先に立っている
証明写真を撮った、マイナンバーカードとか言うのに必要だったからだ。
正直千円は痛かった。
「たかが証明写真に、こんなにお金を」
ぶつぶつと呟きながら、選択ボタンを押す。
まず左の写真が千円、右の美肌効果とかが入った写真が千百円、美肌とかどうでもいいわ!
心の中で突っ込みながら、淡々と椅子を低くしたり、顔が入るか調節したりする。
いよいよ写真を撮る時間だ。
カーテンは閉めている、周りに誰もいない。
なのに自分の目の前に何かが立っている様な気配がする。
赤い楕円のガイドの中に、私の顔が収まっているはずだった。
けれど、その輪郭のフレームの中にもう一つ分、別の影が写っているように見えた。
シャッターの音が三度鳴る、画面に写真が並んでいた。
併設しているお店に聞いてみる。
「全部の写真がおかしいんです、これを見てください」
そういうと店長らしき人が言った。
時々あの証明写真に何かが映ることがあるんですよ。
「料金をお返ししますね」
と言われた。
そういえば私は最近写真を撮ったり鏡を見たりしていない。
写真に写っているのは、あの人だけだった。
私はいつからあの人の後ろに立っていたのだろう?
この写真に写っているのは誰?
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