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第1話 出会い

 あいつと付き合い始めて二ヶ月たった日、俺はあいつに振られた。もともとあいつから告ってきたんだから、俺は別になんとも、俺も、もうそろそろ終わるなと感づいていたから、悲しくなんてこれっぽっちも、思っていなかった。人はそんな俺のことを冷めているとか、強がりとか言うが、そんなつもりはまったくない。第一、俺は今まで、本気の恋愛なんてしたことなかったし、したいともおもってかった。彼女なんてただ、格好付けのために作るものだと思っていたし。ふられても、すぐに違う彼女が出来るし・・。それに別れを拒むなんて格好悪いこと、俺のプライドが許さないし・・・。だから、俺に普通の恋愛なんてできるわけ、ないんだ。

 

 「え?友枝くんと別れちゃったの?」

「うん。何か、付き合ってみて、真の性格よく分かった。真は、最悪だよ。性格超悪いし」

昨日、俺のことを振った女が、もう俺の悪口を言っている。俺は、軽くその女を睨んだ。女たちは、「ウザッ」と、文句を俺に聞こえるように言ってきた。何だよ・・・。俺にどうしろと言うんだ・・・。俺は少し腹を立てながら自分の席に着いた。

そんな俺の所に、うるさい奴が来た。俺の席の前に座っている、垣野英。

「何々?お前、また振られたの??でも、今回は結構続いたなぁ・・・。」

垣野は何かと俺についてくる。ウザイ奴だ。

「でもいいよなぁお前は、何回振られても、すぐにまたかわいい子に告られて、彼女作っちゃうじゃん。俺なんて、今だ、付き合ったコトが無いという記録を持ってるからな。本当、悲しくなるよ。」

落ち込む垣野に、俺はさらに追い討ちをかけた。

『お前、顔直さねぇと、無理だろ。』

「そんなこと言うなって、俺だってがんばってるんだぞ!彼女だってそのうちできるさ。」

おいおい・・・大丈夫かよ。本当にそう思っているのか?鏡見てみろよ。俺は垣野と話しているのがあほらしくなり、席を立とうとした。

「おい、もうすぐ予鈴鳴るぞ、座れって。」

俺は時計を見た。時計の針が、八時二十九分をさした。俺は仕方なく席にとどまった。それと同時に予鈴が鳴って、担任が教室へ来ためがねを掛けた何処にでもいるような脂汗の吹き出す額を持つ、小さな男だ。それに続いて、一人の女子が現れた。学級会長が「起立」と号令を掛けるけれど、一番後ろの俺の席は立たなくてもバレないので、俺はふてくされて座ったまま動かなかった。すると普段はまったく気付きもしない担任が、今日はどういうわけか、座っている俺を見つけた。そこですかさず、担任の怒鳴り声。

「おい、友枝、きちんと立て。」

ちっ、ついてねーな・・・・。俺はしぶしぶ立ち上がって皆に合わせてペコリと小さく頭を下げた。

「着席」

学級会長の声。でもまぁ、その声がしたときには俺の足は机の上に乗っていた。担任がなにやら話を始めた。俺が机の上に足を乗せ、腕を組でいると、また担任の怒鳴り声。

「友枝、聞く気がないなら、出て行け。」

ったく、怒鳴ることしか出来ないのかよ。毎度毎度ご苦労様。俺はその言葉通り、あくびをひとつしてから、教室の後ろのドアを開けた。俺の後ろに、当然のように、垣野が付いてくる。うっとうしい。

 俺はその後、いつものように屋上へ行った。垣野も着いてくる。屋上に着くなり、垣野は話を始める

「なぁ、さっきの転校生、まじかわいくない?」

転校生?俺は担任の話を全然聞いていなかった。だけどまぁ、転校生っていうのは最初に担任と来た女子のことだろう。でも、よく見ていなかったので、かわいいかなんて分かるはずないが。けれど垣野は真剣な顔をして俺を見た。

「俺、あの子に一目ぼれした!!マジかわいいもん。お前あの子に手、出すなよ。」

はぁ?バカ?つーかバカ?俺が女に手を出すわけ、ないだろ。俺は垣野の言葉を無視して空を見上げた。雲ひとつない青空が、目の前に広がっている。

『垣野、タバコは?』

俺が垣野にいつものように左手を差し出すと、垣野は制服の裏ポケットから、笑顔でタバコをとりだした。それを一本貰い、俺は持っていたライターで火をつけ、ふかし始めた。垣野も俺の隣に座ってタバコをふかした。俺は空を見上げた。真っ青な青空、雲1つない。その青空が俺たちのタバコの煙で灰色に染まっていく。毎日毎日同じような日々、俺はいったいなにをしてるんだろう・・・。

