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日常は彼らを動かせない

全編UMA

「海賊王に、俺はなる!!」

 麦わら帽子をかぶり、赤いチョッキに青い短パンを履いた青年が叫んだ。

「一人でなっててくれ」

 普通の私服を着た青年が冷たく返す。

 普通の青年、佐藤達也は先程叫んだ男、つまりこの部の部長があのようなことを言うのに今やすっかり馴れていた。

 達也の通っているこの神立神様学園高等学校は、何かしらの分野でずば抜けている才能の持ち主達が通う学校だ。それ故に、かなりくせがある謂わば変わり者が多い。達也自身も神ってるほどツッコミに向いている人間なのだから。

 達也はついつい些細なことにでもツッコミをいれてしまう。小学校、中学校とツッコミを入れ続け、周りの人間に「何であんたいちいちツッコミ入れる訳?」と奇異の目を向けられていたが、仕方ない。どうしてもボケを拾いたくなるのだ。もっとも、最近は飛び交うボケの量が半端なくて、スルースキルも身につけつつあるが。

「部長!?ジョブチェンジするのか!?でも海賊はお勧めできないぜ!!魔法使いとかどうだ?俺のパーティー、魔法使える奴いなくってさ~」

 まるで勇者のような恰好をした青年、曲津雄輝まがつ ゆうきが携帯ゲーム機を机の上に置いて、大声をあげる。

「いや、普通はいねーって!!」

 達也がツッコんだ。

 そんな達也を無視して勇者雄輝は部長と呼ばれた青年に手を差し出す。

「俺と一緒に魔王を倒しに行こう!!」

「いや、魔王とかいないから!!」

 諦めず達也はツッコミを入れた。

 その言葉に雄輝は反応する。

「いるさ!!何言ってんだ!?世界の危機なんだぞ!!」

「じゃあどこにいるんだよ!?」

 そう聞かれた雄輝と部長は満面の笑みを浮かべ自分達の胸を親指で指す。

「それは……俺達人間の心の中、かな?」

「いねぇよ!!いたとしてどうやって倒すつもりだったんだよ!?」

 そんな達也のツッコミももう届いていない。既に二人は別世界だ。部長は勇者雄輝と手を取り合っている。いい笑顔だ。

「何、俺がおかしいの?なぁ、東吾とうご?」

 普通の青年は助けを求めるように先ほどから黙り込んでいるなかなかおしゃれな青年に話しかける。

「静かにしてくれないか、佐藤君?見て分からないのかい?僕は今、女の子を口説くのに忙しいんだよ!!」

 手にPSPを握りながら、画面の中の女の子に甘い言葉を囁き続ける青年、東吾に達也はキレた。

「ゲームの中でだろおおおぉぉぉぉぉ!?何で、話しかけちゃいけねぇんだよ!!邪魔なのか!?俺はそんなに邪魔なのか!?」

「クッ!?何するんだ!!佐藤君がそんなこと言うから愛香ちゃんにふられちゃったじゃないか!?」

「責任転嫁じゃねぇぇぇか!?」

「僕は君を嫁にもらったつもりはない!!」

「そういう意味じゃねぇぇぇ!!」

 達也は怒り狂っていた。

 その怒りは留まることを知らず、何故か部室の中に張ってあるテントの中にいる人間達にぶつかる。

「お前らも何やってんだよ!?」

 テントの中では

「男らしくカードは変えず戦うべし!!」

 赤髪の目立つ漢が床にトランプを叩きつける。

「おいおい、火怒ポン(かどぽん)。それじゃポーカーにならないだろ?で、お前はどうすんの吉岡?」

 銀髪赤眼にタキシードという嫌に目立つ青年が黒髪黒眼のやる気を全く感じさせない青年に聞いた。

「ん?俺もめんどいからこれでいいや」

「ったく、お前らなぁ……じゃあ俺もカードを見ずにノーチェンジだ」

『勝負!!』

 火怒ポンと天斗が伏せていたカードをめくった。

「漢ぉぉぉ!!男、侠、漢ぉぉぉぉぉ!?」

「へっへーん、俺の勝ち」

 天斗が笑う。

「フォーカードだとぉ!?」

 銀髪赤眼が驚きの声をあげた。

「どうだ!!タキシードお前は?」

 そう聞かれてタキシードと呼ばれた銀髪赤目のタキシード野郎はニヤリと笑い、カードをめくっていく。

 スペードの10、スペードのJ、スペードのQ、スペードのKそして……

「まっ、まさか!?」

「スペードのA、死神だ!!」

「ロイヤルストレートフラッシュだとぉぉぉぉぉ!?」

 天斗が驚愕の表情を浮かべる。

「スペードのA、死に神だ!!じゃねぇぇぇえ!!」

 達也がトランプを吹き飛ばす。

「あああ!?何てことを!?」

 タキシード野郎が悲鳴を上げた。

「部活動しろよ!?ここ何部だよ!?」

「神頼み部だ!!神頼みをするしかなくなったぐらい困った人をまるで神様のように助ける部活だ!!男なら必ず覚えとくべし!!」

 火怒ポンが親指を立てた。

「知っとるわぁぁぁぁぁぁ!!あれか?俺がおかしいのか?分かってるなら、人助けをしようぜ!!そんな目で見るな、まるで俺がおかしいみたいだろ!?」

 他の部員達が達也をジト目で見る。

「み、見るなあぁぁ!!そんな目で俺を見るなぁぁぁあ!!」

 叫ぶ達也の姿を見ながら天斗は手を叩く。

「よし、まずは一旦キャンプをしよう!!」

 軽快な音と共にでてきた台詞に達也は天を仰いで叫んだ。

「誰か俺を普通と言って下さぁぁぁい!!」

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