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112 隙間

 ◯ 112 隙間


 アイデアの持ち込みは出来たが、実現可能かどうかは分からなかった。なのでまずは自作をする事にした。切り替えは僕の得意なところだ。魔法陣を考えて行く。分からなくなったところからマシュさんに相談して一緒に考えてもらい、マリーさんに外側を作って貰った。

 後は空間をどうするかだ。十センチキューブくらいの空間をいくつも作って切り替えれば、一つで十ものコインケースに匹敵する機能を持たせれた。

 マシュさんに、切り替えた時に何処の世界の通貨かを表示させる機能もつけてスフォラと同期も出来るようにして貰った。これで僕のお財布事情は劇的に変わった。


「完成した!」


「アキちゃんのアイデア製品ね〜」


「空間制御は難しかったが、良い経験になった」


「うん、僕じゃ分からなかったよ」


「つまみを回すアイデアは良かったぞ。ボタンを沢山つけるよりは良い」


 切り替えは飾りボタンのように加工した魔結晶のつまみを、自分の魔力を通しながら回すだけだ。魔結晶の色が変わって選べる形だ。この財布のアイデアは組合に持ち込んで製品化する事にした。マリーさんはお財布のデザインを持ち込み、マシュさんは魔結晶に刻む魔法陣の調整と空間の制御装置を、僕は切り替え財布のアイデアを持って行った。

 僕達と組合の小さな事業は始まった。持ち運びの収納スペースでそんな感じの物はあるんだけれど、空間も大きいし誰も手が出ない程の値段だったので、僕達のコストを抑えた物は歓迎された。いわゆる隙間商品だ。組合の販売スタッフが更にコストを下げる為に一色々と素材を一緒に吟味してくれ、組合の通販の商品に入れてもらえる事になった。商品を組合の通販に乗せた時は、特に旅行関係者からの問い合わせが多かった。

 調子に乗って、小さな肩掛けカバンぐらいの物も作った。切り替えは二つしか無かったけれど、貴重品を入れるのに良いからと新人に良く売れた。マリーさんはデザインの試作が出来る度に更新していた。

 ヴァリーには財布の他にショルダーホルスターとポーチ付きのガンベルトを渡した。戦闘時以外は普通の財布入れなんかに使えて、危ない時は銃に切り替えれた。まあ、マリーさんが殆ど作ったけど、少しは手伝ったんだよ? ホングにも切替の財布とカバンを渡しておいた。二人とも喜んでくれた。



「そうか、アキは作る方が向いてるんだな」


 ヴァリーが僕の事業の話を聞いてそう言った。今日はホングのいる星深零の区画で、二人にお昼ご飯を奢って貰っている。


「そうかな、時々しかアイデアが無いけど。でも、この財布はヴァリーのおかげな気もする。あ、それ使ってくれてるんだね?」


 腰のポーチを見て、マリーさんの手作りだと直ぐに分かった。


「ああ。これにしてからは余りじろじろ見られなくなった。銃が威圧を与えてたって言われたよ」


「あー、でも出会った時は持ってなかったよね」


 交流会の時の姿を思い出したが、確か持ってなかったと思う。


「旅行の時だけ持ってると思ったけど、違ったのか?」


 ホングも聞いていた。


「いや、場所によっては預けないとダメなんだ。交流会とかは特に、武器類は外すように言われるからな」


「へえ、知らなかった」


「世界によっては銃器は持ち込み禁止の所があって、そんな時は切り替えでポーチにずっとしているから、面倒が無くて助かる」


「確かこの区画は持ち込み禁止のはずだ。切り替えたら、出せるってことかな?」


 ホングが聞いていた。


「あー、それは出来ないよ。ちゃんと組合の人もそういう危険が無いように、こういう場所では銃器類が入っている場合は、切り替えの部分がそこだけ出来ないように制御されるんだ。マシュさんもその機能に対応するのに、なんか装置を組み直してたから」


「成る程、ちゃんとしてるんだな」


「うん、危険物が入っていたら危ないから、僕達の作ったカバン類は全部中身がチェックされると思うよ。得にこういう所では。ヴァリーのは銃の指定にして登録してあるから、自動で閉じられて勝手に通れるから問題ないよ。切り替え出来ない印がポーチの魔結晶の色に出てるし」


 僕がポーチを指さして言ったら、ヴァリーは首を傾げていた。外に出る時には制御が外れる仕組みだ。


「そうだったのか? 便利だな」


 何となく、説明した時に聞いてない気がしたんだ。細かい説明が苦手なのは分かるけど、もうちょっと聞いて欲しかった。ヴァリーの返事を聞いて、チョッピリがっかりしつつも説明した。


「うん、面倒くさがりだから、そうしといたよ。他にもギダ隊長や、他の隊員達も似た感じのを付けてるから、評判はいいよ」


 スフォラーの武器強化型もそんな感じで、体内から出せない仕様になっている。緊急時は組合の方から制御を解除されるのを待つしか無い。

 収納スペースの様に中の収納空間を大きくすると、どうしてもコストが掛かるのでそこまではしていない。それでも良い感じで靴下とともに便利商品の開発が認められて、組合からの評価は良くなったみたいだった。切り替える為のオリジナルの魔法陣も、組合にまた登録しておいたので、その部分もマシュさんと一緒に報酬が貰えた。僕では届かないところを、二人が補ってくれてやっと出来ているので、良いのかなとも思う。

 その事を聞いたら、アイデアが大事だと二人には言われたので、そうかもと思って気を取り直している。要するに、良い仲間に恵まれてるんだと思う。


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