101 添物
◯ 101 添物
「もうー、ビックリしたー」
「鳥肌が立った……」
「大丈夫? 二人とも」
話し合いが終ってフォローに向かうと、二人が椅子の上で崩れた後、口々に泣き言が出て来た。
「明石焼を奢るからって集合で、なんでレイカ様と対面になるんだ。冷や汗が止まらなかった」
いつものイケメンぶりが崩れている。
「そうだよ〜千皓くーん、いつも通りのグルメレポートだと思ってたのに……」
「でも引き受けたんでしょ?」
「うん、千皓君もメンバーだって言うから、やる事にしたよ〜、よろしくねー」
さすが沖野さん、もう立ち直っていた。いつものハイタッチを交わした。
「こちらこそ、よろしくー」
レイが、そろそろ董佳様達と帰るというので、そこで四人と別れる事にした。
「ちゃんと間抜けの面倒を見るように言っておいたから、しっかりという事を聞くのよ?」
「うあ? は、はいっ」
最後に董佳様に睨まれながら、いつもの注意を受けた後、四人は戻って行った。
「でも、こんな調査員が置かれてたんだな。知らなかった」
「うん、最近だよ。他にも少しずつ声を掛けてて、増えてるみたいだよ」
「まだ、何か夢みたいだ。神界への繋が出来るなんて思ってなかったし」
「本当だよー、グラスグリーンのブレザーでもないのに、大役だよ? でも、こっちに関しては千皓君の方が先輩だから教えてねー」
「うん、うちの家族を紹介するよ。後、夢縁の候補生も二人いるんだ」
「おおー、後輩になるんだ」
「それは分からないけど、頑張ってるよ」
色々と話をして、休日に家に来る事になった。家族も同じ調査員の二人と会えるのはちょっと楽しみみたいだった。夢縁での友人だとも伝えてあるので、両親は興味を持ったみたいだ。ちなみにカップルだと言ったら、母さんがそれは応援しなくてはと張り切っていた。
休日になって、僕達家族はお出かけでもないのにほんの少しよそ行きの格好だ。そんなに気合いを入れなくても良いのに……。御門さんとトシは、リビングのソファーで寛いでいる。家族はダイニングテーブルを囲んで待っていた。
「御門さん、トシは迷惑かけてない?」
「お調子者なのは分かった」
ちょっぴり表情が渋い感じだ。どうやら暴走しているみたいだ。今度こっそりと様子を見に行っておこう。
「ごめんね? 仲間が出来て浮かれてるだけだから」
「そうね、そう思っておくわ。鮎川君の友達でなかったら殴ってるところだわ」
やけに剣呑なお言葉だ。何をしたのか恐ろしいが聞いてみた。
「何か言われたの?」
「彼女が欲しいアピールしてたけど、私本人を見もしないで、単に恋に恋してる状態なのが痛過ぎるわね。乙女じゃあるまいし」
「う、すいません。重々注意させて頂きます」
「そうして」
隣で僕達の会話を聞いていたトシはすっかりと落ち込んでいたが、いい薬だと思う。
「ダメだよ、トシ。まず人として女性として尊重しないと。御門さんみたいなしっかりタイプは、見向きもしてくれないよ?」
一応のアドバイス付き注意を入れて置いた。ソファーの上で三角座りで顔を膝に乗せて頭を抱え込んだ体制から、小さくトシの分かったという声が聞こえたのでこれ以上はこの場では言わないでおく事にした。
タイミングよく、玄関のチャイムが鳴った。二人が着いたみたいだった。迎えに行って中に入って貰った。
挨拶の後は軽く紹介をしてから、交流会となった。母さんが皆にお茶を入れて、僕はお菓子を運んだ。
「二人は恋人?」
いきなりその質問とは沖野さんらしい。
「違います」
御門さんが間髪入れずに答えた。その様子にトシは心を痛めたみたいで、いつもの調子は出てなかった。まあ、沖野さんと成田さんの腕組みが気になってたみたいだから、トシにはそっちのショックの方が大きいと思うけど……。
夢縁はどんな所だとか、御門さんは事前に聞きたかった事を纏めていたみたいで、色々と質問していた。隣で所在なく座っているトシが落ち着くのは、かなり経ってからだった。
「それで、千皓君が幽霊の担当なんだ」
「うん、そうだよ。疑わしいとかあったら、いつでも呼んでくれて良いよ。電車賃もただだし」
「それは便利だ」
成田さんが笑っている。
「協力出来る事はし合おう。お互いの連絡先も交換しといた方が、何かあった時に良いから登録して置いた方が良いと思うんだが……」
「はい、千皓君のお父さんですよね、下のお名前は聞いても良いですか? みんな鮎川さんだから」
沖野さんが父さんに聞いた。確かに家族の参加だとそうなる。
「あ、そっか。メモで皆に見せた方が良いよ」
そんな感じで交流会は無事に進んだ。
「あ、お福さんだ〜。夢で会わせてくれたまんまだね」
お福さんがリビングに入ってきたので、沖野さんはすぐに気が付いたみたいだ。
「お兄ちゃん、夢以外にも時々どこかに連れ出してるでしょ?」
妹に疑いを掛けられてしまった。まあ、誤摩化しても仕方ない。
「福子さんは神様を癒す為の重要な仕事をまかされてるから、扱いは丁重にするんだよ?」
神妙にそう返しておいた。たまに怜佳さんの膝に乗ってもふられる、という仕事があるから嘘ではない。
「レイカ様の猫好きはこんなところにまで?」
成田さんは相当ビックリしていた。
「何かお兄ちゃんが、お福さんのついでな気がして来た……」
う、鋭い。確かに怜佳さんの場合はそんな感じだけど、他はそんな事も無いんだよ? 多分。そんな感じで和やかに終った交流会は、時期を置いてまた開く約束をした。




