筋肉は漢の心を動かせる
UMA
「あれ、部長は?」
部室に入って、部長がいないことに気づいた達也が他の部員達に尋ねた。
「部長ならこの通りだ。どこに行ったか賭けてみるか?」
タキシードが一枚の紙切れを達也の前に突き出した。
「ん?」
そこ書いてあったのは、
“旅にでます。探さないでください。ほとぼりが冷めたら戻ってきます。追伸、尻拭いよろしく”
という文章。
「何これ?意味分かんねえんだけど」
達也が顔をしかめる。
「ああ、俺達にもさっぱりだ。とりあえずキャンプでもしながら考えよう」
天斗がそう言ったとこで、ズシズシと床が揺れ始めた。
「?」
訝しげに達也が音がする方向を見て首を傾げた。
こちらに近づいてくる。
「なんだ?」
音が止まった。
「む?このドア、どうやって開くのだ?押すのか引くのか書いていて欲しいものだ」
「はぁ、兄さんはほんと馬鹿だなぁ……。どうせ、ドアなんかいずれ朽ちるんだ。いつかの僕の熱意が朽ちていったようにね。蹴破ってもかまわないさ」
とても野太い声が扉の向こうから聞こえてくる。
「……?」
首を傾げる部員達。
「む?そうか、では遠慮なく、いくぞ!!マッスルレボリューション(筋肉革命)!!」
扉が吹き飛んだ。
「え?」
部員達が固まる。
「ここの部長はどこだああぁぁぁっ!!」
「兄さん、落ち着きなよ。そんなに大声をだすと、声が枯れるよ。そう、あの日の僕のようにね」
二人の筋骨隆々が頭をかがめて部室へとはいってきた。
二人を見て火怒ポンは呟く。
「……漢のロマンだ」
「そうなのっ!?」
達也は心底嫌そうな顔をした。
「む?部長はいないようだな。仕方があるまい、ならば君達に手伝ってもらおう!!」
首に赤いスカーフを巻いた筋骨隆々がそう宣言する。
「何をだ?」
「実はここの部長には近々我々筋肉愛好会が開くマッスルキングダムに参加してもらう予定でな。今日はその説明をしにきたのだよ」
「断る!!」
達也は即答した。
「ふむ、そうか。是非とも参加したいか。おっと、名乗り遅れたな」
「無視された!?」
嘆く達也を放っておいて、筋骨隆々は続ける。
「我が輩のあだ名は、前ムッキー!!」
「僕は後ろムッキー……」
そこで二人で筋肉を強調するポーズをとって一言。
「二人合わせて前後ムッキムッキ!!(……)」
いつもなら「意味分かんねえよ!!」とかツッコむ達也なのだが、この時ばかりは、ひきすぎて言葉も出なかった。
「あっ、もうこんな時間。俺、魔王倒さなくちゃ」
いち早く反応した雄輝が脱出で逃げ出そうとする。
だが、行く手を前ムッキーに妨げられた。
「おや?こんなところにもやしっ子が。どこにいくのだ?駄目だぞもっと鍛えなくちゃ」
「い、いや、俺勇者だから!!格闘家じゃないから!!」
ジタバタと暴れる雄輝。
「ほう?」
「証拠だってあるんだぞ!!ほら、バランスの良さが売りだ!!力だけじゃない」
そう言って雄輝が携帯ゲーム機を取り出した。
画面には勇者のステータスとグラフィックが映っている。
「ふむ、駄目だな。貸してみろ」
前ムッキーは雄輝のゲーム機を取り上げた。
「ちょっ!?」
「マッスルレボリューション(筋肉革命)!!ほれ」
渡されたゲーム機の画面にはやたらムキムキになって、ステータスが力だけずば抜けて後はカスになった勇者、いや、格闘家が映っていた。
「ああああぁぁぁぁぁぁっ!?何やってくれとんじゃあぁぁぁぁぁぁ!?バイオ○ザードのク○スじゃあねぇんだよ!!はっ!?あいつも5でいきなりムキムキになった!!まさか!?」
ニヤリと笑う前ムッキー。
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁっ!?」
俺の努力があぁぁぁっ!?っと叫び、床に崩れ落ちる雄輝を尻目に前ムッキーは熱心にゲーム画面に話しかけている東吾のゲーム機も取り上げた。
「な、何をするんだい!?ま、まさか!?お前!?やめろ、やめてくれえぇぇぇぇぇっ!?」
「マッスルレボリューション(筋肉革命)!!ほれ」
そう言って前ムッキーが東吾に返したゲーム機に映っていたのは……
何故か劇画チックになった筋骨隆々の女の子だった。
「う、嘘だろ!?由香利ちゃあああぁぁぁぁぁぁん!?」
おいおいと泣き始める東吾にゲーム内の女の子、由香利ちゃんは言った。イヤホンが外れた為、声が聞こえてくる。
「“東吾殿、我が輩と一緒に美しい筋肉を育んでいこうではありませぬか!!”」
「う、うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
東吾は号泣しだした。
そんな様子を火怒ポンだけがうっとりと眺めている。
「や、やばい!!なぁ、いったんキャンプにしようぜ!!」
流れを変えようとそう言った天斗に前ムッキーはこう返した。
「ああ、ブリーズブートキャンプをな!!」