113 擬き
◯ 113 擬き
「アキちゃん達の報告で、管理組合がナハージン国の辺りを管理しているマーザフ神に、人が帰ってこない理由を質問していたわ〜」
マリーさんがそんな情報を教えてくれた。
「そうなんだ?」
「そうだね、ただの一人も帰ってこないのはおかし過ぎる、と管理組合も調査に乗り出したよ。ああいう報告書は出してくれた方が良いよ、第一陣の調査が一番重要だよね。こないだは良い仕事したね、アキ」
「う、うん。ありがとう」
どうやら、全く帰ってこないという不自然な人の流れから、あの国の人達が騙されて連れて行かれているのは調べたら直ぐに分かった。やっぱり心配した通りに、奴隷として売られていたみたいだ。借金を勝手に負わされて、気が付けば奴隷として働かされていた、というのが殆どだったみたいだ。
クリッパーランダ神がもっとしっかりしていれば、そんな事も兄弟同士での交渉次第でなんとか解決したんだろうけれど……。頑張って欲しい所だ。でも、管理組合が交渉した結果、これ以降の連れ去りは認められない、とちゃんと決まったみたいだった。
クリッパーランダ神もその事には怒っていたみたいだったが、気が付いてもいなかったのに……というレイの一言で、自ら正座をして反省文を書いていたらしい。
どうやら、マリーさんとレイは、たまにクリッパーランダ神と話をしているみたいだった。意外と仲良し?
「管理組合と交渉している、もう一人の兄弟のバンゼスタ神は努力家よ〜」
「そうだね、殆どが北の国が担当なのにかなり栄えてるしね。ナハージン国と国交をしていても見劣りしないね」
「へえ、そこは何か名物はあるの?」
「鉱山地帯だからそっちの資源を豊富に抱えてるからね。資源を巡っての戦争なんかも起きてないし。良いと思うよ」
「へえ、鉱山」
「ドワーフとかの妖精族もいるよ」
「小人の?」
「そっか、アキちゃんはゲームのイメージなのね〜? そうね、大体はそんな感じよ〜。最初は打ち解けにくいけど、仲良くなったら気さくで良い種属よ」
「会えるの?」
「分からないわ。作った物を見てその人を判断する事もあるから、まあ、物作りは好きな種族よ」
「マリーさんみたいな感じかな」
「どっちかというと金属加工に細工、鍛冶、石工かしら? 宝石類も彼らに掛かれば魔法石に変える事も出来るのよ。アキちゃんが魔法で最近作ってる金属擬きのアクセサリーとかも得意のはずよ〜」
金属擬き……確かに擬きだけど、便利なんだよ。魔力を通すと形が自在に変わるので、その間に形を整えれる。魔力を通すのを止めると、まあまあの硬さになってくれるので、自分用のアクセサリーを作っては楽しんでいる。
魔力を物質変換して作った金属だから、なんなのか良く分かっていない。形に飽きたら次々変えれるから良い遊びにはなる。なので妖精達にも一塊を渡して魔力での粘土遊びをさせている。何か作っては見せてくれて、だんだんと形が精巧になり妙な置物だったのがちゃんと鳥の形とか、花の形とへ成長している。
「そうだね、折角だから今度行ってみようか?」
「そうね〜、そこの妖精なら、この金属擬きが何か分かるかも〜」
「そうだね。マシュさんも、もしかしたら新しい物質かもって言ってたし」
「マシュがそう言うなら、そうかも知れないね。妖精にお土産としてそれを少し渡してあげたら喜ぶよ、きっと」
「うん、そうだね」
「見本を見ないで適当に作ると、たまにそういう事ってあるよね、分かるよ。でも間違って、毒物を作ったりしちゃった事もあるから、気をつけてね、アキ」
「いっ?」
「それは大変だったわね〜、大丈夫だったの?」
「そうだね、自分の手が火傷するなんて驚いたよ。でも最終的には薄めたら、薬になったから良いんだけど……あの時は本当に怖かったよ」
そんな話を聞いて、気をつけようと心に誓った。物作りと言えば、財布の開発で遅れていたマリーさんとの靴作りもなんとか終わり、妖精の靴が出来上がった。空を歩く効果を付けた物がリストバンドともに完成した。妖精達に渡したら、喜んでいた。ブーツバージョンもあるけれど、サンダルの方がこれからは必須だ。マリーさんが妖精らしいデザインを考案中で、ポースとの歌に合わせて色々考えて衣装も作っているみたいだった。
妖精達の空の遊びが多様化した。僕は益々付いて行けなくなったけれど、スフォラが頑張ってくれてるので、それで良い事にした。




