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魔法の特訓

今日も今日とて魔法の練習をアンテルと続け、魔法の基礎が完璧になる頃合いにふとル―リャは思い出したように問いかける。

「そういえば不可視の銃弾ってどんな属性の魔法?」

この前スロウの解説で言っていた魔法を尋ねる。

「あれは…説明が少々難しいのですが。

スロウの魔法は人間のものを応用している、風魔法の派生したオリジナルの魔法のようなものです」

魔術式を見ていないので、細かい詳細がわからないのです、そう締めくくる。


魔術式はその魔法の取扱説明書だとアンテルに習った。

魔術式だけではなく、魔法陣からも敵に攻略されることもあるので魔族は基本見せないのが普通らしいが人間は逆…というより魔術式は書籍に残し共有するし、魔法陣を隠すこともできないのか丸出しで戦うのだとか。


「オリジナル魔法かぁ」

かっこいいねとアンテルの説明に頷いて考える。

「アンテルにも、あるの?」

「もちろんです、魔術式はル―リャ様にも秘密です。

…ああぁ、でもお願いされたら私は断られません!!」

また鼻息荒くいうので、アンテルを苦笑いで躱した。

「えーと…魔法陣が必要な魔法ってどんなもの?」

今の感じなら、投げるのも燃やしたりするのに魔法陣はいらないような気がする、それこそ大きな竜巻で周りを吹っ飛ばす、とかもできそうなのだ。

「魔法陣は、基本魔族には必要ないことが大半ですよ。

…例えるならすごく複雑な、時間差で発動するものや、特定の対象へ何かをするなど魔法を発動させる時に練り込めないものには必要になる、という感じでしょうか」

アンテルの言葉に顎をさする。

つまりは、ここに爆発する魔法を明日発動する、と言うのは単順だから魔法陣は必要なくて、明日特定の誰かがそこに入ったら爆発、というのは必要、という事なのだろう。

「ただこれは魔族や精霊、魔力に精通している存在のみで、

人間であれば、自分の身体から魔法を発動させること自体に魔法陣、詠唱が必要になります」

その言葉になるほどと、頷き新しい疑問をぶつける。

「詠唱はいつ使うの?」

「詠唱は魔法を行使するときです。

これは破棄できることもありますが、基本は破棄しない方が出力は上がります」

「ふーん…」

なんともややこしいな、と思いながらなんとなく理解したつもりでぼんやり頭の中で噛み砕く。

(ファイヤーボールっていうような感じか)

「…うわっ!?」

突然火の玉が壁に激突した。

「まさか、ル―リャ様今、無詠唱で火球をお放ちに!?」

「いや、え…!?考えるのだめなの?」

アンテルの説明を考えていたことで魔法が意図せず発動してしまったようでアンテルはとても嬉しそうに焦げた壁の修復をしている。

「精霊と親和性が高いとこういうこともあるんですよ。

…ふふふ、さすがはル―リャ様…完璧な火球でした…はぁ…はぁ…」

「…………」

アンテルの精神が現実に戻るまで少し時間がかかりそうなので、気分を変えるために部屋を出ていくことにする。

(考えただけで発動はちょっと不便すぎるな…)

チートだと喜びたい所だが、魔法をこのまま勉強してふとした時に発動したりすればとんでもない被害ではなかろうか。


とはいえアンテルも無詠唱もできそうなのだから対処法も知っているはずだ、と思い直し踵を返しかけたが、あの扇情的モードのアンテルが正常に戻っているか怪しいのでやはり帰るのをやめる。



魔王城は広いが立入禁止区域もあり、案外歩き回れる場所は少ない。

深部の方はレグナードがいるのでなるべく避けて歩いている。

行く宛もないので中庭へ行ってみることにした、誰ともすれ違うことなく歩けることに若干珍しさを覚えつつ到着すると、木の根元に座り、空から差し込む穏やかな木漏れ日に目を細めて、少しだけ森が恋しく思った。

(イオルは、死んだのかな)

あの森の思い出の大半を占めつつ、指文字や森の外のことを教えてくれた少年を思い出す。

(魔法は想像力、だとしたら)

そこまで考えて、もしそれが現実になっては困るので頭を振った。

「…こんにちわぁ…」

急に影ができその方角を見る前にそう声が聞こえた。

「あっ…怪しくないわよ…?お姉さんはダリア、スロウ様の部下なの」

上半身は人間、下半身は大蛇の女がそこにいた。

(……おっぱいでっっか)

緩慢に動く身体に反して胸元の豊かな双丘は思わず釘付けになるほど柔らかに搖れている。

「大丈夫よぉ…沢山お喋り出来ないのは知っているわ、ル―リャちゃんでいいのかしら」

ニコニコと微笑むダリアに元々薄い警戒心が瞬く間に消えてく。

絶対、えっちだ、と不純なことを考えながら、曖昧に頷く。

「今日はお城が静かでしょう?みーんな出払ってるの」

私たちはお留守番ね、と隣に来て塒を巻くような姿勢になったダリアの尻尾がさらりと草を撫でる。


「スロウ様、今日はガルネードへ行っているのよぉ。

またあの件で揉めるから、疲れちゃうでしょうねぇ…」

「……?」

初めて聞く言葉に首を傾げるとダリアは頬に手を当てて困ったように笑った。

「あら、そうねアンテルは教えてなさそうねぇ…。

この山……ルーリャちゃんのいた森のすぐ隣に、大きな砂漠地帯があるでしょう?

あそこは獣王国ガルネードっていう国なの。

獣人たちの国よ。強くて誇り高いけど、そのぶん他国では酷い扱いも受けていてね」


小さくため息をこぼし続けた。


「今、その悪い国と揉めてるの。

制度なんてまだ続いているから……ガルネードの子たちが攫われたりしてね。

まったく、人間って……どうしてあんなにも傲慢なのかしら」


ため息まじりの声は穏やかな中庭にゆっくり溶けていった。

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