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Arisa  作者: 明里 ルカ
6/7

そして全てが輝き始める、

ある初夏の晴れの日。北海道で初夏は、普通に寒い。みんなジャージの上にウインドブレーカーを羽織っている。


「今日は体育大会が近くなってきたので、全部の競技を試しにやってみたいと思います。」


 そんな話は聞いていない。ざわめきが広がった。この学校の体育大会は6月初旬。近くなったと言っても、まだ一ヶ月以上ある。『一年生が優勝するのは、絶対不可能』と言われているのでみんなあまり興味がなかった。


「競技はー、ジャベリックスロー、女子800㍍男子1500㍍、幅跳び高跳び、混合リレーと男子・女子リレー、芋虫対決、部活対抗二人三脚です。今日やるのはー、800㍍と1500㍍だから、班体操始めてー」


 がやがやと集まって、けだるいかけ声をあげながら体操をする。この寒い中で1500㍍も走らせるのか、と男子が愚痴っていた。

「超めんどくさい」

「亜梨紗は良いよねー、陸上部だし」

 歩菜は溜息をつき、未来はよく分からない文句を私にぶつけた。

「いや、陸上部だから800がめちゃめちゃ早いってワケじゃないから」

「でもちょっとは違うでしょ」

「でもうち短距離だし」

「え、でも未来は絶対亜梨紗が一位だと思う!」

 未来の予想に、歩菜が頷いた。

「てゆーかさ、芋虫対決って何」

 未来が笑いながら言った。あまりにも先生が普通に言ったので聞き逃していたが、確かにそんな説明もしていた菜と思い出す。歩菜がお腹を抱えて爆笑した。

「誰が一番力強く美しい芋虫を育てられるでしょう!とか」

「アホでしょ」

 未来が冷静にツッコミを入れる。


「じゃあ女子適当に並んでー」

「えー女子からですかぁー」

 歩菜が大声で不平を言う。先生は苦笑いしながらたしなめた。

「じゃーいくよ、よーいドン!」

 小学生のかけっこじゃないんだから、と思いながらも走り始めた。リズムに乗ってからだが揺れ、冷たい風が吹き抜ける。

 風は冷たいが、太陽は温かい。そのうち暑くなって、上に着ていたジャージを脱ぎ捨ててしまった。気づくとトップで走っていた。振り向く気はしないが、後ろには人の気配を感じない。具合が悪くなって運ばれている人が見えた。自分に疲れはない。やっぱり、毎日走っているからだろうか。


 ゴールした瞬間、どっと疲労感が押し寄せてきた。フィールドに倒れ込む。芝がくすぐったかった。先生がタイムを発表してくれる。

 

「亜梨紗、3分23秒!」


 このタイムが早いかどうかは分からなかった。けど、クラスで一番だったという理由で、2番だった未来と一緒に私は体育大会で800㍍に出場することになった。



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