表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話 映画

 花吹が転校してきて一ヶ月経った。クラスにもだいぶ溶け込んでいて、俺はあの日以来一度もしゃべる事は無かった。俺とあいつに接点なんか一つもないし、あいつは優等生演じているわけだからな・・・。

「真、明日暇?」

『ん・・・?』

いつもの様に垣野が俺に話しかけてきた。こいつはまだ花吹に惚れているらしい。

「あのさ、明日映画でも行かない?」

『無理。』

「お願い!やっと花吹さんと一緒に出掛けられるんだ。こんなチャンス滅多にないだろ。」

垣野が必死で頼んで来る。垣野はあれから必死で花吹にアタックしていたが、なかなか近づけなかった。どうせ今回だって俺を使って近づけただけだ。垣野は俺と親友だと思っているらしく、よく俺を使って女の子に接触している。そして、遊ぶ約束をしてくるのだ。まったく、お前に利用されるこっちのみにもなれっての、バカ。

『で、他の女は?』

「聞いて驚くなよ!中野芙美!」

『中野芙美・・・誰だそれ?』

「真、知らないの?ほら、同じクラスのめっちゃ美人で超モテルやつだよ。」

『ふーん』

中野・・・ってやつも俺に気があるのかぁ?・・・たぶん、俺が普通の男子だったら嬉しいだろうけど、あいにく俺は普通じゃないからなぁ・・・。

 垣野は必死で俺を説得させた。しかたなく俺は垣野が引く様子もないしウザイので、行くことにした。まぁ、花吹に興味があったということが一番の理由だったが・・・。垣野は早速、中野のところへ行った。俺はタバコに火をつけた。また、一人きりの屋上・・・。俺は大の字に寝転んだ。今日の空は灰色がかっていた。

『ハァー・・・』

銜えていたタバコを左手で持って、大きくため息をついた。その時、誰かが屋上にやってきた。どうせ垣野だろうと思い、俺は寝転んだまま灰色の空を見上げていた。すると、目の前に女の顔が現れた。

「なんだ、あんたか・・・。」

その顔は花吹の顔だった。俺はビックリして起き上がった。

「ね、タバコ頂戴!」

花吹が手を差し伸べる。

『お前のキャラには会わないぞ。』

俺は笑ってタバコを取り出した。花吹も笑いながら俺からタバコを受け取った。

「ね、あの人に言っといてよ。私はあなたに興味ありませんって。」

垣野のやつかわいそう・・・。

『自分で言えよ。』

「そういうキャラじゃない。私優等生だし。」

花吹はタバコを吸いながら俺を見た。俺はそれを聞いて吹き出してから、花吹きの銜えているタバコを奪った。

『じゃあ、これは何?』

花吹は笑って答える。

「タバコだね。」

そして俺からタバコを奪い返した。美人で頭のいい花吹が俺の隣でタバコを吸っている。なんだか変な

気分だった。しばらく二人でいると、足音が聞こえてきた。花吹はタバコを取ると、足で踏み潰して校庭に投げつけた。すると、垣野が来た。花吹は無言で屋上を去った。垣野は俺を見た。

「え・・・っと、何してたの?」

『別に・・・。』

俺はタバコを吸いながら相変わらず灰色菜空を見上げた。垣野もタバコを取り出し、火をつけた。

「なぁ、真。お前、花吹さんに惚れてる?」

俺はおもわず吹き出した。

『お前、バッかじゃねぇ?俺があんな変な女好きになるかよ。』

「あ、ならいいんだけど・・・。絶対だな!」

『頭、大丈夫?』

俺は腹を抱えて笑ってやった。垣野は顔を赤くしながら、ブツブツ

「だって気になるじゃん」

とか文句をタラタラと・・・。

 俺が女なんて好きになるわけが無い。あんな変な女なんて・・・・。


 その日、俺がいつものように爆音でMDを聞いていると、中野が話しかけてきた。

「ね、友枝君っていつも音楽聴いているけど、どんなのが好きなの?」

やけになれなれしいやつ。俺は最初のうち得意の無視をすることにした。

「私も音楽好きなんだ。インディーズとか聴く?」

中野は垣野同様一人で話し続けた。

「私が好きなバンドもインディーズでさ、知っているかな?“ザ・ハリケーン”」

俺はそれを聞いてハッとした。

『知ってる。』

「本当に?私あれ、大好きでね!めっちゃ良くない?」

それは俺も大好きなバンドだった。あれだけの歌唱力、人気があるならメジャーデビューしてもおかしくないのに

なかなかメジャーデビューしないバンド。実力はすごいあるのにもったいない。

「どの曲が好き?私ゎねぇ・・・・。」

『今聴いてるやつ。』

俺は中野が言う前にそっけなく答えた。中野はそれから少し黙って、

「明日、映画楽しみだね!」

と言う置き台詞と共に、その場を離れていった。美人な中野さんが俺に話しかけてくることなんて初めてだ。もっとおとなしそうなタイプかと思っていたのに結構積極的な女だった。俺はMDをひたすら聴いていた。


