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愛は人を動かせる1

完全UMA

「勝てよ、兄さん」

 銀色の鎧を着た部長が部室を見渡す。

 部室は静まり返っていた。

「誰か何か反応しようよ」

「悪いな部長さん、今日は26時間ゲームの日だ!!」

「いつもだろ!!」

 ゲームの画面に向かい続ける雄輝に部長はツッコム。

「いや、26時間の方にはツッコまないのな」

 達也が数学の教科書と格闘しながら呟いた。なんだか最近全てにツッコミを入れることに対しては諦めがちになっている。

「いや、こいつを誰だと思ってんだ?世界一神ってるゲーマーだぜ?」

「ゲーム愛で時空の壁を越えたのか!?」

「まぁ、神ってる奴らはそんなこと余裕だろうね。現に僕も女の子への愛で時空を超えているしね」

  口をはさんだ東吾が壁にもたれながら髪をかきあげ、呆れたような表情を浮かべている。

「…………俺、転校しようかな」

 達也が遠い窓の外を見つめながら言った。

「しかし、人助けをする部なのにこうも依頼がこないとは……なぁっ!?」

 言ったそばから扉が開き、一人の青年が入ってきた。

『!?』

 部員達は、驚愕の表情を浮かべる。

 ;俺;は笑顔を浮かべ、彼らに尋ねる。

「人助けをやってる神頼み部ってのはここか?」

 そう言い、辺りを見渡しこの場所に似合わないテントを見つけた。

「山岳部じゃないんだよな?」

 テントがもそもそっと動き、中から銀髪赤眼と黒髪黒眼と赤髪黒目がでてきた。

 なんなんだこいつらは?とても人助けをする奴らには見えないが。いや、人を見た目で判断してはいけないな。

「地の文を乗っ取られた!?」

 何を意味の分からないことを言ってるんだ?こいつらは。変人の集まりと聞いていたがまさかここまでとは……

 だが、俺は大人だ。大人な対応をしよう。

「あってるんだな?」

「ああ、間違いないここは人助け部だ。立ち入った話しをするのもなんだし、とりあえず一旦キャンプにしないか?」

 黒髪黒目の少年が俺をキャンプに誘ってきた。

「いや、遠慮しとくよ。自己紹介もまだだしね」

やぁ、みんな。俺の名前は主役 ヒーロー。神様学園高等学校の高校一年生さ。

 神ってる所は世界一神ってる主人公だ。覚えておいてくれ。

「……お前、絶対主人公じゃねーだろ」

「というか、地の文で語るな!!普通に喋れ!!」

 ここの部長らしき人間と普通っぽい少年が言った。

 俺はその言葉に少し不快感を覚える。

「何を言うんだい?今朝もUFOにキャトられたし」

 そう、俺がUFOにキャトられたのは今朝のことだった。あの時、俺は……

「だああぁぁっ!!回想やめいっ!!うっとおしい。あと、地の文返せ!!上から声みたいに降ってきてうっとおしいんだよ!!」

 達也が回想を止める。

 馬鹿なっ!?僕の思考が分かるのかっ!?くっ、ならしばらく封印するか。

「ここからがいいとこだったのに」

 主役が残念そうな顔をした。

「で、主役君だったっけ?お前何を助けて欲しいんだ?」

 部長が尋ねる。

「頼っていいんだな?」

「まぁな。あんまりにも無茶なこと以外はどうにかしてやるよ。俺達は暇だしな」

「そうか……実は俺には好きな子がいるんだ。その子の神ってる所が世界一神ってる危険メーカーで、僕はその子に告白したいんだけど……」

 喋っていくうちに段々と声が小さくなっていく主役。

「したらいいじゃん?お前、世界一神ってる主人公なんだろ?なおさらどうにかなるんじゃないか?」

 達也が怪訝そうに言った。

「そうだ!!男なら告白は自分の力でやるべし!!」

 火怒ポンが力強く言う。

「僕もそうしようと思うんだけど、彼女に声をかけようとした途端に連続殺人鬼が現れたり、居眠り運転をしているバスが突っ込んできたりするんだ。今日も話しかけようとしたらUFOにキャトられたし……」

