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103 至福

 ◯ 103 至福


 夕方近くに小さな中間ポイントのロッジが見えて来た。今日はここで夜を過ごしてから明日また出発だ。皆で周りの雪かきをしてから、各自自由時間になった。キッチンがあったので、僕は適当に持ってきていた食材で料理をした。ジグ隊長が涎を垂らして見て来たので、仕方なく分けてあげた。犬ですか?


「夕食は各自でって、材料は入ってなかったですよ?」


 倉庫にも棚の中にも入ってなかった。


「一食ぐらいは持ってきているかチェックしている」


 温かスープを飲みながら、ジグさんは満足そうに笑った。


「成る程」


 そうだった。テストだったと思い出した。


「ちょっと、自分達だけ食べて良くないわよ? どういうつもりですか隊長」


「一食分くらい、持ってきているのが普通だ」


「……分かりました」


 セクハラ発言のミントさんが引き下がった。が、僕を睨みつけるのを忘れなかった。うーん、女性達とも仲良くしておいた方が良いだろうか?


「持ってきてないの?」


「あるわよ!! 馬鹿にしないで!」


 なんだ、じゃあ大丈夫かな? 後ろにいた女性達の方を見ると困り顔だった。仕方ない。いつものクッキーを出しておやつのお裾分けだと言って渡した。振り返ったらジグさんも欲しそうな顔をしている。……自分は持ってきてないんですか?


「自分の分は持ってきてないんですか?」


「もう食べた」


「はやっ」


 どうやら僕が料理をしている間に、食べてしまっていたみたいだった。明日の朝は早いのでしっかりと毛布に包まって寝袋の中に入り込んで眠った。女性陣がベッドを占領しているので仕方ない。ジグさんも隣で犬達に囲まれながら寝ていた。

 朝、犬に起こされた。寝袋から出たら顔をベタベタに舐められ、笑いかけられた……と思う。


「おはよう、ビギー」


 待ちに待ったモフモフタイムだ。お預けが長かったと思いながら少しずつ触らせて貰った。ふおー、モサモサ、ふかふかだ。至福だ……。

 朝食はまた昨日と同じ冷たいスープとパンだったが、暖めてから食べた。


「あの、昨日はありがとうございました。おかげで助かりました」


 と、部屋から出て来たメイナーさんがお礼を言ってくれた。その横にいたケイトさんも小さくお礼を言ってくれた。


「はい。足りましたか?」


「大丈夫です」


 ケイトさんが笑って答えた。


「昨日は嫌な態度を取ってごめんなさい。私達、話し合って昨日の事を謝ろうって言ってて。でも……」


 メイナーさんが、謝ってくれた。でも、の後は他の二人の態度から何となくは察する。


「ミントさん達に今更隊長に取り入ろうとしているとか言われて……。でも、良くないと思ったから、本当にごめんなさい」


 ケイトさんも反省している、といった顔で謝ってくれた。


「あ、うん。トイレを我慢して、あんな態度だったと思ってたから、気にしてないよ」


「本当? 良かった」


「私も、ごめんなさい。折角だから、仲良くこの仕事を終らせようね」


「そうだね、よろしくね」


 僕達はなんとか仕切り直しをした。この仕事の間だけでもなんとか破綻しないと良いんだけど。

 朝食が終ったら直ぐに出発で、犬達も元気に走り出した。この日の休憩とお昼は女性二人とジグさんと僕の四人が一緒に行動して、他の女性二人は少し離れた位置に座って過ごした。時々、女性達は四人で話し合いもしているからそう悪くない。僕は他の犬達とも少しずつ仲良くなって、すばらしい毛並みをガッツリと味わっていた。幸せ過ぎる……。ブラシを入れたり、餌をあげたりとかなり満足の休憩だった。


「お前な、仕事だと思ってるのか?」


「毛皮に癒される仕事です。最高ですね?」


「荷物運びだ」


「同じです」


 言い切ったら、ダメだこりゃと言われてしまった。


「ところでこの荷物は何を運んでるんですか?」


「それだ、そういう質問が来ないとおかしいんだ!」


 やっと仕事を思い出したかと言った責める視線にちょっと罪悪感を感じていたら、ジグさんは溜息を付いていた。中身は食料だった。雪に閉ざされた村の補給だと言われた。穀物や、調味料が主ならしい。成る程。で、帰りは村の工芸品を積んで帰ってくると説明された。そういう契約みたいだ。了解しました。

 夕方近くに、オオカミの鳴き声がした。


「ちっ、ちょっと急ぐぞ!」


 先頭のジグさんが後ろを確認しながら、走るスピードを上げた。犬達のスピードが上がった。


「みんな大丈夫か?」


「なんとか」


 女性達も頷いていたけれど、さすがに不安そうだった。二日目の夜は一日目よりも大きいロッジだった。食事はそこに置いてある食材で何か作って食べて良かった。今回は女性達が活躍してくれたので、おいしい料理を頂くだけだった。

 ベッドの数もちゃんと揃っていたので、三部屋に別れてその日の夜は眠った。眠る時に、犬達に疲労の回復の魔法を一匹ずつ掛けていった。自分にも光のベールを体に掛けてから眠った。犬達がベールの中に潜り込んで来たので、大きく広げた。毛皮に囲まれて、ほかほかの寝床で眠りに落ちた。


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