 次の日、映画を見に行くことになっていたのに、俺はだいぶ寝坊した。起きたときにはもう、待ち合わせの時間を過ぎていた。俺はそれでもマイペースで仕度を終えた。丁度仕度を終えたころ、垣野が俺の家に来た。垣野は家の下で、俺に聞こえるくらい大きい声で怒鳴った。

「何やってるんだよ真!時間とっくに過ぎてるぞ!」

俺は窓から顔を出した。すると花吹と中野が楽しそうにしゃべっていて、垣野が怒って立っていた。

『悪い、寝坊しちまってさ』

俺はそういうと玄関に行った。玄関を出ると、三人が並んで立っていた。

 垣野はいつものように、すそのながいTシャツにダボダボのズボンをはいて、髪の毛をこれでもかってほど高くセットし、首や手首に金属をチャラチャラと付けて・・・なんちゃって不良系ファッションだ。おまけに似合うはずのないサングラスをしている。その横に精一杯おしゃれして来ました風な中野がいた。胸元がドカーッと大きく開いたブイネックに、パンツみてください。と言っているような超ミニスカート、この日の為に買いましたと言わんばかりの真新しいハイヒールを履いていた。そんながんばっている二人のすぐ隣に、一人がんばっている雰囲気の見えない花吹が立っていた。地味なロゴのはいったTシャツにジーパンにビーチサンダル・・・。でも、こんな変な組み合わせ普通じゃへんてこりんな格好になりそうだが、それをみごとに着こなしている花吹・・・。センスはあるのかな・・・。まぁ俺も人のこと言えた格好じゃないけど・・・。

 俺は三人の顔を代わる代わる見た。垣野がすぐに口を開く

「お前さぁ・・・もうちっと時間守ることできないかねぃ?」

『あー悪ぃ悪ぃ。んで、何処行くんだっけ?』

絡んでくる垣野の話を流しながら、女子二人に話を振った。

「もう、友枝君。結構待ったのよ、私たち。謝ってくれてもいいんじゃないの?」

と、もちろん花吹ではなく、中野が俺をすこしキツイ目でみてくる。まぁ、これも中野の作戦かな?

『ごめんなさい。中野さん、花吹さん。悪かったです。』

俺はペコリと頭を下げた。すると、ふくれっ面だった中野はみるみる元気になり

「友枝君って素直―。いいよー許す!ね、幸ちゃん。」

中野は花吹に話をふる。花吹は面倒くさそうな顔を一瞬してから、いつも教室でみせる優等生の顔になった。

「そうだね。いつまで、グチグチ言っていても仕方ないし、そろそろ移動しない?」

その一言を聞き、俺たち四人は、映画館に向かって歩き出した。

 映画館に行くまでの道、中野は俺の隣を一時も離れようとしなかった。また、垣野は花吹の隣を離れようとはしなかった。なので、俺と中野が先を歩き、垣野と花吹がそれに続くような形になった。正直、俺は中野より花吹と話がしたかったが、しかたなかった。まぁ、中野もよく見ると結構美人だし・・・彼女にするくらいなら丁度いいかもしれな。俺は中野を彼女にするため、変心することにした。

「ね、友枝君、私ね、もーっと友枝君と仲良くなりたいから、真って呼んでもいいかな?」

中野は突然そう言い出した。女子ってやつはだいたいそうだ。ファーストネームで呼び合うだけで、仲がいいって

勘違いを起こす。だから、俺は、ファーストネームで呼ばれることは別にかまわないが、自分からはファーストネ

ームで呼ばないよう心がけている。

『おう・・・。』

俺は少しやる気のない返事を返した。それでも、中野は満足したらしく、

「本当?やったぁ!じゃぁさ、私のことも・・・芙美ってよんでくれると嬉しいなぁ」

と、精一杯甘い声をだして、中野が俺を見る。

『気が向いたらね。』

俺はそう言って、中野に(作り)笑顔を見せる。中野はそれにすっかり感激して、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。ったく・・・つくづく単純な女っ。

 映画館に着くと、四人でチケットを買う係りと、飲み物とポップコーン(定番でしょ)を買う係りに別れた。さすが、土曜日の昼間の映画館は超満員。人々がごった返している。アニメ映画を見に来た子供づれのパパ、恋愛映画を見に来た彼氏のいない女子高校生、美少女アニメ映画を見に来たオタクヤロー・・・・いろんなやつらがそれぞれの目的を果たすべく、ここにやって来たのだ。ま、俺たちもその一人になったわけだ。係り決めは公平に原始的なグッとパーで別れましょっ・・・ってな感じで別れ、俺は花吹とポップコーン係になった。

