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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
うつくしいよそおいにかれんなうそをささげよう
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129 禁止

 ◯ 129 禁止


 夢縁でのクラスアップの試験が行われた。なんとか実技の方が伸びていた事もあって通った。一足先に沖野さん達も星が三つに変わっている。僕も今日から二つになる。

 最近は影の精神攻撃を覚えた。人に寄っては余り利かないが、大体は嫌がる。黒板や、ガラスを引っ掻くあの音と合わせると随分嫌がられるが、悪神達には効果はなさそうな気がする。

 大量の黒バッタの蠢く姿と、背中がぞわぞわとする感覚付きの記憶を相手に送りつけるだけの精神攻撃は、やった後にかなり怒らせるので、試験のとき以外は封印だと思っている。激高させてるだけなんて意味が無い。試験官全員の怒りの目が怖かった……。試験だし、わざとじゃないから許して欲しい。

 そして、十月から御門さんとトシが夢縁学園に入学してくる。二人で見学も申し込んで終ったそうだ。丁寧に案内してくれてよかったと言っていた。……なんか羨ましい。



「そろそろ、地球時間で一年だね」


 後、三日で十月に入る。確かあれは十月の中程の週だったはず。


「そうだね。レイと出合って一年だね。確か十月だったね」


 なんだか懐かしいぐらいだ。一年だからって何かある訳じゃないけど、振り返ると色々あったとしみじみ思う。後半は攫われる事が少なくなった気がするけど気のせいだろうか? いや、気のせいじゃ無い。


「アキが攫われる事も減ったし、事件も落ち着いてるみたいだから今のうちにレベルアップだね」


「うん。眠りの術も大分上達したって言われたよ」


「範囲は狭めれるようになったの?」


「まだ特訓中だよ。なんか無意識に外に広げようとしてるって言われて……。原因が分かったから今はその予防特訓も追加してるんだ」


「へえ、何だったの?」


 僕はレイに説明した。影の精神治療というと、闇の力とも繋がる訳で……ずっと闇のベールを広げて維持する練習をしていたけれど、凝集させる練習をしてこなかったのが原因だと分かったのだ。ヘッジスさんにも理由を話して、ベールを縮める練習も始めている。力の凝縮、収縮は今まで殆どやってなかった分、難しい。


「なんだ、それならボクが得意だよ。ボクのレッスンだよ、任せてよ」


 レイが自慢げに顎を上げて請け負ってくれた。


「本当? 良かった」


 それからしばらく特訓が始まった。光を集めて固定化出来るまでになった。自分の力を閉じ込めたり周りの力を集めたり、周りの力と自身の力を混ぜたりと、毎日色々とやらされた。


「大まかには出来てきたね、でもまだ外では許可出来ないな……自分の力だけでやった方が良いよ」


 みかん箱の部屋での特訓だったから、まだ簡単に出来ているのが分かる。外ではここまでは出来そうにない。


「うん。分かったよ。他の力も間違って集めたら大変だよね」


 ちゃんとやらないと、他の人の力まで扱ってしまう事になるので、綺麗に分けれるくらいの細やかな気の動きを習得しないと危険だ。

 大抵は外からの力で取られるとかは、本人のガードが働くからそう問題ないんだけど、出来れば普段はそんなガードが働く程の影響を与えない方が望ましいみたいだ。僕自身影響を受けやすく、影響を与えやすいみたいだし……。

 全てが混在する世界から光を集めていく。光の力の凝縮は熱量を発し始めると危険なので、慎重に静かに流れにそって力を物質として存在させていく。集中力が必要だ。集めて最後に固定すれば小さなガラス玉のような物になった。触るとグミみたいに弾力があり、少し光っている。光の純結晶と言った感じだ。


「まだまだだけど、基本を覚えれたってところかな? アキの光のイメージが柔らかいイメージなのかな?」


 レイが出来上がった物をしげしげと触って観察していた。魔結晶とはまた違う物だ。魔法の介入無しだから、純粋に光の力を集めた物体だ。神殿での照明はこれが使われている。光量調節をして光を強めにしたら、レイが笑った。


「光量調節が楽に出来るなら特徴としては十分だよ。癒しの効果も調節されるね」


 新人だと無茶をして、いきなり太陽を作ろうとしてしまう人もいるのだとか。僕の初めて作った光の力の純結晶はアストリューの家の寝室の照明になった。光量を絞れるので使い勝手はかなり良い。


 調度出会って一年目の日に、光と闇の力を集めて物質化した布を渡した。いつかジョークで作った透明マントの完成番だ。暗闇でも昼間でもちゃんと隠れる事が出来るし、気配も消せるものだ。みかん箱の部屋で完成させた。

 レイならきっと悪戯をしに嬉々として出かけると思っていたら、出かける振りで一番に悪戯された。食べようとしたケーキに顔を突っ込まされて怒ったけれど、何処にいるのか分からない。……きっともう出かけただろう。

 夕刻に呼び出されて行った神殿で、メレディーナさんに、


「後始末はアキさんがして下さいね? レイさんに渡した責任です」


 と、足が震える程の迫力の笑顔で言われてしまった。神殿の掃除が罰として科せられた。水浸しになったり、食器や食べ物が散乱していたり、カーテンやシーツが廊下に全部引き出されていたりと嵐の後のようだった。レイはメレディーナさんに捕まって逆さ釣りにされていた。反省させられているみたいだ。


「メレディーナのケチ」


「反省が足りないようですね、レイさん?」


「そんな事ないよ、メレディーナも使えば分かるよ」


「確かに気配が感じられませんでしたね、だからこそ使い方を謝ってはいけませんわ」


「そんなのメレディーナだからに決まってるじゃないか」


「まあ。そんなことを言って、罰から逃げるおつもりですね? ダメですよ、アキさんがお掃除を終るまでそのままでいてもらいますから。悪戯のけじめです」


 掃除が半分程終わって休憩していたら、そんな声が聞こえてきた。この水や、カーテンやシーツは透明なレイを捕まえる為にメレディーナさんが使った物だった。気配が分からない為に広範囲にこれらを使って捉えようとしたみたいだ。魔力を使った探査も出来なかったらしい。随分派手な追いかけっこがあった、というのは掃除をしていると嫌でも分かった。

 この後、透明マントは神殿のどこかに隠されたまま、二度と見る事は無くなった。取り上げたマントは何となく、メレディーナさんが使っていると僕は睨んでいる。当然、透明マント製造は禁止された。


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