 俺は屋上のコンクリートの上に仰向けになって寝そべった。右手に持っているタバコの煙が俺の顔に当たる。なんだかムシャクシャしてきた。俺はタバコをコンクリートに押しつぶした。垣野もタバコの火を消した。

「なぁ真、そろそろ教室戻んねぇ?」

垣野が寝ている俺の顔を覗く。俺は空を見上げながら考えた。

『まだいいや、お前一人で戻って。』

垣野は、俺の顔をもう一度見てから立ち上がって、

「そんじゃ、お先に。タバコは置いておくから。」

と言って、垣野タバコを俺のすぐ横に残して屋上から消えた。俺は一人で屋上に残った。風が俺の体を通りすぎる。俺はしばらく空を見上げていた。はぁ・・・俺は何をしたいんだろう・・・。真っ青な空が俺を孤独にする。俺にどうしろというんだ。俺が干渉に浸っていると、階段を誰かが上がってくる音がした。俺は急いで起き上がって、証拠隠滅のためタバコの吸殻を屋上から裏の畑投げて、垣野が置いていったタバコを裏ポケットにしまった。

その時、屋上のドアが開いた。やってきたのは、見知らぬ女だった。その女はいかにも優等生って感じの風格をしていた。その女は俺に気づきもせず、屋上のフェンスをみつめていた。女はしばらくそうしていると不意に、フェンスに向かって真っ直ぐ歩いき、フェンスに手をあて、ため息を一つついた。なにしているんだ?そう思ったとき、女はフェンスをよじ登った。俺があっけに取られている間に女はフェンスを登りきって、フェンスの向こう側へ行った。俺は女のいるところへ向かった。女は今にも落ちそうな場所に座っている。俺はしばらく女の様子を見ることにした。女はずっと座ったまま、何かを見ていた。ふと、女は立ち上がった。その時、女は前に進んだ。え、こいつ自殺する気?俺は女の方へ手を伸ばした。その時、女の片足が屋上から離れた。俺はフェンスの隙間から腕を入れて、女の腕を引っ張った。間一髪で、女は落ちることなく、フェンスに激突した。女は一瞬何が起こったのか解らず、フェンスに激突した頭を抑えていた。しばらく、俺と女は固まったまま動かないでいると、女はやっと状況を把握し、俺の顔をみた。

「・・・誰?」

女が口を開いた。その顔、どっかで見たような・・・あ、今朝の転校生?

『お前、何してんの?転校生だろ。』

女は俺を睨みつけてから

「何で止めんだよ?もう少しだったつーのに・・・。ウゼェ男。」

女の風格からは考えられない口調。

『はぁ?お前、死にてぇのか?』

何考えているんだコイツ・・・。俺も何回か、飛び降りようとしたことはあったが、こんな昼間から飛び降りるなんてどうかしているだろう・・・。

「そう、死にたいの。だから邪魔するな。」

女はさらにきつい目をして俺を睨む。俺はムカッときて女の腕を思いっきり引っ張った。女の体は思いっきりフェンスにぶつかって、鈍い音が響いた。

「イタッ・・・何するの?」

『お前、頭大丈夫?迷惑なんだよ、こんなところで自殺されたら、場所と時間、考えろって。』

俺は女の腕を離した。女は俺のことを睨みつけている。俺も女を睨みつけた。女は突然、俺の視界から消えた。下を見ると、女はしゃがんでいて、目からは涙が流れていた。俺はとりあえず女の目線に合わせてしゃがんでみた。俺はフェンス越しに女に話しかけた。

『ねぇ、お前なんて名前?』

女は俺を見ようともせず、そっけなく答えた。

「あんたから教えて。」

『俺?友枝真。お前は?』

「花吹幸。」

『ふーん・・・何があったか知らないけど、こっち来て、一緒にしゃべろうぜ。』

俺はそういいながら、垣野から貰ったタバコを裏ポケットから取り出し、火をつけた。花吹は、

「あ、私にも・・・。」

と、言い、手を差し伸べた。こんな優等生らしい奴が・・・・。タバコなんて吸えるのか?

『こっちに来たらな。』

俺がそういって、タバコの箱顔の横で揺すぶると、花吹はものすごいスピードでフェンスを乗り越え、こっちに来た。

「おい、タバコ。」

花吹は俺に笑顔で手を出してきた。俺は仕方なくタバコを花吹に差し出した。花吹はタバコを一本抜いて、俺からライターを奪うと、煙草に火をつけた。俺と花吹は並んでフェンスの前に座って、タバコを吸った。モヤモヤしていた心がスッキリしてくる。

