 闇のベールで封じてあった地下水の術の破壊をマリーさんがやっている。ギダ隊が半分はこっちに向かっているみたいで、向こうの処理も少し終ったみたいだ。


「これからしばらくここでキャンプだ。術の破壊は出来ているが、規模が大きいから環境の方が元に戻るのにしばらく掛かるだろう。まあ、管理神次第だが、二年以上は掛かるだろう。トーイの木の栽培の方の処理もある。あれは……燃やすか消去するしかない」


「そうね〜、土地に撒かれた薬の影響も考えたらちょっと深刻よね〜」


 マリーさんとギダ隊長の話が始まった。


「ああ、あれで村や町の人間の苦しみを拾って憎しみを植え付け、増幅してから多分、隣の国と戦争を始めさせる。そんな仕掛にするつもりだったんだろう。下地として、トーイの木の利権問題をバラまいてるし、物価も操作していた跡があった」


「アキちゃんと調べてたあれね〜。続きを調べてたのね?」


「それは神殿にいる連中がやって、さっきこっちとも情報を交換したからな」


 ちゃんと事件の背景も調べているみたいだ。


「それでもう、ここは大丈夫なんですか?」


「まだ分からん。逆に住民の虐殺とかでも、自然ダンジョン化は可能な程の下準備がされてるからな。計画通りにやったよりは規模は小さくなるが……」


 憎しみのエネルギーを集めて、それを使ってのダンジョン化計画みたいだった。


「しばらくは監視と環境を元に戻すのが必須ね?」


「ああ、村に入り込んでたビルベルスター商会も、丸ごと捕まえて取り調べを始めている」


「ブランダ商会との繋がりは出てるの?」


「それはまだだな。これからだろう」


 そんな話を聞きながら、皆の傷の手当をした。瘴気の火傷よりも疲労回復が主だ。はっきり言ってスフォラが一番重症だった。邪神や、悪神達は死神達が冥界に連れて行ったみたいだ。

 この今いるトーイの木の精霊の場所と、ノーマークだった場所とに偶々視察に来ていた悪神達は僕達の出現に随分慌てて、ここのダンジョン化を始めようとしたみたいだった。ここが使えなくなったら直ぐにそのまま村の方の殺戮と、もう一つのダンジョン化の術を起動させようと慌てて動き出し、それを追いかける形で死神が分断されてしまったみたいだった。そのフォローにギダ隊も参加し、今に至った事になる。

 環境は妖精達の助けは無理なので、実際は三年以上は掛かるみたいだ。土地の浄化は必須だし、薬にやられてるトーイの木の処理も必要だし、踏んだり蹴ったりだ。一年ぐらいでここの神殿の人達だけでもなんとか廻る迄に回復出来るかといった感じだ。悪神達の組織がどれほどの規模か分かっていないので、また襲撃がないとも限らない。とにかく、事前に防げたのは良かったという事だ。


「ラークさんの所でもこんな風に悪神達が入り込むなんて……」


 治療が一通り終り、マリーさんと話した。


「そうね〜。三年越しの計画だったし、田舎での争いに迄は目が届かないわ〜」


 確かに。本当に偶然に分かっただけで、現地でないと絶対に気が付かない。


「買い付けの旅が変になったね」


「そうね〜、新トーイの実はここで処分ね」


「そうだね、折角買ったけど、実物は十個しか貰ってなかったね」


「旧トーイの実はアキちゃんが持ってるでしょ〜。あれの開発を頑張りましょ〜。そうすればここの復興の役に立つわ〜」


「そうだね、頑張るよ」


「その調子よ〜」


 次の日、僕とマリーさんは神殿に向かった。捕虜のタキを連れて……。スフォラは熱が出ているので光のベールに包んで収納スペースに入っている。ここの妖精達はギダ隊に預けてタキがいた小屋に向かった。

 マリーさんが転移装置の修理をマシュさんに指示されながら、なんとかやっている。この装置の修理が終れば移動が楽だし、組合の物と交換しても良い。そして、なんとか修理が終ってラークさん達のいる神殿に戻って来た。入れ替わりで何人か技術者と神殿の人達が向かった。セーラさんとネリートさんもノーマークだった術の方から転移装置を使って戻って来た。

 タキは神殿の人達に尋問を受ける為に、どこかに連れて行かれた。そしてマシュさんが恐ろしく悪い顔で何かを言っていたが、まあ聞かない方が良いだろう。そのままスフォラの修理が始まったみたいだ。

 僕は神殿の奥のラークさんの部屋に入って行った。薄いカーテンが何枚も重なった奥にラークさんはいた。庭を眺めながら、忌々しげな表情で、


「転移装置を置くのは好きではなかったが、そうもいってられんな……」


 と、悔しげに言い、木で編んだ座り心地の良さそうな椅子の上で溜息を付いていた。


「そうですね、こんな風に壊そうとしてくるなんて、辛いですね」


 手で座るように誘導されたので、向かいに座った。ラークさんのプライベートルームは石の床に木で編んだ家具が置いてあり、装飾もシンプルで庭に面した壁は無く、日差しを調節する布があるだけだった。

