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少女の出現は流れを動かせる

UMA

「月に代わってお仕置きよ!!」

「ついに女装にまで手をだしたか!?」

 椅子の上に立ってステッキを振り回す金髪ツインテールの某美少女戦士の女装をした部長に達也は悲鳴のようなツッコミを入れた。

「男らしくないぞ!!侠なら、常に漢らしく振る舞うべし!!」

「大丈夫、魔王は倒しにいけるさ!!でも、俺のパーティーにはいれないぞ?」

「僕も男に愛を求めるほど餓えてはいないよ」

「とりあえず、キャンプにして頭を冷やさないか?」

「オエッ」

 口々に言う部員達に部長は口を尖らせ、言った。

「おいおい、俺はお前達のことを思ってこんなことをやってるんだぞ?あと、吐いた奴でてこい、怒らないから」

「いや、ないわ~、さすがにひくぜ?」

「つーか、何でそれが俺達の為になると思ったのさ?どうせなら治癒術士になってくれればよかったのに、今俺のパーティーに足りないんだよね」

「男としてどうなんだ?」

「東吾、無償の女好きだろ?どうだ?」

 今にも吐きそうなタキシードが東吾に勧める。

「だから言っただろう!!僕にそういう趣味はない!!」

「だよなー、やっぱお前も意外とストライクゾーン狭いの?」

「嘗めてくれるなよ。僕は幼女から女子中学生までをこなす人間だ!!」

「ただのロリコンじゃねぇかっ!!」

 胸をはって叫ぶ東吾に達也はツッコんだ。

「冗談だよ。実際は幼女から熟女までだ」

「広っ!!」

「ただ美少女限定ね」

「それ熟女入んないじゃん!?」

 付け足した東吾にまたもや達也がツッコミをいれた。

「まぁ、実際幼女から女子大生までが限界かな」

「幼女は外さねえのな!?」

 達也がツッコミ終えてから、「いや、待て美人だったら二十代後半でもなんとか……」とか呟いている東吾を放っておいて、達也は部長に尋ねた。

「で?何でそんな恰好してるんだ?」

 その質問に部長は顔をしかめて答える。

「そんなの決まってるじゃないか。他の部には女子生徒も所属してるのにうちの部にはムサい男しかいないから仕方なく……」

「仕方なくねぇよっ!!男の娘は女性成分に入りません!!」

「いや、入るんじゃね?」

 首を傾げる部長に若干危機を感じて達也は身を引いた。が、まけずにツッコむ。

「入んねえよ!?」

「なんなら、先生に聞いてみろ。先生ー、男の娘は女性成分に入るんですか?って」

「何、そのバナナは遠足のおやつに入るんですか?みたいな質問!?うちの顧問は……ああ、あの人は駄目だ」

 達也の顔がみるみる青ざめていく。

「おい、あの人の話はよせよ。死ぬから、あの人地獄耳だから」

 タキシードが顔を真っ青にして言った。

「そうだな」

 達也が頷く。

「でも、確かに女性は欲しいね。ムサいもんね。特に僕のような女性を愛してやまない人間にとっては」

 東吾がしみじみと言った。

 そんな時にドアが開いて。

「すいませーん、佐藤達也君っている?」

 腰まである茶髪の少女が入ってきた。

「へ?俺だけど……って!?」

 達也は入ってきた茶髪少女を見て絶句した。

「昨日、あれから補導されたって聞いたんだけど?」

「……」

「タバコのこと、私のこと話しても良かったのよ?」

「ねぇ、聞いてる?」

 茶髪少女に言われて、達也は一人の少女の名前を出した。

「……もしかして、泉堂小春ちゃん?」

「そうだけど?」

 元の髪の色の茶髪が似合うとは思っていたし、茶髪の方が可愛いと言った覚えもある。しかし、ここまで変わるものなのか?

 前から可愛い顔立ちをしているとは思っていたが、まさかここまでとは。

「……」

「でも、庇ってくれてありがとう。なんて、全然思ってないんだから!!今日だって購買部に行く途中でちょっと通りかかったから寄っただけでわざわざここに来たわけじゃないんだから!!」

 顔を真っ赤にしてそんなことを言う茶髪少女を見て達也は確信する。

 このあざといツンデレは昨日の金髪少女だ、と。

 だいたいここの部室は校舎の一番端、購買部は真逆だ。

「うぅん、やっぱ茶髪似合うな」

 達也は思わず呟いた。

「ほんと?」

 確かめるように上目遣いで達也の表情を伺う小春。

「ほんと」

「……そう」

 顔を真っ赤にしながらも嬉しそうな表情を浮かべる小春と彼女を見つめる達也。

 なかなかいい雰囲気だが、そんな雰囲気は一瞬で壊された。

「だああっ!!ラブコメオーラー持ってくんな!!」

「佐藤君!!何でこんなに可愛い子僕に紹介してくれなかったんだい!?」

「いったんキャンプにしないか?」

「……可憐だ」

「俺の女装の意味が……」

 一気にまくしたてる部員達に気圧されながらも達也は小春を紹介する。

「この子は泉堂小春ちゃん。昨日いろいろあって知り合ったんだ」

「そこを詳しく!!」

「男なら漢らしく全て話せ!!」

「キャンプでもしながら全て話せ!!」

 などと問い詰められて達也は仕方なく話す。横で小春は顔を赤らめて立っていた。

 話し終えた途端に、東吾が小春の手を取る。

「小春さん、今からでもおそくない!!僕と二人で愛の逃避行に出発しませんか?」

「えっと……」

 小春は少し身を引いた。

「断る!!」

 達也が叫ぶ。

「佐藤君、君には聞いてない!!」

「断る!!」

「だから……」

「断る!!」

「話を聞け!!」

「断る!!」

「断るなあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 そんなやりとりを見ていた小春は達也に声をかけた。

「あ、じゃあ私帰るから。それと、あんた。帰る時声かけて。外にいるから。か、勘違いしないでよね!!別にあんたを待ってるわけじゃないんだから!!一緒に帰ろうなんて全然考えてないんだからね!!」

 顔を真っ赤にしながら小春は部室を出ていった。

「さーとーうー君?」

 その後達也が理不尽に皆にぼこられたのは言うまでもない。ただ、部長は何故か部室の隅ですねていたが。

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