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114 秘湯

 ◯ 114 秘湯 


 新人のコミュニティーに、僕の悪口らしきものが書かれているのを、偶然発見した。僕が、ヴァリーや、ホングにくっ付いて、良いように二人を利用しているという噂だった。確かに僕の書いてるページは二人の作った所に割り込ませて貰った形になっていたから、そう思われても仕方なかった。

 その事にチョッピリ反省しつつ、自分でも何か発信出来るだろうかと考えたが、思いつかなかった。守秘義務に阻まれてどれも難しかった。

 まあ、これはヴァリー達の有名税だと思うしかなさそうだ。ヴァリー達の活躍で、クリッパーランダ世界が管理組合に入ったとか、マーロトーンでも悪神と戦ったとか、色々な噂が飛んでいて、その中で僕の活躍と言ったら、アストリューでの美容レポートぐらいしか評価が無かったし、男のくせにモニターなんて気持ち悪いとか書かれていた。ショックである。

 そして極めつけは新人のランダムテストで一緒だった、他の女性達の悪口だった。ミントさんを始めメイナーさんにナーセイさんケイトさんまで、全員にジグ隊長に媚びてみっともない男だったと書かれていた。確かにジグさんとは仲良くはしようとしたけれど、どっちかというともふもふ達に近づく為だし、他意は全くない。ビギー達には時々会いに行っているし、ジグさんとは家族ぐるみの付き合いだ。もうすぐ、アストリューにも来てくれる事になっている。


「うーん、どうしたら良いんだろう」


 僕が悩んでいると、レイがやってきて、相談に乗ってくれた。


「そんなの、犬の可愛さをちゃんと伝えたら大丈夫だよ。愛犬家は多いからね、きっとこんな噂なんて消してくれるよ」


「成る程、そうだね。ビギー達の可愛さを伝えないといけなかったんだね? 頑張るよ」


 気合いの入った僕はその後、犬と入れる温泉と、そこの温泉の美肌効果を書いたページを追加しておいた。ついでに村の特産であるオオカミの毛皮で作ったマリーさんの、キュートなデザインのコートと小物を載せてからまた更新した。

 更に旅のほんの楽しみとして、犬ぞりの犬達のふれあい方法と、ロッッジの活用法も書き、女性はトイレの為にちょっと苦労するかも、等の情報も入れてまた更新しておいた。これだけ書いたら、犬好きは伝わったはずだ。

 秘湯を愛する冒険家と、犬好きからのアクセスが増えたんだと思う。犬の写真をもっと載せるように要望がめちゃくちゃ来た。が、現地に行って触れ合って下さい、と書いて断っておいた。

 実際に過酷な雪の中の旅に出ようという奇特な新人は、ヴァリーぐらいしかいなかったみたいだった。

 秘湯と言うワードに引っかかったヴァリーは、僕に何がいるのか聞いてきた。なんでまた……と思いつつ、僕の雪の装備一式とマリーさんのコートを貸してあげた。帰ってきたヴァリーは、真っ白な世界を気に入っていたみたいだった。砂漠の人間に、あそこまでの雪景色は珍しかったんだと納得した。


「犬はどうだったの?」


「あ、ああ、確かに統率が取れてた。毛が本当に長くて多いんだな、触らせて貰ったけど、確かに良い感じだ」


 ヴァリーも犬達の事は随分褒めていた。土産に買ってきたオオカミの牙と爪のアクセサリーを見せて、魔法アイテムだからと言って渡してくれた。お守りとして売られていたらしい。ちょっと嬉しい。

 僕の悪口は無くならなかったけれど、犬の可愛さは誰もが認めてくれた。秘湯に興味のあった人は何人かちらほらと、春になってからコーロップ村に訪れたみたいだ。冬場の旅行は新人の懐には厳しいのが分かった。


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