時間は人を動かせる
短期連載予定です。
拙い文ですが、楽しんでいただけると幸いです。
何一つ動かず静まり返った放課後の教室。
だが、その場所に一つだけ似合わないものがあった。
テント。普通は山などに張られるものだ。しかしそれは今、教室に張ってあった。
いきなりテントが揺れ始め、先程までの静寂が破れる。
一人の青年がテントから顔をだした。ぼさぼさの深く、暗い黒髪とまるでやる気の感じられない黒い瞳がよく目立つ。
「ありゃ?もうこんな時間?まずいな、行かねぇと」
騒がしい道場で何人もの胴着を着た人間を一人の男、いや漢が投げ飛ばしていた。
「男、侠、漢ぉぉぉぉぉ!!」
日の光を浴びて輝いている汗が頬をつたり下へと落ちる。
動く度に燃えるような赤色の髪が揺れ、鋭い目つきがかかってくる者を威圧する。
涙目でヤケクソ気味に突っ込んで来たスポーツ刈りの青年を投げ飛ばし、その漢は汗を拭った。
「どうやら行かねばならぬ時がきたようだ」
黒いテーブルを数人の青年達が囲むように座っていた。
手にはトランプを持っている。
その中で一際目立つ青年がいた。脱色させた銀色の髪に何を思ったか、赤いカラーコンタクトレンズをはめている。着ている服はタキシード。
銀髪赤眼。その青年が、他の青年が机にトランプを置くのを見てニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「はい、俺の勝ち。そんじゃ、俺先に抜けるぜ」
手札をテーブルに投げ捨て、チップを回収する。
「勝ち逃げかよ!?ずるいぞ!!」
抗議する青年達を馬鹿にしたように嘲笑い白髪赤眼は言った。
「悪いな、時間なんだ」
コンピューター室でピコピコと音をたてながらゲームをしている青年がいた。
手にはPSPを持っている。
じゃあ、コンピューター室使う意味ないじゃん?と言われたら彼はここが落ち着くからと答える。
何でゲームをやるのと言われると、そこにゲームがあるからだ!!と答える。理由になってないよと言われると、ここに俺がいるからだ!!と答える。
そんな彼は鎧を着て、背中には盾と剣をぶら下げていた。いや、装備していた。
彼はふと顔を上げた。その顔には決意の表情が浮かんでいる。
「時は満ちた。魔王を倒しに行かなくては」
廊下でたくさんの女の子に声をかけている青年がいた。
明るいふんわりとした感じの茶色の髪にこれまた明るい茶色の目。着ている白のYシャツがよく似合っている。
どうやら、少女達を口説いているようだが、その片手には明らかにいかがわしいマンガ本を持っている為、最早何がしたいのか分からない。
髪を自然なしぐさでかきあげ、青年は何気なく自分の腕時計を見る。
そして、悲しそうに微笑んだ。
「ごめんよ。別れの時がきたようだ」
普通の学生のように見える普通の髪型で普通の服を着て、普通の目をした青年が普通に掃除を終え、普通に自販機で普通のジュースを買った後、これまた普通に呟いた。
「そろそろ行かなきゃな」
「「「「「部活の時間だ!!」」」」」
一人の青年が回る椅子にふんぞり返っていた。
傍らには、移動式カーテン。もう傍らには大きな袋が置いてある。
「……遅ぇ」
その時、いわゆる部室のドアが開いて……
神立神様学園高等学校。ここは、神を必要とした世界の為に、次期神様候補の神ってる奴らを集めた神ってる学校。物語は、ここから始まる。