魔王の誕生は需要を動かせる
UMA
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ」
「いや、逃げて!!」
達也のツッコミをむなしく、ボゴンッと音をたててボールが部長に当たった。
「はい、アウトー。部長、外野に行って」
東吾が部長に言った。
「というかさ……」
「何だ?仲間が当たったのを見ただろう?言い訳は男らしくないぞ!!男らしくルールに従え!!」
火怒ポンが達也に向かって顔をしかめる。
「言い訳じゃねぇよ。だから……」
「なんだ?違うのか?男らしくはっきり言え!!」
「いや、だから……」
「えぇい、侠らしくはっきり言え!!」
「いや、言うって。だから……」
「漢らしくはっきり言え!!」
「お前が邪魔してんだろうがあぁぁぁっ!!」
達也が叫んだ。
「男なら自分の責任は自分で持て!!」
「いや、お前のせいだからな!!」
「責任転嫁など漢らしくない!!」
「お前がなぁっ!!」
達也が吼える。
「で?何なんだ?」
天斗が流れを戻そうとする。
「いや、だから……」
「さっきから、ダカラ、ダカラって。そんなに飲みたいならそこの自販機で買ってこい!!」
部長がうんざりした顔で言う。
「飲み物の話じゃねぇよっ!!」
達也はツッコミを止めない。
「俺、コーラ」
「僕は、ダージリンティー」
「侠は緑茶だ」
「俺、ポーション。本物な」
「俺、コーヒー、エスプレッソな」
「あっ、俺はイチゴオレでいいから」
「行かねぇよっ!!」
「「「「「「えー」」」」」」
「えー、じゃねえっ!!後、さっきポーションって言った奴!!学校の自販機にあるわけねぇだろ!?つうかこの学校にもねぇよっ!!」
「ありますよ、ポーション」
「ねぇよっ!!って……え?」
達也は思わずツッコンだが、知らない声だった。
「いや、本当にあるんですけどね、ポーション」
見知らぬ声の持ち主は困ったような顔をしてから、緑色の液体が入った小瓶を差し出した。
「え?」
「どうぞ、我が商業部冒険部門特製ポーションです」
「ああ、どうも。っつーか、冒険部門ってなんだ?」
もっともな意見である。
「冒険部門というのは、武器、防具そして、冒険の役にたつ道具を扱っている商業部のグループです」
「需要ねぇっ!!」
「何ぃっ!?」
達也の叫びをかき消すような声を雄輝がだしていた。彼の目はかつて無いほど輝いている。
「……」
「聖剣とかあるのか?なぁ、ポーションって本当に回復するんだよな?なぁ、なぁ?」
激しく食らいつく雄輝に若干ひきながらも、商業部の少年は答えた。
「ええ、回復しますよ」
「嘘だろ?そんな魔法みたいなものが……」
達也は半信半疑だ。
「いえ、本当です。一口飲んだら気分爽快、二口飲んだら癖になる。三口のんだらやめられない、止まらない!!若干中毒性が強いのが、玉に瑕ですけど」
「危ねぇよっ!!それはもう、ポーションじゃねえって別のものだろ!!白い粉に限りなく近いだろ!?」
「そんなことないですよ。幸せになれます」
「だからそれ危ねえって!!」
達也はツッコんだ。見知らぬ相手だろうが容赦しない。それが彼のツッコミ魂。
「で?なんか依頼があってきたんだろ?」
部長が尋ねた。
「はい、実は……」
「実は?」
「売り上げが全く伸びないんです。最近なんてポーション購入者以外さっぱりで」
「でしょうねぇっ!!」
「仕方なく、武器購入者を増やす為に魔王召喚の儀式を部でやってるんですが……」
「物騒だな!?」
「なかなか成功しません。どうしたらいいんでしょう?」
「成功しなくてなによりだ!!」
達也のツッコミに商業部の少年は責めるような視線を送る。
「僕達に飢え死にしろと言うんですか?」
「いや、別にそんなこと言わねえけどよ」
そう、この街では学生の生活は、国から支給される、生活費(研究費)と部活で稼ぐ金で成り立っている。親からの仕送りという手段もあるにはあるが、できれば頼りたくないのが、高校生というものだ。
「うぅん……」
「魔王召喚しようぜ!!」
「お前はこの街を恐怖に叩き落とす気か!?」
はしゃぐ雄輝に達也はツッコんだ。
「大丈夫、魔王召喚してもこの勇者(俺)が倒れてみせる!!」
勇者雄輝は胸を張って、指で自分を指す。
「無理だろ!!」
「できる!!何故なら俺には日頃から培ってきた経験値があるからだ!!」
「ゲームの中にな!!」
達也のそのツッコミを雄輝は鼻で笑った。
「フッ、違うな」
「何?」
「経験値はいつも俺の心の中にある!!」
「意味ねぇっ!!かっこつけて言ったけど全く意味をなしてねえっ!!」
そんな達也と雄輝の茶番を見ながら、商業部の少年は尋ねた。
「で、どうやったら魔王を召喚できるんでしょう?」
「魔王召喚すること前提なんだ!?」
「ああ、それなんだけどなぁ、うちの部に魔界に行ったことがある奴がいる」
部長が部室の隅に視線を向けた。
そこには、「もうあのブクブクしてる緑色の液体は嫌だー!!」と、ポーションに怯えながら丸くなってるタキシードの姿があった。
「おい、タキシード。お前主役の彼女のとこ行って魔界に飛ばして貰ってから、魔王連れて来い」
「嫌だ!!」
部長のむちゃくちゃな命令にタキシードは即答する。とっさに他の部員に助けを求めたが……
「男ならとっとと行くべし!!」
「キャンプでもしながら待ってるぜ」
「魔王楽しみにしてるぞ!!」
「魔界の女の子達によろしくね」
「ま、そういうことだ。行ってこい。以前帰ってこれたんだ。また帰ってこれるさ」
と、あっさり突き放された。
「こんの薄情者おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
必死で逃げようがすぐに捕縛されて、タキシードは部長にひこずられて行った。
タキシードが部室の外へと引きずられて行くのを見ながら、商業部の少年は首を傾げて来てからずっと思っていたことを口にする。
「今更ですけど、なんで室内でラインまで引いてドッジボールなんてしてたんです?」
「ああっ!?ツッコもうと思ってたのにツッコミ忘れた!!」
その後、魔王召喚には成功したらしく、魔王が校内に現れ武器がバカ売れしたが、すぐに神ってる教員達に鎮圧され、商業部冒険部門と神頼みの人間は反省文を書かされました。