表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

出会い/2

読みに来てくれてありがとうございます₍ᐢ..ᐢ₎♡

遠くで誰かに呼ばれた気がして目を覚ました。

起き上がるとちょうど、

「ーーー!!!」

と、昨日の少年、イオルの声が聞こえてきた。

村の近くに居るというより森が声をここまで届けている様なそんな感覚。

(…絶対昨日…森に入るなって怒られたでしょうに)

昨日の母親らしき女性の怒声を思い返しながら起き上がり、服を着替える。

ズボンが欲しいところだが残念ながらこの身体に合う丈はなく、とりあえずタンクトップと思しき物を探して身につける、ワンピースの様な感じになるので、丁度よく着れた。


(……どこかな…)

イオルの声がしたのは、と家をさっさと出て周囲歩いていると意外と直ぐに見つかった。

「ーーー!」

イオルは満面の笑顔でこちらに走ってきた。


相変わらず言葉は分からずとも、彼が好意的であるのは伝わってきて、吊られて笑みがこぼれた。


今日は迷子で来た訳ではなく、遊びに来たイオル。

恐らくどこに行こう?とでも言っているのか楽しそうにこちらに話しかけている。

イオルは昨日よりもはしゃいでいるので、今日は昨日遊んだ川とはまた違う川と巨石が並べられたよく分からない場所へ連れて行ってあげることにした。


「ーーー?」

(なんだここ、変なの、とでもいってるのかな?)

円を描くように巨石が並び、中心だけがぽっかりと草が生えていない奇妙な場所で、ここがなんの場所なのかは分からないがストーンヘンジ的な…何かの儀式をしていた遺跡だと勝手に解釈している。


倒れた岩を伝って1番高い場所に先に登ったイオルはこちらに手を伸ばしてこちらを誘う、その手を取って二人で石の上に座った。

柔らかい風に吹かれながら今日もひたすらイオルの言葉に耳を傾けていた。


多分、友達のことや家族の事だろうか。

名前のような綴りが何度も登場して、身振り手振りで彼らの事を教えてくれた。



楽しい時間が過ぎるのは早いものでもう夜の花が咲き始め、そろそろイオルは帰らなくては行けないだろう時間になった。

「ーーー?」

今日もまた入口に近そうな方角にまた彼の背を押して手を振る。

「ーー!!ーーーーーー」

ごねているような空気があるイオルに再度手を振ると不満げに口を尖らせながらイオルは、こちらの手を引いて行こうとしたが、手をクロスさせて否を伝えた。

「ーー…ーーー」

その言葉にうなずいてみせると、イオルは諦めたのか肩を落として歩いて帰っていった。


小さくなる背中を見送ったあと、その場に座り込んでぼうっと日が完全に暮れていくのを眺めていた。

イオルが沢山喋るのでなんとなく分かる言葉もできてきたが声は以前と出ない。


初めはこの身体が寝すぎて出ないのかと思っていたが、人為的なものを感じ始めた。

何となくどうしてか生まれつきではなかった気がするのだ。


(まあ、いいか)


森から出られずともイオルがここに来てくれる。

二人で過ごす時間は楽しかった。

言葉が分からなくても、表情や仕草だけで心が通じ合う感覚だった。


それは長い孤独で凍えていた感情が少しずつ暖かく溶かしていくような、まるで乾いてひび割れた大地に雨が降り注いだような、そんな感覚。


(……明日も来てくれるのかな)


その考えがよぎって誰かを待つという感情を、久しぶりに感じた。


視線をまたイオルの去った方角へ向けると、風が吹き抜け、花が揺れる。

夜の花、と勝手に呼んでいる夜にだけ咲く綺麗な花、昨日イオルにあげた花かんむりも朝の花と、昼の花、夜の花を編み込んだ。


もう枯れてしまったかな、朝の花まで見くれただろうかとぼんやり考えたが眠気が訪れて、大きなあくびが漏れた。

そのまま地面に寝転がって星空を見上げる。


この世界には季節がないと前までは考えていたが、どうやらそれは勘違いだと、数十年程空を見上げて来てわかった。

この森だけ季節がないのだと。


春のような心地の良い季節が続いて、夏も秋も冬も無いこの森は外からどう見えているのだろうか。どういう仕組みで保たれているのだろう?


考えるのをやめて目を閉じると遠くで、それでいてすぐ近くで誰かが何かを話しているのが聞こえる。


(…また姿の見えないなにかの声)


悲しむような嬉しそうな、怒っているような、よく分からない声がずっと聞こえるようになった。

煩わしい、そう思うのにその声を聞いていたいような。

よく知っている声のような、形容しがたい感情に支配されていた。


《…?……!…!!》


初めて聞こえた鮮明なそれに目を閉じかけていたまぶたが、はっと持ち上がった。

眠気はどこかへ消えていた。


(……いまの、なんの声?)


静かな森に、自分の鼓動だけが響いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