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98 受諾

 ◯ 98 受諾


 グリフォンの雛は可愛かった。よちよちと歩き、親グリフォンの後を付いてまわる姿は微笑ましかった。ばっちりと映像に残しておいた。ふわふわの灰色の羽根をぱたぱたと動かして、機嫌良さげにクワーと泣いてる姿は動物の赤ちゃんらしく、余りにも可愛すぎて心を持って行かれそうになる。いや、妖精達も可愛いからと、涙をのんでお別れをしてきた。

 第二皇子の騒動はすっかりと治まり、毒を入れた犯人の動機は嫉妬からと判明した。もてるのも大変そうだ。犯人である女性の方はヴァリーが巻き込まれてあんな事になったなんて、これっぽっちも悪いとは思ってなかったみたいだ。

 どうせ元々派閥争いがあって、周りが勝手に誤解してそうなっただけだと開き直っていた。確かにその通りなんですけど……少しは反省した方が良いと思う。意中の第二皇子までも苦しめたのだし、と思っていたら、ラークさんの話ではそれも反省はしておらずに、看病出来る事に喜びを覚えていたみたいだ。

 口では良くなるようにと言いつつ、毒を飲ませていたのはセスカ皇子もかなりショックで、しばらく人間不信になってしまう程だったみたいだ。話だけでも恐ろしい……それは噂のヤンデレとかいう生物に違いない。

 だが、第二皇子側とヴァリー側との情報の擦り合わせで、国内の各勢力の動きが分かり、要注意人物等の絞り込みも出来た、と二人の皇子が言っているところは転んでもただでは起きない強さがある。さすがだ。

 ギダ隊とマリーさん対、ネリートさんとセーラさん率いる竜族の闘いが行われている中、そんな話を聞き、ナリシニアデレート世界を後にした。ヴァリーは留守だったので、他の世界で仕事をしているんだと思う。


「またアキちゃんにやられちゃったわ〜」


「抵抗が出来たと思ったんだが……夢だったか」


「ギダ隊長が一番に寝てましたよ?」


「何っ、く、そうか……」


「マリーさんがその次に、後はみんな同時くらいです。でも、何秒とかそのくらいの差ですよ?」


 二人がショックでがっくりしているのを見て、慰めの言葉も入れたけど遅かったみたいだ。


「抵抗どころか、段々効き易くなっているのか?」


「あり得るわ〜」


「……そういえば教えてくれてる人が、そんな事を言ってたかも。癒しに慣れてる人は、受け入れ易くなってるから楽だって、言ってたよ」


「なんてこった! 慣らされてたのかっ」


「いや〜ん、逆効果だったのね〜?」


 二人してショックを受けていた。でも、皆のおかげで寝てる間の操りが巧くなって来たと思う。一カ所に集めて皆で神殿に一列で帰って来るのを見て、ラークさんはいつもこのくらい素直なら良いんだがと、苦笑いをするくらいだ。



「ポースとの契約は結局、あれだけやったけど、ベールを被ったら終わりだったね」


 アストリューで試したら、そんな結果だった。ちょっぴり残念だけど仕方ない。魂を守る為にすべてから遮断して仕舞うのだから仕方ない。魔結晶で維持する闇のベールはやはり別物になるみたいだ。


「一瞬だったな。まあ、そんなの気にしないぜ?」


「そうだね、友達だから契約なんか要らないよ。でも、カシガナとの契約は切れないのに変だよね……」


「あれ? 言ってなかったっけ? 死んだ時には切れてたよ。でも、紫月もカシガナもちゃんとその痣と繋がりで、しっかりとアキを認識してるからね。問題ないんだよ」


 レイが説明してくれた。どうやら紫月との縁は、かなり深く刻まれてるみたいだ。何度途切れても、ここにいる間は僕を捉えているみたいだった。


「知らなかった……」


 僕の左手首にある痣の辺りをもう一度見てみた。


「アキも紫月の事が気になってるし、繋がりはお互いに求め合ってだからね……契約とはまた違う繋がりを築いてるよ」


「じゃあ、それを目指そうか」


「勿論だ! ところでまた余興を頼まれてるんだが、明後日は開いてるか?」


 ポースの友人みたいだ。紫月も誘って行く約束をして、曲目を決め、軽くリハーサルをしてレイにチェックして貰った。


「最近はアキの踊りも見れる感じになって来たね」


「本当?」


「ポースとのリズムがあって来たんだね。その調子で行けば、契約無しでも通じるようになるよ」


 レイに励まして貰って、ちょっとやる気が出て来たかもしれない。


「そうなんだ。頑張るよポース」


「おう! 俺様もやるときはやるぜ!」


「みんな仲良し?」


 紫月も歌うのが楽しそうだ。


「うん、そうだね」


 こんなに楽しく過ごせるのも皆のおかげだ。ずっとこんな日が続くようにしようと思う。皆と一緒にいられればそれだけで良い気がする。


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