「ね、友枝だっけ?あんたって本当おせっかいなやつ」

花吹はタバコを吸いながら俺の顔を覗く。

『そりゃ、どーも。』

俺は嫌味ったらしく答えた。タバコの煙が俺と花吹を包み込む。しばらく俺と花吹は黙ったままタバコをすった。たまに心地よい風が俺たちの間を通り過ぎた。

「さってと、教室戻ろうかな。おい、友枝、サンキューな。」

座っていた花吹は急に立ち上がって、俺にニカッと笑顔をみせた。そして持っていたタバコを屋上のアスファルトに落として、靴で踏み潰した。そして、屋上を後にした。おいおい、吸殻最後まできちんと始末しろよ。生徒指導のやつに見つかったらどうするんだよ。

スカートは膝丈だし、セーラー服のスカーフもきちんと着用、靴下も白のハイソックス。髪の毛だって黒のショート、おまけに眼鏡をかけている。どうみても優等生としかみえない花吹・・・。そのギャップに俺は少々驚きを覚えた。

  花吹が屋上から去った後、俺は1人でタバコを吸いながら青空を見上げた。すると、校庭から甲高い女子たちの声が聞こえてきた。一時間目が始まったのか・・・。俺はタバコの火を消して、屋上から出て行った。階段を下りて行くと、不良っぽい人たちがたまっていた。俺が通ると、そいつらは「よっ!真」「おはよー」など言いながら通り道をつくってくれた。その中を俺は通り過ぎ、廊下を歩いた。各教室からは、うるさい先公の声が聞こえていて、たまに茶々をいれている男子の声やそれを笑う女子の黄色い声も聞こえる。そんな中を俺は教室に向かって歩いた。教室の前についた。なにやら女の先公が高い声を上げて話している。俺は後ろのドアを開けた。ガラッ。

一瞬、教室中が静まりかえった。垣野が俺を見て

「なんだ、はえーじゃん。今、国語だぞ。」

と言い、ニカッと笑った。国語の先公は、五十代くらいのババァ。ババァは、俺を気にせず、授業を再開した。俺は自分の席に着いた。前に座っている、垣野が後ろを向いてきた。

「な、あれが転校生。かわいくない?だけど、優等生っぽくてさ。俺らのガラじゃねえよな。」

垣野は教室の中心にある席をさした。座っているのは花吹。さっき会ったときと雰囲気が違い、とても落ち着いたお嬢様って感じだった。

「花吹さん、前の学校ではスピーチがすばらしかったと聞きましたが、この部分を読んでくれません?」

先公が、花吹を期待の眼差しで見つめると、花吹は嫌な顔一つせずに

「はい」

と言って、言われたところをスラスラと読んでいた。優等生?さっきとだいぶ雰囲気違うんですけど。花吹が読み終えたあと、クラス中から拍手がまき起こった。

「ぅわー・・・やっぱ、優等生だったか。」

垣野が悲しそうに言う。垣野は学年一のバカだからな。俺は机の中からウォークマンを取り出した。足を組み、机にのせ、音楽雑誌をバッグから取り出して広げた。俺の好きな音楽雑誌。

「友枝君、授業受ける気がないのなら出て行きなさいって、いつもいっているでしょう。」

うるせーババァだ。俺は無視して雑誌に目を通した。ババァはあきらめて俺にかまわなくなり、また授業再開。すると垣野がまた俺のほうを向いた。

「なぁ、ウザくねぇ?あのババァ。」

ウザイ?お前の方がウゼェよ。いちいち後ろ向くな。俺は垣野を無視して雑誌から目を話さなかった。

 その後も、花吹の活躍は凄まじかった。本当に優等生だ。秀才?と言った方が言いのか。英語では外国人のような発音、音楽でもきれいな歌声、体育も運動神経抜群。数学はややこしい問題式もスラスラこたえてしまう。その他、家庭科も、美術も、社会も、理科も、花吹の活躍はそこを知らなかった。

「すげぇな、あの転校生。」

垣野はあっけにとられている。俺も呆然としているだけだった。

「あ、でも、一番凄いのはお前じゃねぇ?こうみえて、頭いいしさ。」

垣野が俺の顔色を伺う。そう、俺がこんなのでも先公や不良がそこまで俺に言ってこないのは、この風格だけでなく、俺の学力のおかげでもある。テストはいつもトップだし、運動だって飛びぬけて出来る。(自分で言うのもなんだが)そんな俺から見ても、花吹の活躍は凄いと思った。

「な、転校生って、名前なんていうか知ってるか?」

垣野が答えを期待しないで俺の顔を見た。

『花吹』

俺はボソッと言った。

「え?お前知ってたの?」

垣野が驚いて目を丸くした。驚くのも無理ない。俺はクラスの奴らどころか、今まで付き合ってきた女の名前だって覚えていない。

『さっき、お前がいなくなってから屋上に来た。』

俺はそれだけ言って、また垣野を無視することにした。花吹か・・・、今まで会ったことのないタイプの人だった。


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