「怖っ!!何その子!?」

 達也が引きつった顔で叫ぶ。

「そういうことなら任せてよ。僕がその子を口説いてみせる」

「お前が口説いてどうすんだよ!!」

 達也が自信満々の東吾にツッコンだ。

「敵は危険製造機メーカーか。頑丈な装備が必要そうだな。ミスリルの剣はどこにしまったっけ?」

「あるか!!あってもそんなもん必要ねぇし!!別に敵じゃないからなっ?」

 最後は少しげんなりしながら達也は雄輝にツッコミを入れた。

「告白の手伝いか……やってやろうじゃねぇか!!」

 部長が立ち上がり叫んだ。




 で、路上


「あの子か?」

「ええ、そうです」

「確かにありゃあ美人さんだなぁ……」

 物陰に張った巨大テントの中で囁き合う怪しい男達がいた。

「彼女、世界一神ってる危険メーカーであると同時にうちの学校でベスト五に入る美人だからね……」

 美人という言葉を強調して頷く主役。

「そういうことならやはり僕が口説きに行こう」

「お前は自重しろ」

  立ち上がろうとする東吾を達也が抑える。

「離せ!!僕は彼女を愛してるんだ!!」

「マジで自重しろおおおぉぉぉぉぉ!!」

 達也が叫んだ。心からの叫びだった。

「しかし、俺達はなんで、テントに入ったまま移動してるんだい?逆に目立つだろ?」

「テントが俺の命だからだよ」

 天斗がさらりと答える。

「そうかい」

 複雑な表情を浮かべた主役は、分かってなさそうな顔で頷いた。

「それじゃ、まず俺が声をかけてくる」

 タキシードが立ち上がり、テントから這い出た。

 そして彼女に近づいていく。

「やぁ、元気?」

 そう声かけた瞬間、タキシードの肩を叩いた奴がいた。

「ガルバラザナン・オルテガペテロ?」

 意味が分からないことを言ってきた奴の顔を見ようと振り返る。

 そいつはまるで悪魔だった。

「え?」

 腕を掴まれ、タキシードは悪魔に時空の歪みのように黒い穴に引きずり込まれた。

「ヤラヂイガナ・バルシガニュ」

「なっ?あ、ぎゃああああぁぁぁぁ!!」

 それを見ていた天斗がぽかんと口を開けたまま言った。

「今、タキシードの奴が時空の歪みみたいなのに引きずり込まれたんだけど……」

「あれが危険メーカーの能力だよ」

「……なぁ、とりあえず一旦キャンプにしない?」

 天斗が提案した。

「駄目だ。タキシードの犠牲を無駄にするな!!」

「次は、俺が行く。男で侠で漢なら真っ直ぐ進むべし」

 そう言い火怒ポンが走りだした。

 直後、大量のカラスが飛んできて火怒ポンを連れ去る。

「男、侠、漢ぉぉぉぉぉ!?」

「なぁ、今火怒ポンがカラスに連れ去られたんだけど……」

「俺、帰るわ。帰ってモン○ンの続きやらねぇと」

「待ってくれ」

 逃げようとする雄輝を主役が止めた。

「彼女は諦めろ!!」

 青ざめた顔で叫ぶ部長に主役は言い放った。

「諦められるか!!俺はほっとけないんだよ!!いつも一人で悲しそうな表情を浮かべてる彼女のことが!!」

 主役の悲痛な叫びに部長は逃げ出そうとする足を止め目を細めた。

「まぁ、あんな体質じゃ誰も近寄らないだろうしな。んじゃ、やるか」

 部長が言った言葉を天斗が続けた。

「キャンプをな!!」


続く

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