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111 行方

 ◯ 111 行方


 マリーさんからメッセージの返事が来た。クリッパーランダ世界は組合が転移装置を置いた部分だけだった。後は兄弟神が管理していて、上手く行っているみたいだった。

 つまり、人もお金も全部そっちの方に流れて行ってしまっていた訳だ。四兄弟のうちの一人が管理組合と上手くやっているようで、その紹介でうちと取引を始めたのがクリッパーランダ神だったみたいだ。ナハージン国の辺りを管理している兄弟は、また別のうちの管理組合とは違ったところとの取引をしているみたいだった。同じ世界でもここのルールで管理神が変わるので、僕達は行かない方が良いみたいだ。


「取り敢えず、彼はどうするの?」


 捕まえていた村の人を見て聞いたら、


「放っておいて良いだろう。歩いて戻れる距離だ」


 ヴァリーはなんでもないように言った。


「そうだね、ご飯もあげたし」


 怪我もしてないみたいだったので、大丈夫だろう。


「じゃあ、村の跡地でも探してみるか?」


「そうだね、誰もいないなら、そこを借りれば転移装置が置けるし」


「船が着くあの村が良いのは分かってるが、ちょっとな……」


「そうだね、危険だしね。あ、でも国として成り立ってない所に、置いても意味がなさそうだから、管理組合に一旦、問い合わせた方が良くないかな?」


 ふと思いついたが、人のいない所に置いても意味が無い。


「……確かに意味が無い」


「じゃあ、スフォラで聞いてみるよ」


 僕は管理組合の仕事依頼の事務局に問い合わせた。しばらく待つように言われたので、待っていたら、担当者が画面の向こうに現れて現状を詳しく聞かれた。国の中は調査はしてはいないけれど、僕達の聞いた住民の話では国としては成り立っていないと判断したみたいだった。一応二、三カ所の村の跡地を見てまわって、人がいないかどうかを見て欲しいと頼まれた。新たな依頼として報酬が出される事になった。


「じゃあ、空から偵察するか」


「うん、じゃあ、行こうか」


 三日間程、空から村の跡らしき所を飛んで探した。建物は緑で埋め尽くされて、誰も住んでいない村が三つ見つかった。あの村とかなり離れた所に、彼らと同じくらいのお年寄りの村が見つかった。やはり、ここも誰も帰ってきていないんだと分かった。

 僕達は管理組合の指示で、転移装置を緑に埋もれた村に設置した。比較的形の残っている建物があったのでその建物に設置して、起動させた後に技術者を呼んだ。建物内と外の様子を確認して、補修工事が必要だと行って、技術者は帰って行った。明日には工事に入るので、僕達はそれで帰る事になっている。

 僕はその間、島の内部の映像を編集して、色々と情報を書いて送っておいた。こっちの国の通貨がこの辺りではさっぱりと通じない事や、ナハージン国のいい噂しか流れてない事も書いて纏めた物を、提出しておいた。

 周辺の国では、行った皆が誰も帰ってこないのは、不気味がられてはいた。誰かが良い噂しか流していない、そんな感じにも受け取れたけれど、僕達では何も出来ない。これ以上の人の流出を避ける為に、多分管理組合が何か手を打つだろうと思う。転移装置を結局は誰もいない村に設置したのだから、それなりの対策が立てられると信じるしか無い。


「村があんなだと思わなかったから、巾着袋が作れなかった……」


 帰り際に思い出したので、気になっていた事を掘り返した。


「そういえばそんな事を言ってたな」


「ヴァリー、それの仕分けが出来る?」


 僕は何処の世界の国の通貨かを聞いてみた。半分くらいヴァリーにも分からない通貨になっていた。それはもう、組合のポイントにしてしまった方が良いよ、とアドバイスをしておいた。数えたら、七種類の通貨があった。自身の世界と、ここの通貨、その他の世界だ。マーロトーンの世界の通貨が無いので、分からない方に混ざってないか見てみたらあった。


「ヴァリー、適当過ぎるよ。もう一度思い出した方が良いよ?」


「あんなに行ってたのに。マーロトーンの世界の通貨を忘れるなんて……」


 ホングがチョッピリ落ち込んでいた。いや、落ち込む事無いよ。ヴァリーが大雑把なだけだから。


「アストリューはどんなだったっけ?」


「アストリューは組合のポイントが使えるからないよ」


「そうだったな。それが一番良いな」


 思い出したらしい。


「そうだね。住民は通貨も使ってるから僕は持ってるけど、組合員はポイント払いが普通だよ」


「なんだ、一応あるのか」


「うん。避けた分のお金は布に包んだよ。後で僕と同じ財布と巾着を送るから、それに入れてちゃんとした方が良いよ」


「分かった。これなら軽くなるな……」


 ヴァリーなら、ガンベルトに付けるタイプでも良いかもしれない。いや、かっこわるいか……。マリーさんに聞いてみよう。

 そんな感じで僕達のクリッパーランダの仕事のリベンジは終った。ホングは僕のスフォラーの通信が一番安定しているのが羨ましそうだった。ヴァリーは新しくなった僕の持ち運び用の収納スペースが気になったみたいだ。いや、それよりもちゃんと自分で工夫しようよ、快適さの追究が中途半端な気がするよ。


「うーん、旅のおかげで何かアイデアが湧いてきた。作れないけど……要望として出そうかな?」


 取り敢えずは相談かな? 僕は二人と別れて、アストリューに帰った。


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