『じゃ、垣野はメロンソーダで、芙美(今だけね)はオレンジジュースでいいの?』

俺が二人に問うと、中野は満面の笑みをうかべた。

「うん!ありがとう!」

垣野は親指を上げて、OKサインを出した。

『んじゃ、花吹行こう』

俺は花吹の手を引っ張って映画館にある売店にならんだ。キャラメルポップコーンの甘ったるい香りが広がっている。その香りで頭がおかしくなりそうになりながら、俺は花吹の手を握って並んでいた。

 売店には長蛇の列が出来ていて、なかなか俺たちの番が来そうにない。ふと花吹が、俺の手を振り払った。

「手、いつまで握っているつもりだったの?」

花吹きは冷たい目で俺をにらみつける。その顔はもう、優等生ではなくなっていた。

『いつまでも』

俺が冗談交じりで言うと、花吹はそっぽを向いた。それから、また俺の顔を見てきた。

「中野さんといい感じじゃん?」

意外な言葉が花吹の口から発射した。

『ん?んー』

俺はあえて、曖昧返事をした。

「付き合うの?」

花吹は唐突に、なんの感情もないような声で聞いてきた。

『さぁね・・・。つーか、お前に関係ないでしょ。』

そう言うと、花吹は何にも言わなくなった。まっ・・・まさか・・・花吹も・・・俺のことが・・・。なーんてあるわけないか。そーこーしている間に、俺と花吹は長蛇の列の一番前に来ていた。

「いらっしゃいませ。何になさいますか?」

売店の女の子が俺の顔もろくに見ようとせず聞いてくる。

『あ・・・花吹飲み物は?』

「アイスティー」

『えーっと・・・メロンソーダとオレンジジュースとアイスティーと烏龍茶とキャラメルポップコーン二つください。』

俺がのんびり注文を言うと、レジの女の子は目にも留まらぬ速さで料金を叩き出す。その間、隣にいた男がポップコーンや飲み物をそろえている。

「合計千六百五十円になります。」

俺はポケットに手を突っ込んで財布をだし、二千円取り出した。レジをすばやく打ち終えた女の子はすぐさま男の助けに入り、またまたすばやい動きで一気に飲み物とポップコーンをそろえると、俺から二千円をもぎ取り、二百円をすぐさま渡して、次の客の注文をとった。俺は飲み物を四つ抱え、花吹はポップコーンを二つ持ち、中野と垣野のいる場所へと向かった。

 四人揃うと、チケットと飲食物をそれぞれ交換した。垣野と中野は上手く作戦会議をしたらしく、映画を見る座席は垣野、花吹、中野、俺なった。映画が始まるまでまだ十分あったので、俺たちはロビーにある椅子に座って、話をした。ま、ほとんど中野と垣野がしゃべっていた。

「ね、友枝君。好きなことかいるの?」

垣野とのバカトークを終えた中野が俺のほうを向いた。すると、垣野がまた口を開いた。

「あーこいつね、たぶんいないよ。つーか、こいつ、恋とかしたことないと思うよ。笑」

いつものように、おちゃらけていた垣野を中野はキッと睨みつけた。

「垣野に聞いてない。」

よく言った中野!さすがじゃん!俺はそれに気をよくし、中野ににっこり笑いかけた(ボランティア)

「んー・・・今はいないけど・・・そのうち出来るかもしれない。」

中野は俺の言葉を聞くと、顔がパァッと赤らんできた。そんな中野の隣で、一人黙々とポップコーンを頬張っている花吹がいた。

「おい、映画始まる前に、ポップコーン全部食う気かよ!」

俺が熱い視線を送ってくる中野の目を振り切って、花吹を見ると、花吹は俺の顔をジッと見てから、口に頬張ったポップコーンを飲み込んでから口を開いた。

『私・・・垣野君より、友枝君の方がいいな。』

ぇ?こいつ何言い出すんだ?俺があっけに取られていると、すかさず中野がフォロー?に入った。

「もーそんな話してないって・・・この子天然だからごめんね。」

中野は花吹の頭を軽く叩いた。その時、俺は思いもかけない言葉を発した。

「じゃ、俺と付き合う?」

俺の発言に垣野と中野の動きが止まった。ただ一人平然と花吹が俺の顔を見た。

『いいよ』

ぇ・・・?ぇえっ?ええええ?えええええええ?予期せぬ出来事に俺までも動きが止まった。花吹って・・・え?しばらく俺たちは固まったまま動くことが出来なかった。ただ一人花吹を除いて。

『あ・・・もうすぐ映画始まるね。急ごう』

花吹の言葉に俺たちは我に返って取りあえずシアターの中へ入っていった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