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世界を繋ぐお仕事 〜カウンターアタック編〜  作者: na-ho
うつくしいよそおいにかれんなうそをささげよう
127/144

120 執筆

 うつくしいぎそうにかれんなうそをあたえよう

 ◯ 120 執筆


 今日はポースの自叙伝の内容を、皆にチェックして貰っていた。お手伝いは見た。違ったな家政婦だったか? そんな感じの悪神達の面白くもばかばかしい騒ぎが収められた本は、やっと一冊分が出来上がった。

 折角二年の歳月をかけて手に入れた世界の制御機能を備え持つクワントトゥの神の杖を、計画を一緒に進めていた契約仲間の誰かが逃亡途中に良く似た別の物と間違えて持ってきてしまい、皆で探しに戻るという話は、読んだ瞬間にマリーさんとレイが真っ青になっていた。


「これ、見つかってないの?」


 盗まれたのは千年近く前らしいけれど、そんなのまだ残ってるのかな?


「みたいだな」


 マシュさんも二人の慌てふためき様が、おかしいみたいでちょっと笑っていた。


「ブレンダ商会の筋金入りの商品だよっ。絶大な力を素人でもこの杖一振りで扱えちゃうんだよっ!」


 そう叫んだ後、レイはどこかに連絡を入れて画面に何やら話し出した。その後、なんとか落ち着いたレイはお茶を飲みながら、話してくれた。


「べらぼうに高いから、偽物というか劣化バージョーンも売ってるんだ。そっちは割と手に入るけどアキの書いてる方は機能からしたら本物だから、管理組合の上層部に連絡を入れて探して貰ってるよ。その悪神達が当時集っていたバーバダラス世界にさっきギダ隊が入ったから、手分けして探してるよ」


「千年前だよ?」


 あるのかな。


「ポカレスは場所は覚えてるの?」


「都市バレンザーで転移直後に杖を売っている人と鉢合わせてばらけたって。その時にぶつかった人は探しに戻ったときに見つかったけど、クワントトゥの神の杖は持ってなくて何処にやったか聞いたって。でも分からなかったんで仲間同士の喧嘩になって、その時に随分こっぴどくその時の持ち主がやられたみたいだよ」


 本で確認しながら、説明した。盗んで逃げる際に仕掛けた杖の偽装術のせいで、他の杖と区別がつきにくくなっていたのが原因だ。幾つか転がった杖と形が入れ替わって見えたらしい。


「確かにその時ぐらいに、ブレンダ商会が慌ててたんだよ。ポカレスの名前もその辺りから出てきてたしね」


「へえ……じゃあ、ポースは千年ぐらい前には生まれてたんだね。ポースの持ち主はなんとか生き残って怪我を治してから、えーとその杖の売り主が最後にたどった道を進んだけれど、杖の行き先は分からなかったみたいだよ」


 どうやら、ギダ隊が僕の話を聞いてバレンザーに向かったみたいだ。次の日にギダ隊から連絡があって、千年前はそんな名前だったけど、今は全く違う名前に変わっているみたいだった。

 迷宮化したシンドロンゾフの谷底があるらしかった。どうやら、ここのバーバダラスの神も手がつけれないでいたらしかった。何故こんな事になるのか見当もつかずに、そのまま放置していたみたいだ。手を出せば出す程酷くなるので放置するしかなかったそうだ。

 一週間の準備の後、杖の回収ミッションは始まった。原因が分かっているので処理は順調に進んだ。慎重に杖の力をそぎ、要所を抑えつつ迷宮を進んで現地時間で十日後……ついに行方知れずで、持ち主のいないまま力が暴走していた神の杖が回収された。一件落着である。

 僕はポースの本の後書きに、ギダ隊の冒険を本人達にインタビューして書き加えておいた。


 自主出版の本は売れなかった。まあそれは僕の知名度が悪いと思う。と思っていたら、ポカレスの知名度が良いのに売れないのは宣伝が悪いとマシュさんに言われた。う、確かに……。

 思い切って管理組合の宣伝の部門にどんと、お金を出してやってみた。ポースの本はやっと売れた。千年前に盗まれたクワントトゥの神の杖が見つかった、という話とともに売り上げは伸びた。広告費は半分くらい返ってきた。もう一冊出せば戻るかな? 一応は次の話もドジな話が満載だ。これなら僕と良い勝負に違いない。

 しかし、本の売り出しは待ったが掛かった。どこかにうちの組合の出してはいけない失敗、いや秘密が入っていたらしい。売り上げとは別で広告費の半分以上のポイントが返ってきて、文章のどこかが改ざんされた本が売りにだされた。組合と交渉していたマシュさんの悪い顔が忘れられない。

 しかし、組合の知らない紙の原稿は厳重に家のどこかに保管されていて、マシュさんの言ういつかの為に切り札としておいておかれる事になった。管理組合は次の本もお願いだから事前に見せて下さい、と僕とマシュさんに菓子折りを持ってお願いに来る程だった。大丈夫だろうか?

 売り上げはポースのアストリューで作った口座に振り込まれていて、ポースには筆記分の手数料を貰っている。ポース語の難解な説明を正確に分かるのは、マリーさんに言わせると僕だけならしい。


「良かったね、ポース。マシュさんが交渉してくれたから外に出られるね」


「おおよ。こんなに早く世界を渡れるようになるなんてな。しかし、ここは気に入ってるぜ?」


「うん、そうだね。まだ制限はされてるけど、それでもいくつかは回れるからね」


 ポースが外に出れるようになった。制限付きだけれど移動が出来るようになったのは嬉しい。一緒に行ける場所が増えたのだから。


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