 窓の代わりに結界が張られている感じだ。庭に出て少し進むとテラスに繋がり、温泉からずっと続く河が見え、振り返れば、火山が遠くに見えた。


「ダンジョンと言っても、地獄と繋げる様な物を作られては目も当てられん」


「どうなるんですか?」


「間に冥界を無理矢理差し込む事になるが、随分ここのエネルギーを持って行かれるし、それによって世界が不安定化する。その隙に侵略してくるか、地獄からの憎しみと破壊を連鎖させて……つまり、管理神の交代に繋がる事を始めるんだ」


「そんな」


 今回の計画はそんなところにまで影響を及ぼす物だったんだ。


「持ちこたえれるかどうかは、ここの生命と僕次第だね……それでも随分低い賭けになる。一度繋がった物を消すには集められたエネルギーの倍は必要だからね、それをそんな中で集めるなんて至難の業だ」


「怖いですね」


「ああ。メラードノスト世界が、今はその瀬戸際だって聞いている。少し早めに気が付いたが、ひっくり返すのは難しいみたいだ。レイがダンジョン化を食い止める為の術をぶち込んで時間稼ぎしているが、どうなるか分からないと言っていたな。地獄とはまだ繋がってないが、拮抗しているみたいだ。一旦ダンジョン化の負の連鎖が始まると取り除くのも大変だからな」


「メラードノストって聞いた事あるかな?」


 何処だっけ? スフォラが居ないとこういう時に困る。


「ルージン神がいる所だね」


「あ、フォーニと会った所だ!」


 あそこがそんな事になってるなんて聞いてない。そう言えば、レイが行かなくて良いとか言ってから全く気にしてなかった。後で調べておこう。


「ここで重要なのが中間界の存在だね。地獄と冥界、そこに更に中間界を差し込めれば、地獄からの影響が届かないか随分減る」


「そうなんだ」


「ただし、中間界が地獄の影響を受けて変質してしまうようなら意味がない。ちゃんと跳ね返すか通さない様な何かがあると良いんだが……いつかそれを期待するしかないね」


 ラークさんが僕の方を見ている。そっか、中間界ってそういう役目があるんだ。僕が作る世界が、いつか役に立つようにしていかないとダメなんだ。

 そして、今はその中間界を担う神が不足しているらしい。それだけ悪神や邪神達が活躍しているみたいだ。レイが言ってた人手不足はそこだ。


「はい。まだまだ無理だけど、頑張ります」


「死神としても活躍してるし、きっと出来ると思ってるよ」


 僕は頷いた。こんな酷い事は二度と起こしちゃダメだと思う。



 アストリューからも土地の浄化に神官や、巫女が派遣された。時々温泉の癒しの効果を僕も付けに行っている。

 マシュさんもスフォラの修理に必要な素材を集めてこっちの拠点に帰ってきた。僕の金属擬きが求められた。どうやら何かするつもりらしい。みかん箱の部屋で何やらやっている。まあ、出来上がる迄そっとしておこう。

 マリーさんはギダ隊のフォローと旧トーイの実の研究を僕と一緒に頑張った。カシガナで効果のアップが出来たし、劣化の速度が緩まった。長持ちするのは良い事だと思う。

 ラークさんとメレディーナさんの二人と話し合って、カシガナがナリシニアデレート世界でも育つか試す事になった。紫月と一緒に神殿の温泉の見える丘に植えた。

 ここはメレディーナさんとラークさんの作った場所だから、多分育つと思う。紫月もここに繋がる事で成長すると見られていて、世界を跨ぐ力を持てばアストリューにとっても良い事だからと話していた。


「ちゃんと育つと良いね」


「うん、大丈夫。あんまり変わらない」


 紫月はここの空気も気に入ってるみたいだ。


「そうだね、ここもアストリューと似て温泉は霊泉で出来てるから」


「温泉好きだよ」


 僕達は微笑んだ。カシガナの木はどんな色に変わるだろうか、ここでは何となく違った感じに育つと思うんだ。アストリューの夜明け前の薄紫の幹と紫紺の葉の色に、紫に輝く実を思い出しながら、紫月と神殿に向かって歩いた。



 〜カウンターアタック編〜おわり


続きが読みたいなんていう奇特な方はいらっしゃるでしょうか?

一応は書いてますがどうなんでしょうね?

世界征服編はこれでもかと言わんばかりに死人が出ます。罪無き人々をどんどんと殺して行きまして世界を牛耳るのです。取り返しにくる神々を返り討ちにし、世界の頂点に死神として立ちます!? 

読めばきっとエルフの設定に悩んだ作者の苦悩が窺えるそんな作品です。美人で貧乳設定か、ロリで巨乳か、ロリなだけにするのか、熟女にするのかドジ設定は必要かどうか……悩んだよ。

いや、そんなことよりもトシにもて期がやってくるかも知れない。目指せ! ハーレム! 壊せ! ハーレム!

いいえ、本筋はガリェンツリーに入ります。トシがハーレムをどうこうする話じゃないです。(ハーレム嫌いの人も読んで大丈夫です)

さて、投稿しても良いのでしょうか? 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